第44話
ごきげんよう。
クロエ・カサブランカでございます。
本日は光の月7日。
本日から11日までの5日間、2学年の学年末試験が行われます。
1学年では試験期間3日間の一斉試験でございましたが、2学年からは生徒自身が履修する科目を選択できるため、1学年時とは異なり試験日自由選択制で、試験期間は5日間となります。
試験は科目毎に決められた会場で午前と午後の1日2回、5日間行われますので、試験の日程は事前に自分で申請し、それに沿って受験いたしますの。
2学年以降も1学年時と同様に一斉試験となれば、履修している科目の試験日程が重なってしまった場合、受験出来ず再試験を受けなければならないという事態が発生してしまいますわ。
それはフェアではございませんでしょう?
そういった事態を防ぐために、2学年以降の試験はこのようなシステムが設けられたようです。
なお、試験期間中、生徒同士で受験した試験内容が漏洩される事が無いように、試験前に誓約魔法を交わし、口外できないよう対策をされますので、必ずしも後から受験する方が有利とは限りませんけれど。
閑話休題。
わたくしは本日、魔法薬学と地理を受験します。
どちらも筆記試験ですが、魔法薬学は魔法薬学室で、地理は第3講義室で試験が行われますわ。
特に魔法薬学室は、研究棟の屋上に位置しておりまして、薬草を育てる温室と、ポーションを作成するための講義室が隣接されていて、わたくしのお気に入りの場所のひとつでもあります。
特に温室は、全面ガラス張りで出来ており、晴れた日は青い空と柔らかな陽光が差し込み、空中庭園さながらの空間でございまして、比較的手に入りやすい薬草から希少価値の高い珍しい薬草まで、様々な種類の薬草が、それぞれ適した状態で植えられていて壮観ですの。
失礼。話が逸れてしまいましたわ。
本日は、午前に魔法薬学の試験を受け、昼食を挟み、午後に地理の試験を受けましたら帰宅いたします。
さぁ、魔法薬学室に到着いたしましたわ。
まだ試験開始まで時間があるからか、扉が開いていて、わたくしと同じ時間に受験なさる方が中へ入られました。
わたくしもその方に続きます。
中に入ると、既に何名かが着席なさっていて、皆様テキストを一生懸命読み返していらっしゃいますわ。
教壇にはサンダルウッド先生が笑顔で立っていらっしゃいます。
「先生、ごきげんよう。」
「あぁ。カサブランカ君ごきげんよう。」
わたくしが先生にご挨拶をしましたら、にこやかにご挨拶を返してくださいました。
サンダルウッド先生の穏やかなお人柄は、とても落ち着きますわ。
わたくしはそのまま指定された席へと移動し、着席しました。
その後、3名程いらっしゃって、試験開始時刻を知らせるベルが鳴りました。
先生はドアを施錠し、教壇に戻られてから、試験の注意事項のご説明と、誓約魔法を行使なさいました。
ちなみに、この誓約魔法は試験期間中のみ有効ですので、試験期間を過ぎますと自動で解除されますの。
よって、重ね掛けをしても問題はございません。
わたくしの誓約魔法も身体に負担のかかるものではございませんし、他の誓約魔法が後にかけられても解除される事はございませんわ。
「では、答案用紙を配布するかの。[配布]」
バサバサッ…バサッ!
先生の詠唱と共に、教卓の上に乗っていた答案用紙が宙を舞い、わたくし達生徒の机の上に伏せられた状態で置かれました。
「では、始めるのじゃ。」
ペラッ!!
先生の掛け声で、皆様一斉に答案用紙を捲り、解き始めました。
わたくしも答案用紙を捲り、内容を確認します。
この1年で習った内容が全て出題されていますわね。
薬草の名前、効能、特徴、生育環境、そして禁忌。
ポーションを作成する際の注意事項。
ポーションの名前、効能、材料、必要な道具、作り方、ランク毎の特徴。
…確かに、この魔法薬学の講義は最初の半年間はずっと温室の薬草の育て方の講義と実践で、ポーションについては創立祭が終了した後に講義が始まりましたのよね…
しかも実践には至っておらず、2学年では座学のみの講義だったためか、ほとんどの方は講義中眠ってしまわれたり、つまらなさそうな態度を取っていらっしゃいましたわ…
わたくしは元々前世でも植物の世話は大好きでしたし、今世も楽しく取り組めておりますが。
本来はポーションの授業に入った後も温室の薬草達のお世話は生徒達で分担する事になっていますが、どなたもなさらないため、現在はわたくしが時間が空いたタイミングに温室を訪れ、水やりや間引き等、お世話をしております。
薬草のお世話をするにあたって、テキストの内容は全て記憶し、お世話という実践にて間近で観察しておりましたので、わたくしにとってこの試験はサービス問題ですわ。
皆様は苦戦されているようですけれど。
薬草に関する問題を全て解き終えましたので、ポーションに関する問題に移ります。
ポーションの種類は多岐に渡りますが、王立学園では基本的なポーションのみ学習します。
わたくしが前世で読んでいた小説にもポーションは度々登場しましたが、2学年でのテキストに掲載されているポーションは次の5種類です。
体力回復薬
魔力回復薬
ダメージ回復薬
毒回復薬
精神回復薬
それぞれの回復薬の特徴につきまして簡単にご説明いたします。
【体力回復薬】
青色の液体状の回復薬。
消耗した体力を回復する。
ごく僅かしか回復しない下級から、ステータスの上限値まで一気に回復してくれる特級まで4段階ある。
材料は体力草、元気出草、聖水、魔石、魔力。
◯ランクの見分け方
下級 かろうじて薄っすら水色
中級 水色
上級 青色
特級 サファイアの様な青に、金色のラメが入っている
【魔力回復薬】
紫色の液体状の回復薬。
消耗した魔力を回復する。
ごく僅かしか回復しない下級から、ステータスの上限値まで一気に回復してくれる特級まで4段階ある。
材料は魔力草、炎の花、水の花、風の花、土の花、聖水、魔石、魔力。
◯ランクの見分け方
下級 かろうじて薄っすら紫色
中級 薄紫色
上級 紫色
特級 アメジストの様な紫に、金色のラメが入っている
【傷回復薬】
緑色の液体状の回復薬。
傷口の回復に特化したポーション。
かすり傷程度しか治せない下級から、欠損した身体の一部を再生できる特級まで4段階ある。
材料は修復草、元気出草、回復草、聖水、魔石、魔力。
◯ランクの見分け方
下級 かろうじて薄っすら緑色
中級 薄緑色
上級 緑色
特級 エメラルドの様な緑に、金色のラメが入っている
【毒回復薬】
乳白色の少しとろみのある液体状の回復薬。
毒によるダメージを回復する。
金色のラメが入っている物は毒によるダメージを完全に回復する上、耐性付与の効果もある。
材料は解毒草、毒抜きのこ、スライムのゼリー、聖水、魔石、魔力。
【精神回復薬】
ピンク色の液体状の回復薬。
幻覚、魅了状態など、主に精神系の状態異常を解除するポーション。
金色のラメが入っている物は状態異常を完全に解除する上に、耐性付与効果もある。
材料はマンドラゴラ、爽快草、聖水、魔石、魔力。
「皆、あと30分じゃ。」
ポーションの問題を解き終わりましたら、丁度先生から残り時間のアナウンスが入りましたわ。
あとは禁忌の問題を解けば終わりですわね。
「あと、15分じゃ。」
そして、全ての問題を解き終えたタイミングで、再度先生のアナウンスが入りました。
残りの時間は見直しをしましょう。
「あと5分じゃ。
ラストスパートじゃぞ。」
丁度見直しを終えた時、先生の最後のアナウンスが入りました。
周りを見る事は出来ませんが、皆様の筆記の音が一層激しくなりましたわ。
残り時間が少なくなり、焦っていらっしゃるのかもしれません。
「ほい。そこまで。終了じゃ。
答案用紙を裏返しにしてペンを机の上に置くのじゃ。
両手は膝の上にのぉ。」
先生は、全員が指示に従った事を確認し、答案用紙を回収なさいます。
「答案用紙を回収するぞい。[回収]」
バサッ…バサバサバサッ…バサッ…!
先生の詠唱と共に、わたくし達の机の上にありました答案用紙は教卓へと向かって飛んでいきました。
「これで薬草学試験は終了じゃな。
皆、ご苦労じゃったのう。
引き続き頑張るのじゃぞ。」
そう仰って先生はドアを開錠し、準備室へと入っていかれました。
まずは1科目終了しましたわ。
午後からの試験に備え、お昼休憩です。
クラスの教室へ移動しましょう。
わたくしは魔法薬学室から退室し、クラスの教室へと向かいました。




