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猫を助けたかっただけなのに  作者: めい


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第49話



その後、わたくしが落ち着いてからウィリアムがゆっくりと離れていきました。

少し寂しさを感じていると、ウィリアムが優しくわたくしの左手を取り、薬指の付け根にキスをしました。

驚いていると、キスをした所が淡く光り、そのまま光が指輪をはめるように一周し、継ぎ目が閉じた瞬間、光の輪は繊細で不思議な模様へと形を変え、一瞬、眩く輝きました。

その後、ゆっくりとわたくしの肌へと静かに消えていきました。


ーーーーーーーあれ?


「ウィリアム…今のは…?」


「ん?

クロエが俺の大切な人っていう証♡」


不思議に思いウィリアムにお伺いしたら、とても恥ずかしいけれど嬉しい言葉と共に優しく両手を握られました。



先程、一瞬だけウィリアムの瞳がペリドットのような色に見えた気がしましたが…

今はいつも通りアメジストのような色ですわ。


……見間違えたのでしょうか?


「なあクロエ。」


「?」


「せっかく恋人になれたんだから敬語は無しにしないか?」


ウィリアムは優しい笑顔のまま、嬉しい提案をしてくださいましたが…


「……そうしたいのは山々ですが、不本意ながらわたくしはまだ王太子殿下の婚約者ですわ。

きちんと婚約破棄が出来るまではこのままでいた方がよろしいと思いますの。」


わたくしが王太子妃教育を修了しているためか、学園入学後も国王陛下や王妃殿下にお会いする度に婚約破棄について提案しておりますが、返事を先延ばしにされる状況が続いております。

不本意ながらまだ婚約破棄は出来ていませんので、それまでは今までと変わらず接する方が間違いありませんわ。

非常に残念ですが、今はまだ我慢しなくてはなりません。


「…残念だがそれが無難だな。

だが認識阻害を使えばバレないからデートはできるだろう?」


「確かに…そうですわね?」


「何で疑問形なんだよ。」


それから2人でひとしきり笑いあった後、3日後に王都の植物園でデートをする約束をしました。

デートなんて前世振りでちょっと緊張してしまいますが、心から好きだと思える方がわたくしの事を好きになってくださって、こうして思いを通じ合わせて恋人になれるなんて、わたくしは幸せ者ですわ。



「あ、そういえばわたくし、ウィリアムに相談したい事がございましたの。」


「相談?何か困っている事があるのか?」


わたくしはウィリアムに相談しようと思っていた事を思い出し、話題を変えました。

ウィリアムは優しい笑顔で聞いてくださいます。


「困っている事といいますか…

ウィリアムは先日のケイト先生のお話を覚えていらして?」


「ん?

…ああ、Sクラスの話か?」


ウィリアムは記憶を辿っているのか、少し首を傾けながら仰いました。


「えぇ、お話の内容が気になったので、先日こっそりと件のアンスリウム様を鑑定させていただきましたの。」


「うん。結果はどうだった?」


「固有スキルの魅了が最大限強化されていましたわ。

……実は1年程前にも、彼の方について気になる点がありこっそりと鑑定した事がありましたが、その時には強化(ブースト)はついていませんでした。

今まではSクラスの生徒はおろか、常に行動を共にしている王太子殿下や騎士団長のご子息にも通用していないようでしたが、突然周りの生徒に影響が出だしたのはそのせいかと思いますの。

わたくしは魔術師団長のご子息が強化(ブースト)を付与した可能性が高いと考えておりますが、他に協力者がいる可能性もあり得ます。

もし他に協力者がいて、その人物が強化魔法をかけたのだとしたら、かなりの魔法の使い手ですわ。

その方がこのままアンスリウム様の味方で居続ければ、脅威的な存在になるのではないかと心配で…」


まずは一番の懸念点であるヒロインの強化(ブースト)を行った人物について相談する事にしました。

魔術師団長の息子ならばアーティファクトで付与した可能性が高くなりますので大した脅威にはなりませんが、他の誰かが付与したのだとしたら、相当魔力が高く、魔法に長けた人物が協力している可能性が高くなります。

その方がこちら側の味方になってくだされば心強いですが、ヒロインの味方であれば、かなりの脅威になるため、警戒しなければなりませんわ。


「クロエは、そいつの事をどう思っている?」


「え?」


そのような事を考えていましたら、ウィリアムがなぜか心配そうに尋ねてきました。


「そいつは余計な事をしたって思ってる?」


………なぜでしょう。

ウィリアムの頭に、まるで叱られた時のようにペタッとした犬の耳が見えますわ…

大型犬みたいでかわいいかも…

あーではなくて、今は質問に答えませんと。


「いいえ?強化(ブースト)の付与に関しましてはむしろ感謝していますわ。」


「え?」


わたくしの返事が意外だったのか、ウィリアムが驚いた表情をなさっています。


「だって、そうでしょう?

殿下は真実の愛に目覚められ、ハッピーエンド。

わたくしも婚約破棄する事ができ、自由を手に入れハッピーエンド。

その方が強化(ブースト)を付与してくださったからこそ、わたくしにとってこれ以上ない程に都合の良い展開となっていますもの。

その方には心から感謝しておりますし、出来ればこちら側に協力していただきたいくらいですわ。」


わたくしが笑顔でそう言い切ると、ウィリアムは安心したような表情で、驚きの事実を仰いました。


「良かった…俺、余計な事したってクロエに嫌われたかと思った…」


「え?」


「黙っていてごめん。

強化(ブースト)かけたの…俺なんだ…」


「えぇっ!?」


「風の月のミーティングで、クロエが自分の事を話してくれただろ?

あの後、メインストリートで王太子とあの女が腕を組んで歩いている所を偶然見かけて、俺も鑑定が使えるから、あの女をこっそり鑑定した。

固有スキルが魅了だったからクロエの話と繋がって、ついでに強化(ブースト)を付与したんだ。

そうしたら、2人で逢瀬宿に入って行ったから、成功したと思って…」


……なんてこと。

探し人は目の前にいましたわ。

薄々思ってはいましたが、やはりウィリアムは魔力、スキル共に相当レベルが高いようです。


「そうでしたの。

ウィリアム、ありがとう。

心から感謝するわ。

貴方は、わたくしの味方でいてくれるんでしょう?」


「勿論だ!!!

俺はクロエだけのものだ!

クロエしか欲しくない!

クロエの味方でしかありたくない!」


わたくしが感謝を申し上げ、さらにお伺いしましたら、間髪入れずに肯定してくださいました。

言葉には力が入っていますのに、わたくしの手を握る力は少し強くなっただけで、わたくしが痛みを感じない程度に手加減してくださっています。

ウィリアムのこういう優しい所が、好きなんです。


「ふふっ。ありがとう。

それなら安心しましたわ。

ねぇウィリアム。

貴方、相当魔力もスキルも高いのではなくて?」


「ああ、詳しくはないが、多分高い方だとは思う。

空間魔法や付与魔法も使えるからな。」


「なるほど…それはすごいですわ。

ちなみに属性(エレメント)の適性はどうですの?」


属性(エレメント)は全部適性があるな。

得意なのは水と風と光だ。」


流石ですわね。

でしたら観察(モニタリング)とかも使えるのではなくて?

それならテレビ通話も出来るのでは……


……まぁそれは後々考えましょう。




「それはすごいですわ。

実はもうひとつ相談したい事があったのですが、ウィリアムになら良いアドバイスがいただけそうですわね。」


「俺なら?どういう意味だ?」


わたくしがウィリアムの話を受けて少しイタズラに笑いながら切り出しますと、ウィリアムがまた不思議そうに首を傾げながら仰いました。

わたくしは表情を引き締め、話を切り出します。


「先程のお話に戻りますが、アンスリウム様は殿下だけに留まらず、多くの生徒や先生にも接近していますわよね?」


「ああ。そうだったな。」


「今の所影響はSクラスの生徒に留まっていますが、このまま放置しておきますと関係のない生徒や先生にまで影響が出かねません。

それは本意ではございませんわ。」


「そうか。クロエはどうしたい?」


ウィリアムが優しく頷きながら真剣に話を聞いてくださいます。


「わたくしは、殿下だけに魅了の効果が出れば十分ですわ。

騎士団長のご子息は気の毒ですが、すでに彼の方と関係を持ってしまわれていますので、無理に魅了を解除するよりこのままの方が負担が少ないかもしれません。

ですが他の方は関係ございませんわ。

可能ならば皆様に魅了耐性を付与したいと思っています。」


「………王太子とブーゲンビリア殿を除く学園関係者全員に?

それは負担が大きすぎる。」


ウィリアムが驚きと心配が混ざった表情で仰いました。

わたくしの事を心配してくださるお気持ちが嬉しいですわ。


「ですから、何か良い案はございませんこと?」



「それなら良い考えがある。

クロエを心配させてしまった事だし、俺にやらせてくれないか?」


ウィリアムは真剣な瞳のまま、そのように提案してくださいましたが……


「でも…それではウィリアムの負担が大きいのでは…」


「俺はクロエの役に立ちたいんだ。頼む。」



「…分かりました。

それでは、よろしくお願いいたします。」


「ああ、任せろ!」


真剣なまなざしでお願いされてしまってはお断りできませんわ。

ウィリアムはわたくしが返事をするなり笑顔で頷きました。

せっかくですから、ここはウィリアムにお任せするとしましょう。





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