第46話
ごきげんよう。
クロエ・カサブランカでございます。
本日は光の月29日。
学年末試験の結果発表の日ですわ。
わたくしは今、クラスの教室におりますの。
学年末試験は、2日目以降の日程も無事に終え、18日のクラスミーティングでは、皆んなで試験の報告会を行いました。
皆んな首尾は上々のようで、会は終始和やかな雰囲気でしたわ。
勉強合宿が功を奏したと喜んでくださった方もいて、わたくしも嬉しく思いました。
閑話休題。
結果の通知方法は、クラスの教室にて担任の教師から結果が記載されている用紙を配布されますので、それで確認いたします。
「はい、それでは皆さんお待ちかねの試験結果をお渡しします。
順番に呼びますので、こちらまで取りに来てください。
まずはラナンキュラスさんからどうぞ。」
皆様、ご紹介が遅れまして申し訳ございません。
わたくし達Cクラスの担任教師は、ケイト・ヒペリカム先生でございます。
わたくし達は親しみを込めてケイト先生と呼んでおりますの。
担当科目は古代魔法学で、教師になられて3年目の先生です。
ケイト先生にとって、わたくし達が初めて受け持つクラスとの事で、最初はとても緊張なさっておいででしたが、Cクラスの皆んなが明るく話しやすい方ばかりでしたので、早々に緊張も解け、Cクラスの皆んなとも打ち解けられました。
明るく話しやすい雰囲気の先生で、進路に関する相談も親身になって受けてくださる優しい先生ですわ。
普段は薄茶色のストレートヘアをひとつ結びでまとめていらっしゃる事が多いです。
緑色の瞳と、ぱっちりとした目、黒縁の眼鏡をかけていらっしゃるのが特徴です。
「良かったぁ!全部合格点超えてた!」
「俺も!」
「わたくしもですわ!」
「僕も!」
「危ねぇ!数学ギリギリ合格点超えだ!」
「やったじゃないか!勉強した甲斐があったな!」
既に結果を受け取った皆んなは口々に喜んでいらっしゃいます。
「次、カサブランカさん。」
「はい。」
そんな皆んなを微笑ましく見ていましたら、わたくしの番がやってまいりました。
先生に呼ばれて教壇へ向かいます。
「はいどうぞ。試験結果です。」
「ありがとうございます。」
先生が温かい笑顔で試験結果を渡してくださいましたので、わたくしも笑顔で受け取り、席に戻りました。
結果を確認すると、全科目1位でした。
無事に進級が決まり、安心いたしましたわ。
周りを見ると、皆んなも無事に進級が決まった様で、クラス中に安堵の空気が漂っています。
これで来年も皆んなと過ごせますのね。
とても嬉しいですわ。
「はーい皆さん!静粛に。
一度着席してください。」
嬉しさに思わず席を立って喜び合っていたわたくし達に、先生は着席を促し、全員が着席した事を確認なさって、続きを仰いました。
「皆さん、進級おめでとうございます。
来年度も全員揃って3学年に進級できる事を、嬉しく、そして心から皆さんを誇りに思います。
本当によく頑張りましたね!
3学年でも学生生活を存分に楽しんで、頑張っていきましょう!」
パチパチパチパチ
先生の心が込められたお言葉を聞き、わたくし達は拍手で応えました。
わたくし達は全員進級が決まりましたので、明日から春季休暇に入ります。
陽の月は春季休暇の月でございますので、次の登校はおよそひと月後の花の月1日です。
陽の月18日はクラスミーティングのため、ダンデライオン邸にお伺いしますが、それ以外はマイハウスでゆっくりと過ごす予定ですわ。
そうそう、陽の月のミーティングは進級のお祝いパーティーをする予定ですので、皆んなで食事や飲み物を持ち寄るというお話でしたわ。
わたくしも何か作って持参しませんと。
「それにしても…例年はSクラスが優秀だけれど、今年はCクラスが優秀なのよね…」
ケイト先生の呟いた内容に、それぞれ喜びを分かち合って盛り上がっていた教室が、打って変わって静寂に包まれました。
「先生、それは一体どう言う意味ですの?」
ベロニカが代表して皆んなの意見を仰ってくださいましたわ。
「あー……ちょっとここだけの話にしといてね?」
先生が気まずそうに右頬を掻きながら仰いました。
内密にされたいお話のようですから、念のため教室に防音魔法を展開しておきましょう。
「皆さん承知の通り、クラス決めは入学試験の成績順で割り振られ、卒業まで変わる事はありません。
学年末試験のシステムも承知の通りです。
今までは、再試験の人数はCクラスが一番多く、Sクラスはいませんでしたが…
今回の試験ではCクラスは全員進級が決定していて、Sクラスは王太子殿下を含め10名程が1科目以上再試験を受ける事になった様です。
成績もそうなんですが、マグオート先生が仰るには最近のSクラスは雰囲気が異様らしくて…」
「異様…とは?」
思わず気になってしまい、口を挟んでしまいましたわ。
そんなわたくしに、先生は少し困った様な表情で仰いました。
「カサブランカさん、アンスリウムさんを知っていますか?」
「えぇ。先日、地理の試験を受けた際、試験後にペチュニア先生をデートに誘っていらっしゃいましたわ。
あっさりお断りされていましたけれど。」
「えっ?ペチュニア先生を?
彼女は王太子殿下と良くない関係だとばかり…」
わたくしの返事が意外だったのか、ケイト先生は驚いた表情で仰いました。
ベロニカも皆んなも驚いていらっしゃいます。
「様子を見る限りそれが初めてではない様で、彼の方も今日こそは…と仰っていましたし、断られた後も諦めないと言い残して去って行かれましたわ。」
「………そうなんですね。
聞いた話によると、アンスリウムさんは魅了スキルを持っているそうですが…
ペチュニア先生は大丈夫なんでしょうか…」
わたくしの報告を受けて、ケイト先生が心配そうに仰います。
ケイト先生はマグオート先生とペチュニア先生に学生時代からお世話になっているとの事で、お2人と仲がよろしいのです。
「ケイト先生、ペチュニア先生でしたら大丈夫ですわ。
先生が右耳に付けていらっしゃるピアスは魅了耐性が付与された物ですもの。」
「えっ?
何故カサブランカさんがそれを知っているんですか?」
驚きに目を丸くしながら先生が尋ねられました。
「錬金術を履修しておりますので、講義で習いましたの。
彼の方が先生に近づいた時にピアスが淡く光り、離れた際に変色した後ヒビが入って壊れかけていました。
その後、ペチュニア先生とも彼の方に関して少しお話をし、ピアスを修理させて頂きましたの。
少なくともあと2年は効果が薄れる事はありませんわ。」
本当はピアスは修理だけ行い、ペチュニア先生ご自身に魅了耐性を付与いたしましたのでピアスの有無関係なくずっと魅了耐性が付いているのですが、それを申しますとケイト先生にもわたくしの事を話さなければならなくなります。
ペチュニア先生と仲良くなさっているケイト先生にお話しするのはリスクが高いので、とりあえず2年とお伝えしました。
「そうなんですね…それは良かった…」
ケイト先生はわたくしの言葉を聞いて安堵の表情を浮かべられました。
「それで先生、Sクラスが異様というのは一体どういう事ですの?」
ですが、わたくしの質問に本題を思い出し、表情を引き締めてお答えくださいました。
ケイト先生がマグオート先生に聞いた話なよりますと、Sクラスでは風の月の月末頃から男子生徒がひとり、またひとりとヒロインに侍り出し、王太子を始めとした何人かの生徒は、講義を無断欠席する事が増え、ヒロインと関係を持ったもしくは持っている疑いがある生徒も少なくないそうてす。
………彼の方は一体何をなさっていますの?
いいえ。
今考えるべき事はそこではありませんでした。
なぜ、いきなり魅了の強度が上がったのでしょう…
少なくとも創立祭でお見かけした限りでは、Sクラスの生徒はおろか、常に行動を共にしている王太子や騎士団長の息子ですら魅了にかかってはいませんでしたわ。
「もしかしたら、今年はSクラスから留年…もしくは退学者が出てしまうかもしれませんね…」
ケイト先生が残念そうに仰いました。
………なぜ急にこの様な事態になったのかは分かりませんが、関係のない方がヒロインのせいで進級が出来なくなるのは頂けませんわ。
これは確認する必要がありますわね……




