第68話
ごきげんよう。
クロエ・カサブランカでございます。
本日は雪の月13日。
今年もまた、ダンデライオン邸の大広間にて勉強合宿の日がやってまいりました。
昨年同様試験に向けて分からないところを教え合うのに加え、今年は卒業試験となりますので、筆記試験や実技試験といった形式ではなく、制作物やレポートの提出を試験とする科目もあるため、それに対する意見交換もする予定です。
わたくしが選択している科目では、魔法薬学と錬金術が制作物を、店舗経営学がレポートの提出となり、その他は筆記試験となります。
冬季休暇最初の2週間は、マイハウスでお菓子作りや家事、勉強をして過ごしておりましたわ。
卒業制作物やレポートは冬季休暇に入る前からコツコツと制作していたため、あらかた完成しておりますの。
そうそう。
ひとつ、ご報告がございましたわ。
終業式の日のことを覚えていらっしゃいますか?
ヒロインがわたくしに階段から突き落とされたと言った、あの件ですわ。
あの後、先生方の緊急ミーティングを終えたケイト先生が教室にお戻りになり、すぐにクラスミーティングが行われましたの。
ケイト先生が教えてくださった緊急ミーティングの内容によると、先生がわたくしのアリバイを証言してくださったため、わたくしの無実が学園長をはじめとした先生方の満場一致にて認められたそうです。
わたくしを含めたCクラスの面々は問題行動を起こした事もありませんし、近々では創立祭の出し物のパンケーキ屋にほとんどの先生がご来店くださっていたため、先生方の信頼や好感を得ていたそうです。
よって、ケイト先生の証言を先生方はすんなりと信用なさったそうですわ。
反対に、ヒロインは問題行動が多く、クラス担任のマグオート先生も一時期元気を失くされるほどに悩まされていたことは、他の先生方にも周知の事実でしたの。
それも、大きな要因とのことですわ。
日頃の行いって、大事ですわね。
併せて教えていただいたのは、度々ヒロインがテキストや私物を隠された、破かれたなどと被害をマグオート先生に訴えており、その際決まって言っていたのは犯人はクロエであるということでした。
目的があからさますぎて本当に清々しいですわ。
そんなにゲームのシナリオ通りになさりたいなら、どうぞお好きになさって。
………わたくしは利用させていただくだけですわ。
結局、ミーティングではこの件もヒロインの狂言と決定付けられ、状況の確認や当人達への面談など、詳しい調査は行われないこととなりました。
本当に、日頃の行いって大事ですわねぇ……。
(大切な事ですので2回言いましたわ。)
さて、わたくしは今、窓際のソファに腰掛け、地理のテキストを読み返しているところですわ。
予習、復習は欠かさず行っておりますので特に問題はございませんが、油断は禁物ですから。
「クロエ。」
「ピーター、いかがなさいましたの?」
声をかけられたため顔を上げると、そこにはピーターが立っていました。
「クロエも店舗経営学を履修していましたよね?
レポートの首尾はどうです?」
「えぇ、少しずつ進めておりますわ。
ピーターはいかがですの?」
わたくしが聞き返しましたら、ピーターは困ったような表情をし、向かい側のソファに掛けながら仰いました。
「実を言うと……全く進んでいないんだ。」
「まぁ、そうでしたの……。
でも、ピーターなら題材は誰よりも多くありそうですし、大丈夫ではなくて?」
ピーターの意外なお返事に驚きつつも、わたくしは心配ない旨をお伝えしました。
ここフローレン王国一番の商会である、ダンデライオン商会の会頭を父に持ち、自身も商会を継ぐことを目標とし、講義がない日や安息日には商会のお手伝いをなさっているピーターであれば、誰よりも題材には困らないと思いましたが……。
「ちなみに、クロエは題材を何にしたんだい?」
「わたくしは先日のパンケーキ屋についてレポートを制作しておりますわ。」
「……確かに、パンケーキ屋はまさに発明だったよ。
この世界には無かった店だし、システムも画期的だ。
発案者のクロエがレポートにするなら説得力があるし良いと思う。」
「ありがとう。」
ピーターのお褒めの言葉に思わず顔を綻ばせながら御礼を申し上げました。
すると、ピーターは優しく微笑み返してくださった後、ふっと表情を曇らせて話し出しました。
「僕は……君みたいに天才じゃないし、何ひとつ自分で成してはいない……。
そんな僕がレポートを制作したって…説得力がないだろう?」
はたから見れば恵まれた環境にいるようですが……。
心の内は本人にしか分からないものですわね。
「ピーター…。
わたくしは、天才ではございませんわ。
甘味を作るのが好きなだけです。
クレープ屋台だって、パンケーキ屋だって…皆んなの協力がなければ成し得なかったことですわ。
決して、わたくしひとりの成果ではございませんの。
貴方はお父様である会頭の跡を継ぐという目標を成すために、今は勉強なさっているのではなくて?
今はたくさんのことを勉強する時期と捉え、努力を怠らなければ、きっと、花が咲く時がやってきますわ。
その時期は誰にも分かりませんが、いつ好機が訪れても力を振るえるように備えておくことが重要だとわたくしは考えます。
謙虚で物腰が柔らかく人当たりの良いピーターなら、きっと出来ますわ。
ご自分を信じて、ご自分の道を歩んでくださいまし。」
「……そうだね。
今はまだ、学ぶべきことが山ほどある。
うん……目が覚めたよ。
クロエ、ありがとう。」
「お役に立てたのならようございましたわ。」
「ところでクロエ……………っ!!」
ピーターが何か仰ろうとしましたが、途中で顔を青ざめて黙ってしまいましたわ。
「ピーター?」
「クロエ。」
後ろから呼ばれたため振り返ると、ウィリアムが立っていました。
「あら、ウィリアム。
鍛錬はもう終了しましたの?」
「ああ、今日はもう十分だ。」
そう言いながら、ウィリアムはわたくしが座っているソファの空いたスペースへと滑り込むように座られました。
ちょっ…と……近いですわ……!
「……お邪魔みたいだから僕はこれで失礼するよ。」
ピーターはそう言いながら席を立ち、違うグループの方へ行ってしまいました。
急にどうなさったのかしら……。
「ピーターと何を話していたんだ?」
ウィリアムが笑顔で問いかけてきます…が。
座った時点で近かったのに、さらに寄ってきてもう密着していますし、腰に手を回してきましたわ……。
一見すると甘い空気のようですが、ウィリアムのブラックな笑顔がそんな空気を微塵も感じさせません。
わたくし、気に触るようなことは何もしていないと思いますが…。
「えぇ。レポートの件ですわ。
店舗経営学の卒業試験はレポートの提出でして、その題材についてお話ししていましたの。」
「その割にピーターは……」
「ウィリアム?」
「いや…なんでもない。そうか…。」
そう言うと、ウィリアムの雰囲気がいつもの柔らかなものへと変わり、優しい笑顔を向けてくれました。
「あ…そうですわ。
ウィリアム、おやつをお持ちしましたが、召し上がりま「食べる。」……。」
相変わらず返事早っ……。
こんばんは。めいです。
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創作中に心が折れそうになった時に思い出して自分を奮い立たせています。
本当に、ありがとうございます。(土下座)
これからもぽちぽち頑張りますので、温かく見守ってくださいますと嬉しいです。




