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猫を助けたかっただけなのに  作者: めい


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第69話




ごきげんよう。

クロエ・カサブランカでございます。


現在の時刻は午後3時30分。

皆んなでおやつ休憩中ですわ。


先程、ウィリアムにおやつの提案をしましたら食い気味に返事をされたため、亜空間収納からおやつを取り出した瞬間、皆んなの視線が突き刺さりまして……。


まぁ…そのために大量に作ってきましたので問題ありませんが。


本日のおやつは、【紅茶、イチジク、クルミのエンジェルフードパウンドケーキ】と、【オレンジとアーモンドのアップサイドダウンシフォンケーキ】ですわ。


繋げただけですが、やたらと長くなってしまいました…。

ほほほ。


先日の卵白が大量に余っている問題を覚えていらっしゃいますか?

昨年は知らない間に廃棄されていましたが、今年は廃棄寸前に気づき、わたくしの亜空間収納にてお預かりしていた物です。

(ダンデライオン商会には、余った卵白は廃棄せず、時間経過の無いタイプのマジックバッグにて保管するようにお願いしておりますが。)


マカロンを始め、メレンゲを使ったお菓子を何種類か試作しましたが、この世界で売り出すにはエンジェルフードケーキが良さそうでしたので、パウンドケーキ型で焼いたものをお持ちしましたの。

ダンデライオン商会はクレープ屋台とパンケーキ屋を運営しておりますが、どちらもカスタードクリームを使うため、毎日大量の卵白が余っているのが現状です。

ですが、このケーキを商品化し、国民の皆様に受け入れられれば、卵白も廃棄せずに済みますし、新たなケーキも食べられますわ。

ウィンウィンではなくて?


マカロンはやはりマカロナージュという工程が難しく、わたくしも何度か失敗いたしました。

今は何とか作れるようになりましたが、人に教えられるほどの腕前ではありませんので、自分で楽しむだけに止めておりますわ。

まぁ…何故かウィリアムには存在がバレ、ストック分を全て食べられてしまいましたので、手元には残っておりませんが……。


失礼。話が逸れましたわ。



エンジェルフードパウンドケーキは、まさに大量の卵白どうしよう問題を解決すべく作ったケーキです。

インターネットで検索していましたら、このエンジェルフードパウンドケーキのレシピを見つけましたの。

ただ、そのまま焼くと少し淡白になりそうですので、中にフルーツなどを混ぜた方が良いかと思いまして…。

合わせるものをどうしようかと悩んでおりましたところ、ナタリーが、ご実家であるポインセチア子爵家の領地に、見慣れない実をつける植物を発見したとのことで、その実を見せてくださいました。

それが、イチジクとクルミでしたの。


ポインセチア領でも初めて見る実だったそうで、領民の皆様も困惑し、領主であるポインセチア子爵に報告され、先日、子爵が王都のタウンハウスに来た際、ナタリーを始めとする家族の皆様にもお話しなさったそうです。

ナタリーはわたくしが魔法薬学を履修していることを覚えてくださっていて、わたくしに伝えるためにお父様である子爵からイチジクとクルミ(件の実達)を1つずつ預かっていらしたそうですわ。

……ナタリー、有能すぎませんこと?


イチジクとクルミを見せていただいたわたくしが、ぜひ譲って欲しいとお願いしたところ、3日後には大量のイチジクとクルミを渡されたのは記憶に新しいですわ……。


その日の帰宅後、イチジクは乾燥(ドライ)にて乾燥と、味の濃縮を施し、クルミは圧搾(コンプレッション)で実を傷つけることなく殻を割り、取り出した実はオーブンでローストしました。

そのままケーキの下準備として、どちらも5ミリ角に刻み、薄力粉を薄く塗しましたわ。


次に、ケーキの試作に取り掛かりました。

メレンゲを作ったボウルに、細かく挽いた少量の紅茶の茶葉と合わせて振るった薄力粉を入れ、泡を潰さないよう、底から掬い上げるようにさっくりと混ぜます。

粉っぽさが少し残る段階で、下準備したイチジクとクルミを加え、全体が均一になるまで優しく混ぜれば、生地の完成ですわ。


完成した生地を、クッキングシートを敷いておいたパウンドケーキの型に3〜4回に分けて流し入れ、表面を平らに整え、型をトントンと軽くテーブルに叩きつけ、大きな気泡を抜きます。

一度に生地を入れますと、大きな空洞ができてしまうため、ゴムベラやシリコンヘラなどで3〜4回に分けて入れるのがコツですの。


あらかじめ170℃に予熱しておいたオーブンに、準備した型を入れ、30分〜35分焼きます。

中央に竹串を刺して、生の生地が付いてこなければ焼き上がりですわ。


焼き上がったら型から外して冷ませば完成です。

(本当はケーキクーラーの上で冷ます方がよろしいようですが、わたくしは時間短縮のため、放熱(ディシペイト)で、一気に粗熱を取りましたが……ほほほ。)


別途作成したチーズクリーム(イメージはクロテッドクリームですわ。)を添えて召し上がっていただきました。



「なんだこれ!ふわふわしてるぞ!?」

「このプチプチ食感の実が甘酸っぱくて美味しい〜!」

「この香ばしい実の食感もたまりませんわ!」

「このクリーム…初めて食べるけど美味い!」

「紅茶の風味も香り高くて美味しいわ……。」

「すべての味が合わさるとリッチな味わいになって、美味しいよ。」


ホッ…皆んなの反応は上々ですわ。

わたくしが先程座っていたソファではウィリアムが怒涛の勢いで召し上がっておりますけれど。

ピーターは……うん。反応は良さそうです。

後で商品化出来そうか聞いてみましょう。


「「「「「「「おかわり!!!」」」」」」」


「皆んな、同じものをお渡ししたい気持ちは山々ですが、よろしければ先にこちらも召し上がってくださらない?」


そう言いながらわたくしは、もうひとつのケーキを皆んなにお渡ししました。


「こちらは、ジョンからご提供いただいたベルガモット領産のオレンジを使ったケーキです。

皆んなの感想をお聞かせくださいまし。」


「「「「「「「頂きます!!!」」」」」」」


パクッ……


「おお!これも美味い!」

「オレンジの爽やかな風味がアクセントとなって美味しいですわ!」

「断面の模様も綺麗!」

「本当だ…これは何だろう?」

「アーモンドだ!アーモンドの味がするー!」

「味もさっきよりコクがあるね!どっちも美味しいけど!」


ふむ。こちらも反応は上々ですわね。


エンジェルフードケーキは比較的あっさりとした繊細な生地に、紅茶、イチジク、クルミ、チーズを足してリッチな味わいにしたケーキですが、アップサイドダウンケーキは全卵とバターを使用した生地とリボン状に入れたマジパンで味にコクを出し、甘酸っぱく爽やかなオレンジの風味で味のアクセントを狙いました。


見た目も、薄いベージュに白いクリームを添えるエンジェルフードケーキに対し、きつね色にオレンジ色が乗ったアップサイドダウンケーキと、月と太陽のイメージで作りましたの。


「「「「「「「おかわり!!!」」」」」」」


どちらとも均等に切り分けたものをお皿に並べ、セルフサービスにしてみました。

チーズクリームはエンジェルフードケーキ1切れにつきスプーン1杯までとさせていただきましたわ。

皆んな思い思いにケーキを楽しんでいらっしゃいますので、わたくしも先程のソファ…ウィリアムの隣に戻り、ケーキを召し上がっているウィリアムを見ながら紅茶を頂きます。


「クロエ。このケーキ、もうギルドに登録したかい?」


すると、再びピーターがいらっしゃいました。

ウィリアムが不機嫌そうな笑顔に変わりましたが、わたくしもピーターに用があったため、今はそれを抑えてもらわなくては。

ケーキを食べる手を止めたウィリアムの左手を握り、ピーターに応じます。


「ピーター、ちょうどわたくしも用がございましたの。

どうぞおかけになって?」


「ああ、ありがとう。」


ウィリアムの不機嫌オーラが消えたからか、ピーターもいつも通り穏やかな笑顔で向かい側のソファに掛けられました。



「ピーター、先程のケーキはいかがでした?」


「うん、どちらもとても美味しかったよ。」


「それはようございました。

実は、最初に召し上がっていただいたクリームを添えたケーキは卵白のみ使用して作っておりますので、現在の問題を解決できるのではないかしら。

オレンジが乗ったケーキは、その対比となればと思い作成いたしましたので全卵を使用しておりますが。」


わたくしはピーターに味の感想を確認し、ケーキの説明とご提案をいたしました。


「それはすごい!

廃棄予定のものが商品となって利益を産めるなんて!!

ぜひ父上に掛け合ってみるよ!」


それを聞いたピーターは勢いよく立ち上がり、興奮したように仰いました。


「ありがとう。よろしくお願いしますね。

もし会頭の許可が下りましたら教えてくださいまし。

ギルドへ手続きにまいりますわ。

もちろん、配当はいつも通りに。」


わたくしがそう言いながらそれぞれ紙の箱に入れたケーキと、器に入れたチーズクリームをピーターに手渡します。


「このようにして箱に入れれば、お持ち帰り用のケーキとしても販売可能ですの。

ご自宅用でも良いですし、ラッピングを少し華やかにすればプレゼントやお土産としても見劣りしないはずですわ。

皆んなが召し上がっているように、切り分け、お皿に盛り付けてお店で提供しても良いと思います。

それも併せて、会頭にお伝えくださいまし。」


「……っ。ありがとう。

クロエは本当に、ダンデライオン商会(うち)にとって女神様だよ。」


「あら。お褒めに預かり光栄ですわ。」



それからピーターはケーキとクリームの容器を亜空間収納に入れ、またご自分のケーキが置いてある席へと戻っていかれました。




後日、ダンデライオン商会に呼び出されたためお伺いしたところ、ものすごい剣幕の会頭に商品化の許可を頂戴しましたわ……。

悪m…げふんげふん……怖かったですわ……。




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