第37話
ごきげんよう。
クロエ・カサブランカでございます。
本日は雪の月15日。
Cクラスの勉強合宿3日目ですわ。
わたくしは今、昨日数学を教えた皆んなに図形問題の解き方を教えております。
昨日は、ティータイム後、皆んなは一生懸命に九九の表とにらめっこして暗記に取り組み、何と、夕食後には全員が九九を覚えてしまわれましたわ!
皆んなの覚えの早さに驚き、その旨をお伝えしましたら、ちょっと気まずそうに視線を逸らされてしまいました。
何でも、わたくしが調理台へ向かった後、皆んなで九九の表を覚えようと頑張って取り組んでいらした様ですが、途中から調理台の方が気になってしまい、結界の中から聞こえる微かな音を聞き逃さないよう耳をそばだてていたため、集中力がそちらに持っていかれてしまったとのことですわ。
……それは、わたくしのせいでしょうか?
違いますわよね?ね?
……次からは防音も追加する事にいたしましょう。
夕食後には掛け算と割り算の筆算の仕方をお伝えし、その後は皆んな筆算の練習をなさっていましたわ。
ちなみに、昨日の夕食はダンデライオン家の料理長さんがカレーライスを作ってくださったので、皆んなで美味しく頂きました。
ウィリアムだけは、なぜか首を傾げながら召し上がっていましたけれど。
閑話休題。
「図形問題を解くためには、公式…つまり求め方を覚えておくと応用が効きますので便利ですわ。
まず、中間試験に出たと仰った、この四角形の面積を求める問題の解き方ですが、四角形の面積を求める公式は、縦掛ける横ですわ。」
「「「「「「「ほうほう。」」」」」」」
メモメモ。
皆んな揃ってご自分のノートにメモを取られます。
「この場合、縦は6cm、横が10cmですので、6掛ける10で、答えは60cm²です。」
メモメモ。
ご説明が遅くなりましたが、実はこの世界、紙は豊富にございますので、本やノート等は現代と同じように使用されておりますの。
筆記用具はなぜかガラスペンで、インク壺に付けて書きます。
………中世ヨーロッパ風とは一体。
わたくしはてっきり羊皮紙に羽ペンだと思っておりましたわ…
そして重さや長さ等、単位に関しましては現代日本と同じでした…
もう何も言うまい……
これはあくまで中世ヨーロッパ『風』ファンタジーの乙女ゲームであって、決して時代背景は同じではありません。
ここはファンタジーでご都合主義万歳な異世界…
ここはファンタジーでご都合主義万歳な異世界…
大事な事ですので2回繰り返します。
………失礼いたしました。気を取り直しまして。
「次はこちら、三角形の面積を求める問題です。
三角形の面積を求める公式は、底辺掛ける高さ割る2です。」
メモメモ。
「はい!先生!」
ジェームズが元気いっぱいに手を挙げます。
目線はわたくしを向いていらっしゃるので、わたくしに仰ったのでしょうか…
「わたくしは先生ではございませんが……
はい、ジェームズ。どうぞ。」
「あ、ごめんごめん。
勢い余ってつい…
えーっと、今の説明だと、底辺と高さは問題によって変わるって事だろうけれど、この割る2っていうのは変わらないの?
変わらないんだったら何で?」
わたくしの指摘に人懐っこい笑顔で謝った後、ジェームズは本題に入られました。
質問内容は至極最もなものでしたので、わたくしは頷き、一度その考えを受け止めます。
「まぁ、そう考えますわよね…
こちらに関しましては、口頭で説明するよりも実際に見ていただいた方が分かりやすいかと思いますので、皆んな調理台に移動しましょうか。」
「「「「「「「はーい。」」」」」」」
皆んなで調理台に移動してきました。
わたくしは手を洗い、マイバッグ(の中に仕込んだ亜空間収納)から食パンを1枚取り出し、まな板の上に置きます。
あ、ちなみに毎回料理する前は必ず手を洗っておりますわよ?
念の為、付け加えておきます。
そして、食パンの耳を落とし、四角形に切ります。
「皆んな、このパンをご覧くださいまし。
四角形のパンですわ。」
「確かに、四角形ですわね。」
エヴァが相槌を打ってくださいました。
「そして、これをこう…切りますと、三角形になりますわ。」
四角形の食パンを左上から右下に向かって斜めに切り、三角形になった食パンを皆んなに確認してもらいます。
「「「「「「「うんうん。確かに。」」」」」」」
「ではジェームズ、この三角形2枚を、辺の長さを合わせて重ねてみてくださいまし。」
「あぁ。えーっと…こう…かな?…えっ!?」
「すごーーーーい!ピッタリおんなじだぁ!」
ジェームズが合わせた食パンはピッタリと一致し、クレアが感嘆し、他の皆んなはそれぞれ驚いていらっしゃいますわ。
そんな皆んなに、わたくしは説明を続けます。
「そうです。
三角形は四角形を半分に切った形でございますわ。
先程説明したように、四角形の面積の求め方は縦掛ける横です。
よって、その半分となる三角形の面積の求め方は底辺掛ける高さ割る2、となります。」
「「「「「「「なるほど…メモメモ。」」」」」」」
百聞は一見にしかずという言葉がぴったりの状況ですわ。
皆んなご納得いただけたようで何よりです。
分かりやすいように四角形で説明しましたが、平行四辺形を真っ二つにしたという説明もインターネットに載っていましたわね。
平行四辺形の公式は底辺掛ける高さですので、厳密に言えばこちらを2つに割ると言う事なのでしょうが…
図形といえば三角形と四角形しか見た事が無いのに、いきなり平行四辺形を出されても理解しづらいのでは…と思いまして、四角形を使用しての説明をしてみましたの。
「ねぇクロエ。」
「ん?どうなさいましたの?クレア。」
皆んなに納得していただけた事にホッとしておりましたら、クレアが声をかけてきました。
わたくしが応じますと、クレアはまな板の上の食パンを指しながらこう仰いました。
「このパン、どうするの?」
「どうするのと言われましても…頂きますわよ?」
「どうやって?」
何と言う事でしょう…
クレアの顔に『何か作って』と書いてありますわ…
わたくしは別に構いませんけれど。
「そうですわねぇ…
では何かつまめるものでも作りましょうか。」
「「「「「「「お願いします!!!」」」」」」」
相変わらず息ぴったりですわね…
まぁ、皆んな仲が良くて何よりですわ。
しかし、そのまま何もなさらないのはもったいないのではなくて?
昨日と先程お伝えした事は、わたくしが調理している間にきちんと復習しておく事をお勧めしておきましょう。
「では、皆んなはその間に昨日と先程教えた事を復習しておいてくださいまし。
きちんと復習しておけば身につきますので、これからの試験勉強はかなり楽になるかと思いますわ。」
「「「「「「「はーい!!!」」」」」」」
「よしっ!やろうぜ!」
「先程の図形の公式を覚えなくては…」
「割り算の筆算の練習しないとなぁ…」
「私も割り算難しかった…図形の公式覚えたらまた筆算の練習しなきゃ。」
皆んなが楽しそうに会話をしながら元いた勉強スペースに戻っていきます。
うん。皆んな素直でよろしい。
教えた事を素直に実践してくださるから、教え甲斐がありますわ。
では、わたくしも調理に取り掛かりましょう。




