第56話
「「おいしいっ!」」
「まぁ!なんて美味なのかしら!」
ほっ…お口にあった様で何よりですわ。
「ふわふわでとっても美味しいです!」
「あまくて、とてもおいしいですわ!」
「このふわふわの食感もさることながら、素材本来の味も活かされていて、とても素晴らしいですわ!
このクリームをつけると、甘さと滑らかさが足されて更に美味になりますのね!
こちらのピオニー領産のお紅茶ともとてもよく合いますわ!」
ブルーノ様とサーヤ様は瞳を輝かせながら美味しそうに召し上がってくださっています。
夫人は…相変わらず食リポをされながら召し上がっています……
ともあれ、お気に召していただけた様で何よりですわ。
ボゥッ…!
「うわあっ!?」
「きゃあっ!?」
ナタリーが得意の火魔法でバナナを炙った所をご覧になって、ブルーノ様とサーヤ様が驚きの声を上げました。
夫人も驚いた様子で右手を口元に当てながらナタリーの手元を凝視しています。
そういえば、昨年のクレープブリュレの仕上げより今回の演出は派手に見えますので、驚くのも無理はありませんわ。
わたくしはカウンターの中からお3方にご説明をします。
「申し訳ありません。驚かせてしまいましたね。
でも、燃えてしまったわけではありませんので大丈夫ですよ。
昨年のクレープブリュレの仕上げと同じ工程です。
これはバナナというレインフォレスト共和国名産の果物を半分に切り、その断面にお砂糖をまぶしています。
そのお砂糖の部分だけを絶妙な加減の火魔法で炙り、キャラメル状にする事で、甘さを引き立て、香ばしさとコクも加わるんですよ。」
「ちょっとびっくりしたけど、すごくかっこ良かったです!
……うわぁ!美味しそう!」
「とてもあまいかおりがします…おいしそうですわ!」
「確かに、表面だけ綺麗なキャラメル色になっていますわ。
どの様なお味なのか楽しみですわね。」
そう話している間にイチゴとバナナは共にテーブルの方へと運ばれ、ジェームスとレイラの手によって取り分けられました。
「では、頂きましょう。」
「頂きます!」
「いただきます。」
カチャカチャ…パクッ
「うわぁ!これも美味しいです!」
「お姉さまがおっしゃったバナナもとてもおいしいですわ!」
「こちらも素晴らしいお味ですわ!
バナナは初めて頂くけれど、とても美味ですのね!
食感がトロッとしていて、甘く香ばしさもあるのにコクも感じられて、まさに絶品ですわ!」
本日も夫人は絶口調ですわ……
「お口にあったようで何よりです。
バナナはそのまま食べる事もできる果物ですが、炙った事で食感もトロッと柔らかくなっているんですよ。」
お3方はそのままバナナを食べ終え、勢いそのままにイチゴもペロリと召し上がりました。
最後に、モモとリンゴがテーブルに置かれました。
ご注文の会話を聞いていたウィリアムが生地を時間差で焼いてくださっていたため、焼きたてふわふわのベストな状態で運ばれて行きました。
さすがウィリアムですわ。
モモは、ホイップクリームとモモのソース、丸ごと1個のモモを添えています。
モモを取り分けるために、エヴァがナイフを入れた瞬間ーーー
「「わぁぁぁっ!!!」」
「まぁっ!!!」
ーーー中からカスタードクリームが出てきました。
実はこのモモは、種をスプーンでくり抜き、そこへカスタードクリームを詰めておりますの。
ナイフを入れた時、お客様に驚いていただける様にしてみました、
先日の試食会の際、モモと合わせるクリームをどちらにするのかホイップ派とカスタード派の論争が起こりまして…ならばとこちらをご提案しましたら満場一致で決定した経緯がございます。
「全部美味しかったけれど、僕はモモとバナナが特に好きです!」
「わたくしも、ぜんぶおいしかったけれど、1ばん好きなのはイチゴですわ!」
「どれも絶品でしたが、わたくしは特にリンゴが気に入りましたわ。」
全種類召し上がったお3方は、それぞれお気に入りを見つけたご様子です。
ブルーノ様は相変わらずカスタードがお好きの様で、モモがお気に召したのは予想通りと言いますか何と言いますか…
夫人がお気に召したリンゴにもカスタードクリームを使用しておりますが、こちらは白ワインを使用しているため、少し大人の味だったのかもしれません。
こちらは白ワインを使用してコンポートにし、キャラメリゼしたリンゴと、カスタードクリーム、コンポートの煮汁を煮詰めて作ったキャラメルソース、ダイスアーモンドをトッピングしておりますの。
わたくしはお3方がいらっしゃるテーブルの側へ移動し、声をかけます。
「皆さん、お味はいかがでしたか?」
「全部とっても美味しかったです!」
「わたくしも、ぜんぶおいしかったですわ…!」
「もちろん、わたくしもよ。
頂く前から嬉しい驚きもたくさんあって、待ち時間も楽しく過ごせましたわ。
それと、クロエさんが勧めてくださった通り、3人で分け合って頂いたからか、お腹の具合も丁度良くってよ。」
お3方共、満足そうな笑みを浮かべながら応えてくださいました。
美味しく召し上がってくださってわたくしも嬉しいですわ。
「あっ…クロエお姉さま…あのね…っ。」
すると、サーヤ様が何やらもじもじされながらお話を切り出されました。
その可愛らしい様子に、わたくしは微笑ましく思いながらお応えします。
「サーヤ様、どうなさいました?」
「これ…っ!クロエお姉さまにあげます!」
ん?
そう仰いながらサーヤ様が差し出されたのは、5センチ四方の小さな箱でした。
「こちらを…わたくしに?」
「はいっ…!あけてみてください…っ!」
真っ赤なお顔で勧めてくださったので、素直に銀色のリボンを解き、水色の箱を開けますと、中にはキラキラとした小ぶりのビーズで作られたブレスレットが入っていました。
銀色を基調としていますが、所々に水色と黄色のビーズが散りばめられています。
「これは…わたくしの髪と瞳の色…?」
「はっ…はい!
お姉さまとはじめてお会いしたとき、とてもきれいで、やさしくて、わたくしもお姉さまのようなレディになりたいとおもいました…!
今はそんけいするお姉さまに少しでも近づきたくて、おべんきょうをがんばっていますの。
このおまつりがおわったら、つぎはいつ会えるかわからないけれど、お姉さまはずっと、わたくしのあこがれの人ですわ…っ!
だから…だから…っ…」
お顔を真っ赤になさって、一生懸命お気持ちを伝えてくださっているサーヤ様がとても愛らしくて、気がついた時には、わたくしは思わずサーヤ様を抱きしめておりました。
「サーヤ様。ありがとうございます。
一生懸命お気持ちを伝えてくださって、わたくしはとても嬉しいですわ。」
「ほんとうに…?ごめいわくではないの?」
感情が昂ってしまわれたサーヤ様は、涙目でわたくしを見上げました。
こんなに可愛らしい方に好かれて迷惑に思うなど、ありえませんわ。
「迷惑なものですか!
サーヤ様のように可愛らしいレディにこんなに一生懸命お気持ちを伝えてもらって、嬉しいに決まっていますわ!
こんなに素敵な贈り物をくださって、ありがとうございます。」
「…っ!お姉さまぁっ!」
そう仰って、サーヤ様はとうとう泣き出してしまわれました。
わたくしは再びサーヤ様を抱きしめながら、頭を撫でて差し上げる事にいたしました。
「良かったわね。サーヤ。」
「サーヤ、良かったね!僕も嬉しいな!」
夫人とブルーノ様はそんなサーヤ様を温かい眼差しで見守っていらっしゃいました。
サーヤ様が落ち着いてからブレスレットをいただき、左手首に付けて見せましたら、サーヤ様はとても喜んでくださいました。
ただ、このまま腕時計型の魔道具と一緒に左手首に着けていますと、何かの拍子で傷が付いてしまったり、最悪の場合、壊れてしまう可能性が考えられましたので、理由をご説明した上で、こっそりと結界を付与し、エプロンの右側の首紐に通して胸当てとの縫い目辺りにくるように着け直しました。
それでもサーヤ様は愛らしい笑顔を浮かべながら喜んでくださいましたわ。
「それではそろそろお暇いたしましょうか。」
「はい。お母様。
クロエお姉さん、また来ますね!」
「クロエお姉さま、また来ますわ。」
「えぇ、是非!お待ちしておりますわ!
お客様お帰りでーす!」
「「「「「ありがとうございましたー!」」」」」
その後、少しお話しをした後、お3方は笑顔でお帰りになりました。
チリンチリン…
「お客様ご来店でーす!」
「「「「いらっしゃいませー!」」」」」




