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猫を助けたかっただけなのに  作者: めい


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第42話



翌日。

起床し、身支度を整えた後、食堂で皆様とご一緒に朝食をいただき、食後ティールームでくつろいで団欒をしていましたら、伯爵がわたくしをまっすぐ見据え、お話を切り出されました。


「クロエさん。

昨日のタルトといい、先日のカレーパンといい、公爵家の料理人ではなく貴女自身が作った様だが、王太子妃になれば今まで通りに料理をする事は難しくなるのではないかな?」



ーーーーー来ましたわね。

ベロニカにカレーパンをお渡しした時は、まだ誓約魔法を交わす前でしたし、今回のタルトはわたくしの落ち度ですわ。

この時期は国中のお店が閉まっていますし、タルトは少なくともこの国には存在しておりませんもの。

安易な考えでその様な物を手土産として持参し、自分で作った旨を言ってしまったのはわたくしです。

言い逃れは出来ませんわ。

こうなる事は予想しておりましたし、おそらく伯爵も話すタイミングを見計らっていらっしゃったのではないでしょうか。


「…伯爵。

お話をする前に、人払いをお願い出来ますか?」


わたくしは笑顔を保ったまま、伯爵にお願いをします。

それを受け、伯爵は壁際に控えていた執事や侍女に合図をし、退出させてくださいました。



「これで良いかな?」


「えぇ。ありがとうございます。

わたくしが今からお話しする内容は他言無用でお願いしたいのですが、お約束頂けますか?」


わたくしが伯爵、夫人、ヴィクター様、マシュー様を見ながら申し上げますと、皆様はそれぞれ顔を見合わせ、頷かれました。

伯爵がそのお答えを仰います。


「ああ、もちろん。約束しよう。」


「では、誓約魔法を使用させていただきますわ。

構いませんこと?」


わたくしのその問いに、伯爵は一瞬、驚いた様な表情を見せましたが、すぐに笑顔に戻り、肯首なさいました。


「そうでなければ話してはくれないのだろう?

何かあったとしても、誓約魔法を盾に追求を躱すから心配しないでくれ。」


そのお言葉にわたくしは思わず苦笑いをしてしまいましたわ。

ベロニカの予想通りの反応でしたから。

家族仲がよろしいだけあって、日頃からきちんとコミュニケーションをとっていらっしゃるから、こういう時の対応も予測できるのでしょうね。



「それでは、失礼いたします。

誓約(プレッジ)]」


ふわぁっ…


Cクラスの皆んなと誓約魔法を交わした時と同様、わたくしの魔力が伯爵、夫人、ヴィクター様、マシュー様を包んでいきます。


「[これより、我、クロエ・カサブランカが話す内容を、他人に話す事、及び他人に聞かれる事を決して行わないと約束せよ。]」


そして、皆様を包んでいる魔力の光は、皆様の魔力をほんの少しだけ含んで左手の小指に集まり、リング状になって小指の根元で光を放ちます。


「[ゆーびきーりげんまんうーそつーいたらはーりせんぼんのーます!ゆーびきった!]」


パァァァァァァッ!!


「うっ…」


光が一層強くなり、部屋全体を包みます。

あまりの眩しさに、ベロニカが目を瞑り、顔の前に両腕を交差させていますわ。

誓約を交わしている皆様は目を閉じていらっしゃいますし、わたくしも影響は全くないのですが、それ以外の同席者にとって、この光はかなり眩しいものなのかもしれません。


スゥッ…


「皆様、もう目を開けていただいて大丈夫です。

誓約魔法は無事に完了いたしましたわ。」


わたくしのその言葉に、皆様は目を開け、ベロニカ以外の4名は不思議そうに左手の小指を眺めていらっしゃいます。


無事に誓約が交わされ、皆様の左手の小指にあるリング状の光は、無関係の人間が見ても何も見えません。

余程魔力が高い人物が鑑定するか、専用のアーティファクトを使用しない限り、他の方には誓約を交わした事は分かりませんわ。

ですが、誓約魔法をかけた本人(わたくし)や、同じ内容で誓約を交わした方々には見える仕様となっております。



「…やはり、ベロニカは既に誓約魔法を交わしていたんだね。」


伯爵が、ベロニカの左手の小指を見て、優しく仰いました。

ベロニカは申し訳なさそうに眉尻を下げながら、伯爵に仰います。


「お父様、勝手な真似をして申し訳ございません。

ですがわたくしは、クロエの友達として、クロエの力になりたいと心から思いましたの。

わたくしの意思で、クロエが提案なさった誓約魔法を交わす事を決めましたわ。

それでクロエの気持ちが楽になるならと。


クロエが今からお話しする内容は、わたくしをはじめ、わたくし達のクラスメイト全員が存じ上げております。

もちろん、全員誓約魔法を交わした上でお話をお伺いしました。

わたくしはもちろん、皆んながクロエを守るために、このお話は誰にも言う事はございませんわ。」


途中からベロニカの顔つきが真剣になった事で、ベロニカが生半可な気持ちで誓約魔法を交わしたわけではないと察した皆様は、真剣な表情でわたくしに向き直られました。



「皆様、本題に入る前に非礼をお詫びしなければなりません。

いくら人払いをしていただいたとはいえ、用心に越した事はないと思いまして、先程皆様が退室なさったと同時に、この部屋には結界魔法と防音魔法を展開いたしました。

皆様に断りもなく使用しました事、お許しくださいませ。」


わたくしはまず、この部屋に結界魔法と防音魔法を展開した旨をお伝えし、黙って行使した旨をお詫びいたしました。


「いや、それは当然だろう。

断ってくれてありがたいよ。」


わたくしのお詫びにヴィクター様が納得した様な表情でお応えくださいました。

その様に仰っていただけて、安心しましたわ。

わたくしは皆様のお顔を見ながら、本題を切り出します。



「では、本題に入りますわ。

わたくしはーーーーーーー」




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