第54話
ごきげんよう。
クロエ・カサブランカでございます。
本日は土の月1日。
いよいよ学園生活最後の創立祭の日を迎えました。
わたくし達Cクラスのパンケーキ屋も店舗が無事に完成し、昨日設置と結界の付与をいたしました。
(学園の許可はきちんと取ったため、問題ありませんわ。)
わたくし達Cクラスの面々は教室で着替え等の準備を済ませ、芝生広場に移動して参りました。
芝生広場にナチュラルな雰囲気の店舗がよく合いますわ。
店舗の高さは5メートルあり、外から見ますと見上げるような高さでございますが、これには2つ理由がございますの。
これからお店をご案内いたしますので、理由もその時にお伝えいたしますわ。
店舗のコンセプトは(北欧風)ナチュラルカフェでございます。
カッコの中はわたくし個人の追加テーマですわ。
お気になさらず。ほほほ。
外観は最初の案より少々変更いたしましたの。
入口側から見て右にあたる庭園側の壁と天井を全面ガラス張りにし、入口側は中央より左寄りにガラス張りの扉を据え、扉より右側、客席側の壁面は扉の上半分程の幅のはめ殺しのガラス窓を設置し、残りは白い壁となっております。
残り2面も全て白い壁でございまして、こちらには窓を設けておりません。
ちなみに、お店の看板は入口の左側に設置いたしました。
創立祭終了後はダンデライオン商会の看板に変更される予定です。
中に入りますと、木目調で統一された開放感のある店内で一際目を引くのが、客席中央に佇む1本のブリーズグロウ。
お店のシンボルツリーとなるこの木は、高さが4.5メートル程あります。
これが、1つ目の理由ですわ。
白樺の様な白い幹から繊細な枝が伸び、その先に付いているライトグリーンの鮮やかな小さい葉たちが天井からの光を木漏れ日に変え、店内を優しく照らしてくれています。
見た目は湖畔に自生しているホワイトツリーと似ていますが、特徴が違いますの。
この木はその名の通り、光を好み、そよ風を生む木でございます。
天井をガラス張りにしたのは採光のためもありますが、1番の理由はブリーズグロウのためですの。
今も大好きな光をたくさん浴びて、爽やかなそよ風を生み出しながら気持ちよさそうに葉先を揺らしていますわ。
ブリーズグロウは調理等の熱で籠りがちな空気を取り込み、清涼な空気を生み出して循環してくれるため、ナチュラルなインテリアと相まって、まるで森の中にいるような清々しい空間でパンケーキをお楽しみいただけると思います。
そのシンボルツリーとなるブリーズグロウをぐるりと囲む様にカウンター席を設け、おひとり様等少人数でご来店の方を優先的にご案内いたします。
そしてそれを囲うように、4名様用のテーブル席を庭園側に4つ、キッチン側に4つ、その間、シンボルツリーの横に1つずつ、合計10テーブル配置しております。
客席はカウンター席と合わせまして50席をご用意しました。
キッチンは、最初にご提案した通り、仕込み用のメインキッチンと、焼き台や盛り付け台を設けたオープンキッチンに分けました。
オープンキッチンはL字型になっており、短辺は入口の正面に位置し、レジを配置しております。
お客様がご来店されましたら、まずはこちらでご注文とお会計をし、ホール担当が席までご案内します。
ご注文の商品が準備できましたら、ホール担当がお席までお待ちいたしますの。
L字型の長辺はホールの客席側を向いております。
奥から6名分の生地が焼ける焼き台が5台、盛り付けスペースを2つ、配膳台となっております。
焼き台や盛り付け台から後ろに振り返ったメインキッチン側の壁面は、高さ2.5メートルより上は他の壁面同様白い木目の壁となっております。
その下半分は、焼き台の途中から配膳台辺りまでの幅がカウンターの様になっており、客席側から見て右からドリンクサーバーを3台置いております。
配膳台の後ろ辺りはウエスタンドアになっており、メインキッチンと行き来する事ができますわ。
ちなみに、空いている部分からメインキッチンの様子を見られては困りますので、幻影にて白い木目の壁にしか見えないようにしております。
ただし、メインキッチン側からは丸見えですが。
メインキッチンの高さは2.5メートルで、壁は全面タイル張りにしております。
壁面には向かって右から卓上ミキサー3台と作業スペース、シンクを設置いたしました。
この壁面の作業台とドリンクサーバーを乗せたカウンターとの間にもう1つ、両端に4つ口の魔導コンロを備えた調理台を設けております。
シンク以外のメインキッチン全ての作業台の下は冷蔵庫になっており、材料をたくさん入れておけるため便利ですわ。
オープンキッチンは、盛り付け台とドリンクサーバーの下のみ冷蔵庫になっております。
シンクの左側には大型の食器洗い乾燥機を設けました。
こちらもわたくしがイメージ図と魔石による動力回路の設計図を描き、ダンデライオン商会お抱えの優秀な魔道具職人に作成していただいたものです。
先日、調理器具の試作品の出来を確認するためにバナナのパンケーキを会頭室で作った際、皆様が試食しているのを見ながら気付いた事がございました。
わたくしは普段、何気なく洗い物をしておりましたが、お店でとなりますと量が違いますし、これは重労働になるのではないか。
それならば、食洗機を作ってしまった方が負担を軽減出来るのでは?
そのように思いまして、その場で図面を引きご提案しましたら、魔道具職人の方が前向きに提案に乗ってくださいましたので、そのまま作成をお願いしましたの。
こちらは使用済みの食器等を入れ、魔導コンロを使う時同様、魔力を少しだけ流しながら青いボタンを押すと、中で水魔法と洗浄魔法が作動し、中の物を洗ってくれます。
洗い終えたら音が鳴りますので、次は白いボタンを押します。
そうしますと、火魔法と風魔法が作動し、温風を発生させ、中の物の無駄な水分を乾かしてくれます。
(こちらはわたくしの家にあるドライヤー室を応用した物ですわ。)
完成後、会頭にものすごい圧で商業ギルドへの権利登録と、ダンデライオン商会での独占販売の契約を結ばされたのは…あく…げふんげふん…夢に…げふんげふん………思い出したくありませんので、ここでこの記憶を封印する事にいたしましょう…
しかしこれで、洗い物担当を1名に削減する事が可能となりました。
さて。
皆様、もうお気づきかと思いますが、このメインキッチンには2階がございます。
こちらが店舗の高さの理由2つ目でございますわ。
実はお客様入口とは反対側の壁に、隠し扉を設けましたの。
従業員用の出入口として使用するため、契約した者しか存在を認識出ませんし、開ける事も出来ません。
こちらから中に入りますと、正面にはメインキッチンに繋がっている引き戸、左には階段がございます。
この空間と階段には窓が無いため、照明で明るさを確保し、存在がバレないように防音も付与しておりますわ。
階段を上りますと、2階フロアでございます。
もちろんここも防音も付与しております。
わたくし達はソファやテーブル等を持ち込み休憩室として使用いたしますが、ダンデライオン商会にお渡しした後は別の用途になるかもしれません。
ホール側の壁にはホールの様子をリアルタイムで確認できるよう、常時モニターを表示させておりますわ。
今年も昨年同様、選択授業やクラブ活動等の出し物のため、皆んながずっとお店に出る事は出来ません。
もちろん、お祭りを楽しむ時間も必要ですわ。
昨年は時間になったら抜けて、終わったら戻ってくるという割と自由な括りで運営しましたが、今年はシフト制を設けました。
出し物の時間等の都合を踏まえて、前半組と後半組に分かれ、15名ずつの2交代制にいたしましたの。
前半組は10時から13時30分までで、それ以降は自由時間。
後半組は13時30分から17時までで、それ以前は自由時間です。
もちろん、自由時間であれば2階の休憩室でゆっくりと過ごす事もできますわ。
長くなりましたが、お店のご案内は以上でございます。
衣装につきましては、今回もラバンディン・オートクチュールにご協力を賜りました。
今回はナチュラルカフェがテーマですので、昨年とは少し違った雰囲気の衣装になりましたわ。
トップスはサックスブルーのオックスフォードシャツ、ボトムスは薄いカーキ色で、ベージュ色のエプロンは胸当てがついたタイプです。
ちなみに、ボトムスは少しゆったりめのパンツか、マキシ丈のAラインスカートを選択できるようにしました。
スカートはたっぷりとした生地使いで、美しいシルエットが広がります。
軽やかな生地を使用しており、歩くたびにドレープが綺麗に揺れるのに、長時間履いても疲れにくい仕様となっております。
ちなみに、わたくしはボトムスを両方注文しましたわ。
お店に出ている時はパンツを着用し、休憩等で散策する時はスカートに着替えようと思っていますので。
そして靴は、パンツを選択した場合は白いローカットシューズを、スカートを選択した場合は白いハイカットシューズを合わせます。
靴下は濃い目のカーキ色です。
今回も衣装の発案者はわたくしでございますわ。
今年こそはマダム・ラバンディンにデザインを賜ろうとしましたら、逆にマダム・ラバンディンに質問攻めにあい、わたくしの案を根掘り葉掘り聞き出され、結局採用されてしまいました…
圧が…圧が…すごすぎましたわ……
「皆んな、集まってくださいまし。」
おっと。
もうこんな時間ですわ。
ベロニカの声かけに、店内でそれぞれ準備をしていた皆んなが手を止め、シンボルツリーの周りに集合します。
「クロエ。今年もお願いできるかしら?」
「分かりましたわ。」
発案者だからか、今年も円陣の掛け声のご指名を賜りましたわ。
皆んなが円陣を組んだ事を確認し、わたくしは出来る限り皆んなの顔を見ながら話し始めます。
「え〜、今年もご指名が入りましたので、僭越ながら掛け声をかけさせていただきます。」
今年も、皆んな忙しい中ミーティングに欠かさず出席してくださって、練習や準備もたくさん協力してくださいました。
本当に、感謝してもしきれませんわ。
「皆んな。今年もわたくしのわがままに付き合ってくれて、たくさん練習や準備をしてくれて、ありがとう。
学園生活最後の創立祭、体調に気をつけて、たくさん楽しんで、悔いの無いように過ごしましょう!
そして、このパンケーキ屋を成功させましょう!
Cクラス!行くぞ!」
「「「「「「「おーーーーー!!!」」」」」」」
ポンッポンポンポンッ
「ちょうど開始の空砲が鳴りましたわね。」
「昨年も同じタイミングだったのではなくて?」
「あら、そうだったかしら?」
「「………ふふっ。」」
今年もベロニカとハイタッチをしていましたら、丁度開始の合図の空砲がなりました。
さあ!これから5日間、頑張りましょう!!!




