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猫を助けたかっただけなのに  作者: めい


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第58話




ごきげんよう。

クロエ・カサブランカでございます。


本日は土の月2日。

創立祭2日目でございます。


ただいまの時刻はお昼の1時。

わたくしは今、絶賛生地作り中でございます。


ありがたい事に、本日は開店と同時にたくさんのお客様がご来店くださいまして、満席の状態が続いております。

お店の外には早くから行列ができているようで、昨日お約束した通り、ケイト先生が呼び込み担当のクレアとご一緒にお客様の誘導や対応をしてくださっているそうです。



昨日、ケイト先生からのご提案を皆んなに相談した後、わたくしは先生方のテーブルに再度赴き、皆んなで決定した内容をお伝えいたしました。


「先生方、先程の件ですが、皆んなで決定した内容をお伝えいたしますわ。

まず、ケイト先生とペチュニア先生には、お店の外でお待ちいただくお客様の誘導とご案内のお手伝いをお願いいたします。

ただし、1日中お手伝いいただくのは先生方も大変でしょうから、わたくし達同様、前半と後半に分かれておひとりずつお願いします。

マグオート先生はその間、ご自身のお仕事に加えて、ペチュニア先生とケイト先生のお仕事のお手伝いをお願いいたします。

お手伝いの期間は明日から4日間とし、御礼として、その日の閉店後の店内でお好きなパンケーキメニュー1皿と、お好きなドリンクをお1つ無料で提供させていただきますわ。

閉店後ですので、誰の目も気にせず、ゆっくりとパンケーキとこの空間をお楽しみいただけるかと思いますが…いかがでしょうか?」


「それは贅沢な御礼ですね!

皆んなのお役に立てるよう頑張ります!」

「俺もその御礼のために頑張るかな。」

「2人は御礼をもらうべきだが、俺は……」


わたくしがお伝えした内容に、ケイト先生とペチュニア先生は前向きなご返答をくださいましたが、マグオート先生は遠慮がちにお応えになりました。


これは………もうひと押しでしょうか?



「マグオート先生。

先生はSクラスを担当なさっていますから、表立ってのお手伝いをお願いするのは難しいですわよね?」


「ああ…そうだね。」


「したがって、そちらはケイト先生とペチュニア先生にお願いいたしますの。」


「それは当然だと思うよ。」


「ですから、先生にはケイト先生とペチュニア先生がお手伝いしてくださっている間、それぞれのお仕事のお手伝いをお願いしたいのです。

それが、マグオート先生へCクラス全員から依頼するお手伝いの内容ですわ。」


「それは全く構わないんだが、それで御礼をもらうのは……」


腑に落ちない様子のマグオート先生に、わたくしは更に続けます。


「先生。お手伝いをお願いするのならば御礼をお渡しするのがCクラスの流儀ですのよ?

四の五の言わずに御礼も受け取ってくださらないと、皆んなが困ってしまいますわ。」


「ええ…?」


「と、言うのは建前で、本当は皆んな元気がなかった時の先生の事を心配しておりましたの。

先生がパンケーキを召し上がって元気を取り戻してくださるなら、たくさん召し上がって欲しいというCクラス全員の総意ですわ。

どうかその気持ちを、受け取ってくださいまし。」


「………っ!……ありがとう。

そう言う事なら、俺も一緒に御礼を頂く事にするよ。」


「そう仰っていただけて嬉しいですわ。

それでは明日から、よろしくお願いいたします。」



とまぁ、こんなやり取りを経て、無事にマグオート先生をまるめ…げぶんげふん…説得する事ができましたの。

押してダメなら押しまくれ作戦。成功ですわね。


ジェームズの優しさがマグオート先生に届いたように感じて、とても嬉しかったですわ。



閑話休題。




チリンチリン…


「お客様ご来店でーす!」


「「「「「いらっしゃいませー!」」」」」


生地作りがひと段落し、卵を割っていましたらお客様がお見えになりました。


出入口の方を見てみますと…あら!

サンダルウッド先生がご来店くださいましたわ!

本日もとんがり帽子に魔法使いのローブをお召しになり、長くて白いお髭も決まっています。

後程、折を見てご挨拶に伺いましょう。



「クロエ。」


「ウィリアム、どうなさいましたの?」


「あの御仁は?」


ウィリアムが、レジで注文なさっているサンダルウッド先生を指しながら尋ねてきました。

そういえば、1学年は魔法学基礎と薬草学基礎に分かれておりましたが、どちらも違う先生が教鞭を執っていらっしゃったため、魔法薬学を選択しない限り、直接サンダルウッド先生と接する機会はありませんのよね。

先生は校内では有名人ですから、風の噂程度ならご存知かもしれませんけれど。


ウィリアムのように騎士系の科目を選択している生徒は、1学年の基礎教育を担当する教師と、クラスの担当教師、2学年以降に選択する騎士系の科目の担当教師としか接する機会はなく、他の先生方につきましてはご存知ない事が多いようです。


逆に騎士系の科目を選択していないわたくしのような生徒達は、履修講義選択期間に多くの講義を見学しておりますので、騎士系科目を担当なさっている先生方のみ知らない場合が多いですわ。


それはともかく、わたくしはウィリアムの質問にお応えします。



「あのお方は魔法薬学のサンダルウッド先生ですわ。

わたくしは履修しておりますので、お世話になっておりますの。」


「そうか…あの御仁がそうだったんだな。」


「あら。ウィリアムもご存知だったのですね。」


「ああ。風の噂程度だろうが、聞いたことはある。」



ウィリアムがカスタードクリームを炊きながら頷きました。



「先生は、噂に違わぬお方ですわ。

いつも穏やかで、冷静で、わたくし達生徒の事をよく見てくださっていますもの。

わたくしも、先生を尊敬している生徒の1人ですわ。」


わたくしは、卵を割り入れたボウルから黄身だけを取り出し、もう1つのボウルに移しながら応えます。


「尊敬……そうか…尊敬か………」ボソッ…


「ウィリアム?」


「いや。何でもない。」


ウィリアムが何か仰ったようですが、声が小さくてよく聞こえませんでしたわ。


「それより、挨拶に行くのか?」


「えぇ。もうすぐ交代の時間ですし、引き継ぎを終えたらご挨拶に伺いますわ。」


何だかはぐらかされた様な気がいたしましたが、まぁ良いでしょう。


程なくして後半組の皆んなが来ましたので、引き継ぎをし、持ち場を離れました。


自由時間となったわたくしは2階の休憩室へ上がる前に、サンダルウッド先生にご挨拶をするべく、小さな器と、小さいスプーンを入れたカトラリーケースを乗せたトレーを持って先生がお掛けになっているカウンター席へと向かいます。


「サンダルウッド先生、いらっしゃいませ。

ケーキのお味はいかがでしょうか?」


「おお、カサブランカ君。

とても美味しく頂いておるぞぃ。」


ちょうど先生がひと口目を召し上がったタイミングでお伺いしたようで、先生はにこやかにお応えくださいました。


テーブルを見ると、先生はイチゴと紅茶をご注文してくださったようです。


こちらをお待ちして正解でしたわ。

わたくしはトレーに乗せていた直径8センチ程の小さい器とカトラリーケースを、先生が召し上がっているイチゴのパンケーキのお皿の隣に置きました。


「先生、もしよろしければこちらもご一緒に召し上がってくださいまし。

試作品ですの。」


「ほぅ…これは何じゃ?」


先生が中に入っている物をまじまじとご覧になりながらお尋ねになりました。


「こちらはジェラートという、冷たいお菓子ですわ。

イチゴを使用しておりますので、このような色をしておりますの。

こちらだけでもお菓子として成立しますが、パンケーキとご一緒にお召し上がりいただいても合うと思いますわ。

試作品のため、他の方のお皿には付いておりませんので、どうぞご内密に。」


わたくしがお持ちしたのは、昨夜イチゴを使って作ったジェラートです。

実は、昨日ネットショッピングを見ておりましたらジェラートメーカーを見つけまして、メニューをご提案する際にアイスクリームを付けていなかった事に気づきましたの。

(まぁ…お約束ですが、この世界にアイスクリームの類は存在しておりませんけれど。)


わたくしとした事が…うっかりしておりましたわ…!

と、いうことで作ってしまいましたの。

アイスクリームでも良いのですが、ホイップクリームも乗せておりますので今回はジェラートにしてみました。

試作品ですので、Cクラスの皆んなや近しい方にしか出す予定はございませんけれど。



「……ほっほっ…

その様な大層な物、わしが頂いても良いのかのぅ?」


「ぜひお願いいたします。

たくさん作ってきましたので、後程クラスの皆んなにも配る予定ですわ。」


「そうかそうか…では、頂くとするかの…」


そう仰って、先生はスプーンに掬ってひと口召し上がりました。


「これは…美味いのぅ…!

本当に冷たくてイチゴの味が際立っておるのに、口当たりが滑らかじゃ…!

まさかこの歳でこの様な物を食べられる日が来るとは…

人生、何が起こるか分からんもんじゃのぅ…

ほっほっほっ。」


「先生のお口に合ったようで嬉しいですわ。」


それから先生は、イチゴのジェラートとパンケーキをご一緒に食べ進め、綺麗に完食してくださいました。


「ふぅ…美味かったぞぃ。

馳走になった。」


「お粗末さまでした。」



サワサワサワ……


その時、ブリーズグロウの葉が揺れ、爽やかなそよ風が心地よく頬を撫でていきました。



「………ここは、良い店じゃのぅ。」


先生がブリーズグロウをご覧になりながら、しみじみといった様子で仰いました。



「…先生にそう仰っていただけて、嬉しいですわ。

先生が管理なさっている温室には遠く及びませんが、少しでも近づける様に、植物を多く取り入れてみましたの。

あの温室は、わたくしのお気に入りの場所の1つですから。」


「そうか…嬉しい事を言ってくれるのぅ…」


そう仰って、先生は穏やかに微笑んでくださいました。


ブリーズグロウについてはご紹介いたしましたが、実は木目調の壁面には植物をレイアウトしておりますの。

出入口側の壁面には、高い場所を好む植物達をハンギングにて等間隔に吊るしておりますし、その反対側の壁は、スリット窓のような枠を3つ等間隔に配置し、そこに土が無くとも枯れない植物達を生けています。

この子達は、水魔法で魔力と水を与えると喜んでくれますのよ。


……失礼。話が逸れましたわ。



「このブリーズグロウも喜んでおるわぃ。

それだけで、ここの空気が澄んでいる事が分かるのぅ。」


「ありがとうございます。

先生のお褒めの言葉が励みになりますわ。」


わたくしが御礼を申し上げると、先生は満足そうに頷いてくださいました。



「さて。名残惜しいがそろそろお暇するかのぅ…」


「あら。もうですの?

もっとごゆっくりしていってくださいな。」


「そう言ってもらえるのはありがたいんじゃが…

今日は兄貴に呼び出されておっての…

また来るわぃ。」


「先生のお兄様…ですか?」


「ん?知らんかの?

この学園の学園長じゃて。」


え………えっ!!?



「…初耳ですわ。」


「そういえばそうじゃったかのう?

ほっほっ…まぁええて。それではの。」



……それで良いのか。

良いのかそれで……?


わたくしが唖然としている間にサンダルウッド先生は席を立たれ、そのままお帰りになられました。





こんばんは。めいです。

本日もお読みいただき、ありがとうございます。


先程アクセスのリンクを見ましたら、累計PV数が10,000を超えていました!

アクセス数も3,000人を超えていて、たくさんの方のお目に触れた事が嬉しくて、感動しました。

本当にありがとうございます!


相変わらず表現力に乏しく、妄想を文章にする難しさを痛感しまくっている作者ですが、ここに載せたからには完走を目指して頑張ってぽちぽちして参りますので、どうか温かく見守っていただけますと嬉しいです。

どうぞ最後までお付き合いくださいますよう、よろしくお願いします。


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