第31話
クロエ視点に戻ります。
わたくしの事をCクラスの皆んなに話し終えましたわ。
全てお話した訳ではございませんし、多少言い方を変えて話した部分もございますが、わたくしの境遇や夢、考えは概ね皆んなにお伝えしました。
あ、前世の事はもちろん言っていませんわよ?
この事に関しましては、誰にも言うつもりはございませんもの。
固有スキルに関しましては、この世界では他人に明かさないのが一般的です。
特にわたくしの固有スキルは、この世界では存在し得ないものですので、家族など近しい間柄でなければ明かすことはありません。
あぁ、王家や公爵家の面々には当然明かしてはいませんわ。
偽造したステータスの情報をお伝えしていますので、わたくしが初級の水魔法を短時間しか使用できないと認識していらっしゃるようです。
お話しするにあたって、可能ならば誓約魔法を使いたくはなかったのですが…わたくしの我儘で使わせて頂きました。
誓約魔法を使用すれば、わたくしが本懐を遂げる可能性も高くなりますし、わたくしがこの国を出た後、王家や公爵家の方々や攻略対象者達に万が一皆んなが責められてしまった場合、誓約魔法をかけたわたくしの責任になりますから、皆んなの身を守ると言う点では良かったのではないかしら。
静かだと思って周りを見渡しましたら、皆んな黙ってしまわれていました。
それもそうですわよね。
このようなお話は、本来ならばもっと信頼関係を築いてからするべきでしょうから。
お友達になったばかりのわたくしから、突然このようなお話を聞かされてしまっては、重いと感じられたのではないかしら…
わたくしの境遇は、公爵家のゴシップとして格好のネタになる筈ですし、上手く使えばカサブランカ公爵家を蹴落とす事だって可能ではないでしょうか。
この中にその様な事をする方はいらっしゃいませんが、わたくしとしてはカサブランカ公爵家がどうなろうとどうでも良い事ですので、そこは良いのです。
わたくしにとって、カサブランカ公爵家の皆様がこれからも変わらずに生きようが、蹴落とされて落ちぶれようが、興味はございません。
冷たいと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、わたくしにとって、カサブランカ公爵家はそういう存在となりました。
わたくしは、わたくしの事を大切に思い接してくださる方を大切にしたいと思っておりますし、わたくしの事を粗末に思い接してくる方には興味を持てませんの。
恐らくこの考えは、前世の私のクロエを幸せにしたいという思いと、今世のわたくしの幸せになりたいという思いが重なって生まれたものだとわたくしは思っておりますわ。
その様な事を考えていましたら、ベロニカが涙を堪えて美しく微笑みながら話出しました。
「クロエ。話してくれて、ありがとう。
辛い思いや嫌な思いをたくさんなさったのね…
それでも前を向いて頑張っている貴女をわたくしは尊敬するわ。
わたくしが貴女の立場だったら、きっと同じ事は出来ないでしょうし、貴女のように前を向き続ける事だって出来ないと思うわ。
わたくしは、誓約魔法関係なく、今聞いた事を誰にも言わないわ。絶対に。
それが、わたくしが貴女に出来る何よりの協力だと思いますもの。」
「……っ!………ありがとう…っ!」
ベロニカの言葉が嬉しくて、止まっていた涙がまた溢れてしまいました。
このような暖かい言葉をもらえるなんて想像もしておりませんでしたわ。
わたくしはとにかく、自分自身が自由に、幸せに生きていくために突き進んでいただけですもの。
境遇こそ良くありませんでしたが、前世の記憶をロディが引き継いでくれたおかげで、自分自身を見失う事なく、前を向いていられただけに過ぎません。
自分に出来る事を精一杯こなしていただけに過ぎませんわ。
それでも、これまでのわたくしをベロニカに褒めてもらえたような気がして。
これまでのわたくしを認めてもらえたような気がして。
心が、暖かい物で満たされたような気がして。
涙となって次々と溢れていきます。
ガタッ!
「僕も…っ!
僕も!絶対に言いません!!!
クロエはダンデライオン商会にとって恩人なんだ!
それがクロエに対して出来る恩返しなら、僕は喜んで約束を守ります!!!」
「ピーター…ありがとう……っ…!」
ソファから立ち上がったピーターが、真剣な表情で思いを伝えてくださいました。
わたくしは恩を売ったつもりはございませんでしたが、その気持ちが嬉しいですわ。
「私も絶対に誰にも言いません!」
「わたくしもお約束を守りますわ!」
「俺も誰にも言わないぞ!」
「俺も!」
「私もです!」
「皆んなっ……っ…ありがとう……!」
ピーターの言葉を皮切りに、皆んなも改めて約束してくださいました。
皆んなの思いが伝わってきて、涙が止まりません…
「クロエ。
もちろん俺も喜んで、誰にも言わないと誓う。」
「…っ………ウィリアム…っ…ありがとう……っ…!」
涙が止まらないわたくしの両肩にそっと手を置き、目線を合わせてウィリアムがそう仰ってくださいました。
真剣さを湛えたアメジストが、ウィリアムの気持ちを伝えてきます。
両肩に置かれた左右の手は大きくて暖かく、まるでわたくしを気遣ってくださっているようです。
わたくしを、心から大切に思ってくださっている事が感じられて、さらに涙が溢れてしまいました。
「皆んな…っ……っ……!……本当にっ………っ!………ありがとう……っ……!!」
突然の重い話でしたのに、皆んなに受け入れていただけた事が嬉しくて、ありがたくて、暖かくて…
わたくしは皆んなと出会えた事を、心から感謝いたしますわ。
必ず、本懐を遂げて、自由を勝ち取ります。
わたくしは、自分の力で、自分が生きたいように自由に生きる未来を、手に入れてみせますわ。
そしていつか、皆んなを家に招待しますわ。
その時は、皆んなでパーティーをしましょう?
きっと、楽しいはずですわ。
どうか、無事に全てが上手くいきますように…
………いいえ。全てが上手くいくように、頑張らなくては。
わたくしは溢れる涙をそのままに、皆んなへ感謝の気持ちを込めて御礼を言い、改めて決意を固めました。
その後、わたくしが落ち着いてから防音魔法と幻影魔法を解除し、学年末試験に向けての勉強会の日程を決めて、その日は散会となりました。




