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猫を助けたかっただけなのに  作者: めい


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第27話




ごきげんよう。

クロエ・カサブランカでございます。


…わたくしは全くご機嫌ではございませんが。


何故なら、あのめんどくさい御一行に呼び出されたからです。


不幸中の幸いと言えますのが、ヒロインと攻略対象者御一行が、国王陛下御一行に公衆の面前で怒られたためか、いつの間にか退散していた事くらいでしょうか。


あれだけ大騒ぎしたと言うのに、何も買わずに退散するとは…良い迷惑ですわ…

(こちらへの謝罪の言葉など、頭が悪く、傲慢な方々には思い浮かびもしない事は分かりきっていますので、最初から期待しておりません。)



わたくしは渋々、めんどくさい御一行がいるガゼボへと歩を進めます。

食堂を出る直前に、あのめんどくさい御一行にかけている認識阻害を解除する事も忘れません。

向かっている途中で解除してしまいますと、突然わたくしが現れたように見えてしまいますので、万が一見られてしまいますと、色々と怪しまれてしまいます。

そうならない為に、食堂を出る前に解除しておきましたわ。


中庭に設置されている中で一番大きいガゼボには、国王陛下、王妃殿下、第二王子殿下(仮)、公爵閣下、公爵夫人、わたくしの弟(仮)の6名が着席し、各々クレープやドリンクを召し上がっています。

ガゼボの周りには、王家と公爵家、それぞれの護衛と侍従、侍女が取り囲んでおり、半径5メートル以内のお席には、どなたもいらっしゃいません。


警備上必要な距離なのかもしれませんが、こちらとしましては他のお客様に多大なるご迷惑をおかけしているため、気分が良いものではございませんことよ。


ここまでする必要があるのならば、信頼のおける侍従または侍女に買いに行かせ、ご自分達は王宮か公爵邸(自宅)でゆっくりと召し上がれば良いものを…


きちんとお金を払っているとはいえ、この状況が周りへの配慮に欠けた振る舞いとしか思えないのは、わたくしだけでしょうか。


重すぎる足取りで、出来る限りゆっくりと歩きましたが、流石にもうガゼボの前に着いてしまいました。


陛下の侍従が前に出てきて、わたくしを出迎えます。


「カサブランカ公爵令嬢、お待ちしておりました。

こちらへどうぞ。」



……………気が進みませんわ。


そうは言っても、わたくしはこれでもまだカサブランカ公爵家に籍を置いている身ですから、ここで引き返す訳には参りません。


ものすっごーーーーーーーーく引き返したい気持ちは山々ですが!!!



失礼いたしました。取り乱しましたわ。

気を取り直して。


わたくしは顔に笑顔の仮面を貼り付け、出迎えた侍従に御礼を申し上げます。



「ありがとう。」


侍従が国王陛下にわたくしが到着した旨を告げ、ご自分は持ち場に戻りました。


わたくしはガゼボの入り口前に立ち、ご挨拶をします。


「国の太陽にご挨拶申し上げます。

国王陛下、王妃殿下におかれましてはーーー」


「よい。そう畏るでない。」


「そうよ。未来の義娘なのですから。」


「……………」



わたくしがご挨拶をしている途中で国王陛下が遮ってこられました。

王妃殿下があり得ない事を仰いましたが、全くもって同意できかねますので、笑顔で否定しておきます。

伝わるかは分かりませんが。



「義姉上。はじめまして。

僕はフローレン王国第二王子、アーサーと申します。

お会いできて光栄です。」


「まぁ…第二王子殿下でいらっしゃいましたか。

ご挨拶が遅れまして、大変失礼をいたしました。

わたくしはクロエ・カサブランカと申します。

お会い出来て光栄ですわ。

以後、お見知り置きを。」



わたくしが否定のために沈黙しておりましたら、王家の色を纏った男の子がご挨拶してくださいました。


やはり第二王子殿下で間違いございませんでしたわ。

アホ王子とは違って、利発そうなお顔立ちをなさっています。

王宮内では、とても優秀で、しっかりなさっていて、努力家と専らの評判です。

弟君である第三王子殿下の面倒もよく見ていらっしゃるため、第三王子殿下は家族の中で一番第二王子殿下に懐いていらっしゃるとか。


貴族名鑑によりますと、殿下は御年8歳。

代々財務大臣を務めていらっしゃるバルバロッサ公爵家のご令嬢、アメリア様とのご婚約が先日決まったばかり。

お噂によると、殿下が王家主催のガーデンパーティーにて、アメリア様に一目惚れし、パーティー後、国王夫妻(ご両親)と公爵夫妻にご婚約の希望を伝えられたとか。

もちろん、アメリア様にもお手紙を書かれ、熱烈な内容にアメリア様もすぐにご婚約を前向きにお考えになられたそうですわ。

御年はアメリア様が7歳と、お2人の御年齢が近いのもスムーズにご婚約が決まった一因だったようです。

お2人は着実に信頼関係を築いていらっしゃるとの評判ですの。

(わたくし達と違って!ここが重要ですわ!)


第二王子殿下と実際にお会いしてみて、ご挨拶もきちんとなさっていますし、笑顔を絶やさず、振る舞いもしっかりなさっていらっしゃる印象を受けました。

(比較対象がアレ(・・)なだけに、余計に良く見えてしまいますが。)

王子教育は既に始まっていますが、振る舞いを見る限り、しっかりとお勉強に取り組み、身につけていらっしゃるのが分かります。


………あのアホ王子よりよっぽど王太子に向いていらっしゃるのではなくて?



「あの…クロエお姉様…ですか…?」


そのような事を考えていましたら、おずおずといった様子で、少し高めの男の子の声が聞こえて参りました。

わたくしは、声が聞こえた方に向き直って、ご挨拶します。


「はじめまして。

わたくしは、クロエ・カサブランカと申します。

小さな紳士に出会えて光栄ですわ。

お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


お互いにこの歳で、兄弟に初めて会うというのは、なんだか不思議な感じがいたしますわ。

弟だとは予想しておりますが、初対面ですので、一応礼を取って挨拶いたしました。

あ、ちゃんと心からの笑顔でですよ?


「あ…僕は、エドワード・カサブランカです。

クロエお姉様の弟です。8歳です。」


「まぁ。可愛らしい紳士はわたくしの弟でしたのね。

初めまして。どうぞよろしくお願いしますね。」



予想通り、この子はわたくしの弟でしたわ。

弟のエドワードは、緊張しているのか、大きな青い瞳を潤ませながら、一生懸命自己紹介をしてくれましたわ。

可愛らしい姿を微笑ましく見守っているとーーーーー



「クロエ。大盛況だね。」


「本当に。このくれーぷという菓子もとても美味しいわ。」



無粋に話しかけてくる公爵夫妻(両親(仮))

10年ぶりに会う娘に対してよくもまぁぬけぬけと…何食わぬ顔で親しげに話しかける事ができますわね?

公爵夫妻(この方達)の厚顔無恥っぷりにはほとほと感心いたしますわ。

わたくしは顔に笑みを貼り付け直し、ご挨拶します。



「公爵閣下。お久しぶりでございます。

クレープが公爵夫人のお口に合い、光栄に存じますわ。」



わたくしがご挨拶すると、公爵夫妻(目の前の2人)は、伏し目がちの表情になりました。


公爵閣下(父親(仮))が、言いにくそうに切り出します。



「クロエ…その…」


「はい。何でしょう。公爵閣下。」


「……お父様とは…もう呼んでくれないのかい?

小さい頃には呼んでくれていたじゃないか。」


公爵閣下(父親(仮))そう言ってきましたが…

そちらが10年も放ったらかしにしていましたのに、今更何をおっしゃっているのでしょうか?

さも小さい頃はお父様と呼んでたくさんお話ししたような言い方ですが、あなた方にお会いするのは16年生きてきて実質2回目ですのよ?

もちろん、手紙のやり取りもした事はございません。


「ええっと…

同じ家に住んではいますが、公爵閣下や公爵夫人とお会いするのはおよそ10年ぶりでございますので…非礼の無いようお呼びしているだけですが…」


「「………」」


心底困っていますという微笑みを顔に貼り付けて事実(嫌味に聞こえるかもしれませんが、本当の事ですわ。)を申し上げましたら、公爵夫妻が気まずそうに目を逸らしました。


だから呼ばない方が良かったのに。

ご自分で墓穴を掘りましたわね。

というか、このような方が外務大臣を担っていて、この国はよく今まで平和を維持出来ていますわね?

あ、乙女ゲーム補正か何かでしょうか。

それとも、仕事だけ(・・)はできる方なのでしょうか?

どちらにしても、わたくしには関係の無い事でございます。



「ゴホンッ!

ところで、このくれーぷという菓子は、其方が考えたと聞いておるが、どのようにしてこの菓子を思いついたのだ?」


国王陛下がフォローのために話題を変えてきました。

誰ですか。余計な事を言ったのは。

わたくしが考案したと思われてしまえば、今までの苦労は無駄になってしまいますわ。

このままにしておくのは非常によろしくありません。


…ちょっと細工をしてみましょう。


「まぁ、陛下、ご冗談を。

[わたくしにそのような知恵などございませんわ。

このクレープは、ダンデライオン商会で考案された物でございます。]

明日、ダンデライオン商会がクレープ屋台を開店する予定ですの。

こちらのクレープ屋台は、その市場調査に過ぎませんわ。」


([半径5メートル以内にいる者に対して、認識を指定した箇所のものへ歪曲(ディストート)])



「「「「「「………………」」」」」」


【半径5メートル以内にいる者に対し、指定された部分が真実であるという認識へ変更する事に成功しました。】



「…そうか。もう下がって良い…。」


「では、わたくしはこれで失礼いたします。」



国王陛下に許可をいただきましたので、喜んで辞去のご挨拶をします。

足取り軽く屋台まで戻り、皆んなに挨拶をしながら食堂に入り、あの方達に対しての認識阻害を復活させ、わたくしは持ち場に戻りました。



それにしましても、先程の魔法は中々に恐ろしいですわね…

犯罪等に悪用する気は毛頭ございませんが、あまり使いたい物ではございませんわ…

二度と使用する機会が訪れる事の無いよう、気を引き締めなければなりませんわね。


その後、各々休憩を挟みながら、最終日の営業をクラス全員で頑張ってやり切りましたわ。

クレープ屋台の終了を惜しんでくださるお客様には、明日からダンデライオン商会で開店する旨もきちんと宣伝しておきました。




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