第48話
ごきげんよう。
クロエ・カサブランカでございます。
本日は陽の月18日。
Cクラスのミーティングの日でございます。
本日はミーティングではなく、先日の学年末試験の結果がクラス全員全科目合格点を取り、進級を決める事が出来たため、試験の打ち上げと進級お祝いのパーティーです。
今回も皆んなで料理や菓子を持ち寄り、ビュッフェスタイルとなっております。
今回は準備期間が長く取れたため、わたくしはメインのお料理を1品と、デザートを2品お持ちしました。
メインはアッシパルマンティエといいまして、インターネットで見つけた夢が詰まったお料理です。
野菜のテリーヌのレシピを掲載されている方と同じ方のレシピのひとつで、試しに作ってみましたら美味しすぎて一皿をあっという間に完食してしまいました。
レシピは牛肉を使用なさっていましたが、わたくしはミノタウロスのお肉を使用した物を持参しましたわ。
簡単に申し上げますと、ひき肉のソースの上にマッシュポテトを重ねて焼いたグラタンで、フランスの伝統的な家庭料理だそうです。
こちらのレシピは凝って作った物の様で、絶品でしたわ。
前世のテレビでよく見た高級ステーキ程の厚みと大きさのお肉に焼き目をつけ、くず野菜と皮付きのニンニク、トマト、コンソメと一緒にトロトロになるまで煮込み、お肉を一旦お皿に取り出し、手で割きます。
残ったスープは濾した後火にかけて旨みを凝縮し、そこへ先程のお肉を戻し絡めます。
そのお肉をグラタン皿へ移し、上にバターと牛乳を加えて滑らかに仕上げたマッシュポテトを乗せ、更にピザ用チーズを乗せて焼き上げれば完成です。
言うのは簡単ですが、実際に作ると時間もかかりますし、大変でしたわ。
それでも、食べた時の感動は何物にも変えがたく、作り甲斐のある料理だと感じました。
デザートはフレジエとプリンを持参しました。
フレジエはフランスの伝統的なイチゴのケーキで、イチゴの断面が美しく見える様にケーキの側面に配置されています。
こちらは偶然インターネットで見つけて、画像を見て一目惚れし、レシピを検索して挑戦しましたの。
円形で底が無いタイプの型を使用しての組み立ては初めてで難しかったですが、楽しくできましたわ。
焼き上げたジェノワーズ生地を半分にスライスし、その内の1枚を型の下に敷き、高さを揃えたイチゴを縦半分にカット、断面が外側になるように型の側面に沿わせて一周隙間なく並べます。
卵黄、グラニュー糖、薄力粉、牛乳、バニラペースト、無塩バターを合わせて作ったクレームムースリーヌというクリームを先程並べたイチゴの隙間を埋めるように絞り入れ、底面にも薄く絞り入れます。
そこへ、高さを揃えた状態のイチゴを、ヘタを切り落とした断面を下にしてクリームの上に敷き詰めます。
そうしましたら、またイチゴの隙間を埋めるようにクリームを絞り入れ、イチゴの頭が隠れましたらヘラで平らにならします。
もう1枚のスポンジを上に乗せ、シロップを打ち、残りのクリームを薄く塗って平らにならし、ラップをかけ冷やします。
ラップを外し、冷やしたベリージュレを流し入れ、さらに冷やして型から取り出し、上にカットしたイチゴを飾って完成です。
こちらも大変でしたが、出来上がった時は嬉しくてひとり感動いたしましたわ。
もちろん、美味しく頂きました。
最後のプリンは、縦8cm、直径5cm程の牛乳瓶に似ている可愛らしい形の容器がお手頃なお値段でネットショッピングに載っていたため、勢いで購入し、勢いで作った物です。
それでも我ながら美味しく出来たと思います。
たくさん作りましたし、気に入って頂ければお土産にお持ち帰りいただく事もも可能ですわ。
わたくしが持参した物の他にも、皆んなが持っていらした物や、ダンデライオン会頭のご厚意により、今回もカレーとクレープが用意されております。
「皆んな、お飲み物は持ちまして?
乾杯のご挨拶をさせていただきますわ。
先日の試験、お疲れ様でした。
来年も全員揃って過ごせる事を嬉しく思いますわ。
今日はたくさん美味しい物を頂いて、楽しい時間を過ごしましょう!
乾杯!!」
「「「「「かんぱーーーい!!」」」」」
いつものように、ベロニカの挨拶でパーティーが始まりました。
「クロエ。」
「ウィリアム。ごきげんよう。」
グラスのアイスティーをひと口頂き、ビュッフェ台に向かおうとした所で後ろから呼ばれました。
振り返るとウィリアムが笑顔で立っていましたので、わたくしも笑顔でご挨拶します。
「今日は何を持ってきてくれたんだ?」
「今日はお肉とジャガイモのオーブン料理とイチゴのケーキ、プリンというお菓子を持参しましたわ。」
「そうか。
ちょっと取ってくるから席で待っていてくれないか?
クロエと一緒に食べたい。」
「えぇ。構いませんわ。
ではわたくしの分も取ってきてくださる?
ウィリアムのグラスもご一緒に席にお持ちしますわね。」
「ああ、もちろんだ。」
わたくしにグラスを渡し、そう言い残してウィリアムはビュッフェ台へと向かいました。
わたくしはお言葉に甘えて席に着きます。
何かお話でもあるのでしょうか?
わたくしも相談したい事がございますのでちょうど良かったですわ。
「悪い。待たせた。」
ウィリアムが両手いっぱいに料理を持って戻って来ました。
……持って来た料理が全てわたくしが持参した物でしたが。
「いいえ。
そこまでお待ちしていませんわ。」
ウィリアムがテーブルに料理を置き、わたくしの隣の席に座りました。
「頂きます。」
「えぇ。召し上がれ。」
パクッ…
「美味い!!」
「お口に合ったようで嬉しいですわ。」
そして席に着いて早々にアッシパルマンティエを召し上がりました。
相変わらず召し上がるのが早くて、大量にあったアッシパルマンティエはあっという間にウィリアムのお腹の中に収められてしまいました。
お口に合ったようで何よりですわ……
フレジエは2ホールも持っていらしたのね…
わたくしは1切れだけ頂きます。
「これも美味い。
イチゴの酸味と適度な甘みのバランスが良くて好みだ。」
「それはようございました。」
こんなに美味しく召し上がっていただけると、頑張って作った甲斐がありますわ。
「ウィリアム。
そういえば、わたくしに何かお話があったのではなくて?」
一緒に食べたいと仰ったので、お話があったのかと思ったことを思い出しましたわ。
わたくしのそのひと言に、ウィリアムは食べ終えたお皿にフォークを置き、(なお、2ホールあったフレジエはもう跡形もございません。)こちらに真剣な顔を向けられました。
「クロエは、王太子との婚約破棄を望んでいるだろう?」
「え?えぇ。もちろんですわ。」
それは以前お話しした事ですので、素直に頷きます。
「……他に好きな奴とかいるのか?」
!!!!!!!!?
「えっ!?」
突然の内容に、驚きのあまり大きな声を出してしまいました。
皆んながこちらをーーーーーーー見てない?
どういう事ですの?
「驚かせてすまない。
さっき俺が結界と防音を展開させた。」
いつの間に…全く気づきませんでしたわ。
「ウィリアムも空間魔法を使えますのね…
知りませんでしたわ。
そういえば、勉強合宿の際、わたくしの結界の中に入っていらした事がありましたが…」
「あぁ、あれは単純な話だ。
クロエが結界を展開する前に、既にあそこにいただけだからな。」
えぇー!?そんな単純なオチですの!?
というか…あの時は全く気配を感じませんでしたわ…
「そうでしたのね…全く気づきませんでしたわ…」
なんだか…どっと疲れが……
「意図的に気配を消していたんだ。
俺は気づかれなくて助かったよ。」
そんなわたくしに、ウィリアムはまるでイタズラが成功した子供のように笑って答えられましたわ。
「なあ、クロエ。」
「?」
そして突然真剣な表情になってわたくしの名前を呼んだので、わたくしも背筋を伸ばしてウィリアムのお顔を見返しました。
「もし、クロエが少しでも俺の事を良いと思ってくれているなら、俺との事を視野に入れて欲しい。」
「ウィリアム…それって…」
「俺は、クロエが好きだ。
叶うなら、これからの人生を共に歩みたいと思っている。」
……………ポロッ
「ごめん…困らせたい訳では無いんだ!」
「いいえ…違うの……
どうしよう…嬉しい…
わたくしも、ウィリアムの事が好きです…」
どうしましょう…
嬉しくて、涙が出て参りました…
「クロエ…」
気づいた時には既にウィリアムの腕の中でした。
大きくて、温かな腕に優しく包まれて、ひどく安心している自分に驚きながらも、この腕の中がわたくしの居場所となれるよう、あと1年頑張ろうと強く思いました。




