第52話
ごきげんよう。
クロエ・カサブランカでございます。
本日は緑の月18日。
Cクラスのミーティングの日ですわ。
今年の創立祭のクラスの出し物ですが、先月のミーティングにてわたくしが昨年ご提案したパンケーキ屋さんに決定し、大まかな内容を決めました。
本日のミーティングでは、次回から準備に取り掛かれるよう、詳細を詰める予定ですわ。
「皆んな。ごきげんよう。
………ベロニカ、元気がない様だけれど、どうなさったの?」
大広間に入り、皆んなにご挨拶をしましたら、ベロニカの元気がない様子ですわ。
心配になり、理由を尋ねる事にしました。
「クロエ……貴女の目は誤魔化せませんわね。
実は、皆んなにご報告があるの。
今年は、出し物でクレープ屋台を中庭で出店したいというクラスが殺到したため、中庭の使用が抽選になってしまって…」
「なるほど…」
あらかた、話の方向性は見えて来ましたわ。
「抽選の結果、今年はSクラスが中庭でクレープ屋台をする事になりましたの。
……皆んな、本当にごめんなさい!」
ベロニカが勢いよく頭を下げて謝罪なさいました。
創立祭の出し物、出店場所に関しましては、花の月に行われる創立祭実行委員会主催のミーティングにて、代表者が出し物の内容と出店希望場所を申告しなければなりません。
昨年は競合相手が少なかったため、ベロニカの説得により、わたくし達Cクラスが中庭と食堂を使用する事ができましたの。
しかし、ダンデライオン商会の手腕により、現在もクレープはフローレン王国内で大流行中でして、国を代表する人気スイーツとなりました。
クレープ屋台をする事は別に構いませんが、中庭を取られたとなると、バックグラウンドになる食堂も使用出来なくなるため、痛いですわね…
しかし、ここで悩んでいても仕方ありません。
何とかプランBを考えましょう。
「そんなの、ベロニカのせいではありませんよ。」
「ピーター…」
「そうですわ。
ベロニカは力を尽くしてくれたのですから、謝る必要などなくってよ?」
「クロエ…」
ピーターがベロニカに声を掛けましたが、わたくしも同意見のため後に続きました。
「そうだよ!ベロニカが謝る必要なんて無いよ!」
「そうそう!」
「ベロニカは何も悪く無い!」
「抽選なら仕方なく無いか?」
「そうですわ!」
「気にしないで!」
どうやら、皆んなも同じ意見だった様ですわね。
「とりあえず、皆んな座りませんこと?
ベロニカも座って?ね?」
わたくしは、落ち着いて話し合いが出来るよう、皆んなに着席を促しました。
皆んながソファに座った事を確認し、話を切り出します。
「中庭を他のクラスが使用するのであれば、こちらも他の場所を考えましょう。
皆んな、何か案はございまして?」
「「「「「うーーーーーーーーーん…」」」」」
まぁ…そうなりますわよね。
わたくしも昨年同様中庭を想定しておりましたので、いきなり違う場所の案を出せと言われても困りますわ…
Cクラスの教室は講義棟の3階、一番奥に位置しておりますので、宣伝に人員を割かなければ集客は難しそうですし、設備も不十分のため、パンケーキの生地作りやフルーツのカット等の下拵えが出来ませんので、論外です。
下拵えをしながら運営するためには、広い場所を確保し、且つ衛生管理が可能な設備を整える必要が出て来ますが、中央ホールはクラブの出店スペースが多いため不可。
メインホールは歌や楽器演奏、演劇等、芸術クラブが連日出し物をするため使用不可。
訓練場も騎士系の科目選択者が主に乗馬や剣術の披露を連日行うため、不可。
………ちょっと待って。
広い場所、1箇所ございましたわ。
「皆んな、わたくしから提案したい事がございますが、よろしいかしら?」
「クロエ、何か思いついたのかい?」
「えぇ。ですが、その前にピーターに確認したい事がございますの。」
「僕に?何かな?」
どなたも意見が無さそうでしたので、わたくしから案を出そうと手を上げましたら、ピーターが応じてくださいました。
「先月のミーティングでご了承いただいていましたが、再度確認させてくださいまし。
今回もお店の建築等、設備面でもダンデライオン商会のご協力を賜われるという認識でよろしくて?
もちろん、昨年お約束した通り、創立祭後はそのまま商会の店舗としてご利用いただけますと幸いですわ。」
「ああ、もちろん協力は惜しまないよ。
父上はパンケーキ屋を出店する日を心待ちにしているからね。」
ピーターより言質をいただきましたので、わたくしは笑顔で考えを申し上げる事にいたします。
「それはようございました。
では、わたくしの案を申し上げますわ。
庭園に隣接している芝生広場に、店舗を建てませんこと?」
「え。それじゃあ創立祭が終わった後は芝生広場に商会のパンケーキ屋をオープンするってこと?」
わたくしの提案に、ピーターは驚きを隠せないご様子です。
わたくしは自分の考えを詳しくご説明します。
「いいえ。
あくまでも芝生広場に出店するのは創立祭期間のみですわ。
創立祭では建物の基礎をつけずに出店し、終了後は建物ごと亜空間収納にしまい、ダンデライオン商会が出店されたい場所に移します。
その時に初めて基礎をつけるのですわ。」
自分でも無茶な事を申している自覚はございますわ。
ですが、芝生広場での出店は5日間のみ。
いずれ移動する建物に基礎をつけてしまえば広場にも影響がありそうでしょう?
前世では基礎が無い建物は法律でアウトでしたが、仮設や移動式等の建物は例外だったはずです。
(薄っすらとした記憶ですので、違いましたら申し訳ございません。)
今回の場合は仮設にあたる…はずですわ。
乙女ゲームの世界ですのでその辺の法律はこの国に存在しておりませんが。
とにかく、芝生広場の出店期間中は、わたくしの魔力で建物を結界し、防犯性と安全性を高めます。
「クロエの考えは理解したよ。
でもそんな事…可能なのかい?」
「創立祭期間中はわたくしの結界で建物を覆い、安全性と防犯性を高めますわ。
終了後はわたくしの亜空間収納に入れて、建設予定地へとお届けしますわよ?」
「………はあ…分かったよ。
それなら手を打とう。」
「「「「「やったーーーーーー!」」」」」
パチパチパチパチ
ピーターが折れた事を受け、皆んなが笑顔で拍手をしましたわ。
皆んな…その様な反応をなさいますとピーターがラスボスの様に写るのではなくて?
「クロエ、ありがとう。最高のアイデアだわ。」
ベロニカには笑顔で感謝されましたわ。
ベロニカの心が軽くなってくれれば、わたくしはそれで十分ですわ。
「ピーター、いつもありがとう。
無理を言ってごめんなさい。
ダンデライオン商会がいつも協力してくださるから助かりますわ。」
「いや、こちらこそ。
クロエのおかげで商会は益々発展していて、父上も僕も、従業員全員が君に感謝しているんだ。
これくらいの協力は喜んでさせてもらうさ。」
ピーターに感謝を伝えましたら、笑顔でその様に仰ってくださいましたわ。
いつもわたくしが申し上げる事を快くご協力いただける事に感謝していましたら、ピーターが何かを思い出した様に話を切り出しました。
「あ、そうだ。
クロエに相談したい事があったんだよ。」
「相談?どの様な事ですの?」
「実は、父上がお土産でこんな物を持って帰って来たんだ。
何かに使えないかと思って。」
そういって取り出したのは、何とバナナでした!
「これ…どうなさったの?」
思わずそれを凝視し、ピーターにお伺いします。
「実は、雪の月に父上がレインフォレスト共和国に商談に行ったんだけれど、そこでお土産にっていただいて帰って来たんだ。
これはバナナと言って、甘いみたいだから現地ではそのまま食べられているみたいだよ。」
詳しくお伺いしましたら、バナナの木は国中にあり、レインフォレスト共和国では身近な甘味として国民に親しまれているそうですわ。
会頭は、レインフォレスト共和国のトップである大統領と、商業ギルドのギルドマスターに面会した際、意気投合し仲良くなった様で、バナナを含むいくつかの商品を定期的にダンデライオン商会へ送ってもらうよう交渉する事に成功なさったそうです。
そういう事でしたら、喜んでメニューに追加いたしましょう。
「ピーター、ありがとう。
これでメニューのバリエーションが増えますわ。」




