第24話
ごきげんよう。
クロエ・カサブランカでございます。
本日は土の月2日。
王立学園創立祭2日目ですわ。
本日も2学年Cクラスのクレープ屋台、元気に開店中でございます。
昨日の評判をお聞きになったのでしょうか、本日は開店と同時にたくさんのお客様にご来店いただき、わたくしは今、絶賛生地を製作中でございます。
本日もダンデライオン会頭は開店と同時にご来店し、クレープ及びドリンクを全種類ご購入後マジックバックに入れ、中庭全体が見渡せるガゼボに陣取り、ひとつずつゆっくり召し上がりながら高みの見ぶ…げふんげふん…ご本人曰く市場調査中でございます。
私情調査の様な気がするのは決してわたくしだけではないと思いますわ。
閑話休題。
「追加分の生地できましたわ。」
「カスタードクリームくださーい!」
「はーーーい!」
「生地ももう少しで無くなります!」
「りょーーかいでーーーーす!」
「わたくし、ちょうど作り終えた所ですので持っていきますわ。」
「「「「「ありがとう!お願いします!」」」」」
出来上がった生地と、絞り袋に入れたカスタードクリーム、同じく絞り袋に入れたホイップクリームとカスタードクリームを合わせたクレープブリュレ用のクリームを、ダンデライオン商会より支給されたマジックバックに入れ、屋台へ急ぎます。
「生地とクリーム、こちらに入れておきますわね。」
3箇所の焼き台の下に設けた引き出しから空の容器を取り出し、先程作り終えた生地を入れた専用の容器を入れます。
隣の冷蔵庫もどきも開け、クリームの在庫を確認し、必要分補充します。
「ああ。カサブランカ嬢、ありがとう。」
調理係の1人であるシクラメン様が応じてくださいましたので、また戻ろうとした所ーーーーー
「あっ!お姉さん!」
ーーーーーん?
振り返ると、昨日の可愛いお客様…ブルーノ様がちょうど接客スペースにいらっしゃいました。
わたくしは接客スペースへ移動し、接客係をされているパンジー様のお隣に立ちます。
「あら。ブルーノ様、いらっしゃいませ。
本日もご来店ありがとうございます。
もうご注文はお済みですか?」
本日もお母様である御婦人とご一緒にご来店くださいました。
本日は妹さん?でしょうか?6歳位の可愛らしい女の子もご一緒です。
「ごきげんよう。
昨日のクレープが忘れられなくて、本日も来てしまいましたわ。
本日はこの時間から大盛況ですのね。
昨日帰宅後にブルーノとクレープの話をしていたら、妹のサーヤも来たいと申しまして…
こうして3人でお伺いしましたの。」
御婦人がご帰宅後の微笑ましいやり取りと、可愛いお客様について教えてくださいました。
ブルーノ様の妹のサーヤ様ですか。
ふわふわの髪の毛も、大きな瞳も、ブルーノ様や御婦人と同じ色彩で、おめかししたお姿がとても可愛いですわ。
御婦人に御礼を言い、サーヤ様に目線を合わせてご注文をお伺いします。
「ありがとうございます。
かわいいお客様が増えるのは大歓迎ですよ。
サーヤ様、いらっしゃいませ。
本日は何を召し上がりますか?」
「わたくしは…イチゴのがたべたいです…」
サーヤ様は恥ずかしがり屋さんなのか、真っ赤なお顔でもじもしされながらも、一生懸命ご自分が召し上がりたい物を仰ってくださいました。
続けて、ブルーノ様と御婦人にもご注文をお伺いします。
「かしこまりました。イチゴですね。
ブルーノ様は何になさいますか?」
「僕はクレープブリュレにします!」
「御婦人はいかがなさいますか?」
「わたくしはモモとクリームでお願いいたします。」
ブルーノ様は昨日召し上がったクレープブリュレが余程お気に召したのか、今回も元気いっぱいにご注文なさいました。
御婦人は色々と召し上がられたいのか、今日はモモのクリームになさいましたわ。
「かしこまりました。お飲み物はいかがなさいますか?」
「わたくしはアイスティーを。
ブルーノとサーヤはどれにしますの?」
「僕は昨日と同じジンジャーエールが良いです!
しゅわしゅわで、甘くて、ちょっとピリッとしてて、とても美味しかったので!」
「じっ…じゃあわたくしも…おにいさまとおなじものを…おねがいします…」
お飲み物は御婦人はアイスティー、ブルーノ様は昨日と同じジンジャーエールをご注文なさいました。
サーヤ様はブルーノ様のプレゼンを聞かれて、瞳をうるうるさせながらも一生懸命お兄様と同じジンジャーエールをご注文してくださいました。
ご注文の商品を全て記入し、お会計の金額をお伝えします。
「かしこまりました。
では合わせて2,800フロール頂戴いたします。」
「すごい!お姉さん!
計算がとても早いんですね!」
「確かに…昨日も思いましたが、とても優秀なのですね。」
御婦人が3,000フロールを渡しながらブルーノ様のお言葉に同意なさいます。
「そんなことありません。皆んな出来る事ですよ。
あ、3,000フロールお預かりしましたので、200フロールのお返しです。
出来上がりましたらお席にお持ちしますので、お掛けになってお待ちください。」
お釣りを渡しながら、お席でお待ちいただくよう促します。
ほとんどのお客様は対面でお渡ししておりますが、子供さんや、マジックバックをお持ちではなく、大量に購入してご自分でお席まで運びきれない方など、こちらが判断した場合はお席にお持ちするなどして臨機応変に対応しておりますの。
「ええ。そうさせて頂くわ。ありがとう。」
お3方が席に向かったのを確認して、オーダーを通します。
「モモホイップ、イチゴ、ブリュレを1 つずつ、アイスティー1つ、ジンジャーエール2つお願いしまーす!」
「「「「「ご注文、ありがとうございまーす!」」」」」
「パンジー様、突然お隣にお邪魔しまして申し訳ございませんでした。
わたくしは先程のお客様のご注文の商品をお席にお持ちしましたら、また厨房に戻りますので、次のお客様から、またご対応をお願いいたします。」
「カサブランカ様が謝る事は何もありません!
こちらこそ、勉強になりました!
ありがとうございます!
また接客頑張りますね!」
パンジー様に、突然お隣にお邪魔した旨を謝罪しましたら、笑顔でその様なことを仰ってくださいました。
パンジー様の優しさに感謝ですわ。
その後、出来上がったクレープ3つとドリンクをトレーに乗せ、お3方の席にお持ちした所、ブルーノ様はクレープブリュレをものすごい笑顔と勢いで召し上がっておいででした。
御婦人は昨日とは違う味わいのモモとクリームを上品に召し上がって食リポされてましたし、サーヤ様は初めてのクレープがお気に召したご様子で、瞳を輝かせながら全部召し上がってくださいました。
忙しさで荒みかけていた心が癒されましたわ…
しかし…ブルーノ様はクレープブリュレがお気に召したのなら、シュークリームやプリンなどもお口に合いそうですわね…
あー…シュークリーム…プリン…
食べたくなってきましたわ…次の休みにでも作ってみましょう…
お3方と別れ、その様なことを考えながら厨房に戻ろうとしましたら、屋台の後方でフォロー係をなさっている委員長に呼び止められました。
「カサブランカ様、お先に休憩どうぞ。」
「委員長、ありがとうございます。
では、休憩に入らせて頂きますわね。」
委員長はすごいですわよね。
フォロー係をしながら、全員の配置や、休憩等の時間管理も併せて行っていらっしゃいますもの。
ご自分の担当のお仕事も完璧に熟しながらも、全体を把握し、管理されている…なかなか出来ることではございませんわ。
委員長こそ、優秀な方だとわたくしは思います。
厨房に戻り、後方係の皆んなに休憩に入る旨をお伝えし、奥の空いている調理台の前で歩みを止めます。
兎にも角にも。
今はカレーが食べたいですわ!
クレープは美味しいのですが、やはりスイーツ。
しょっぱい物…(というよりカレーはスパイスメインですが)を無性に頂きたくなって参りました…
せっかく広い厨房を貸して頂いていますし、本日の昼食はカレーを作って頂くことにします。
まずは材料を準備して…
「カサブランカ嬢、何をしているのですか?」
!!?
突然背後から話しかけられ、驚いて振り返りましたら、ダンデライオン様が笑顔で立ってらっしゃいました。
あー驚きましたわ。
全く気配を感じませんでした。
動揺は置いておき、わたくしも笑顔でお応えします。
「ダンデライオン様。
せっかく広い厨房をお借りしているのですから、少し使わせて頂いて、昼食のカレーを作ろうと思いましたの。
ダンデライオン様も召し上がりますか?」
「かれー?初めて聞きますが、カサブランカ嬢が作る物ならきっと美味しいに違いありませんので、是非ともご相伴に預かりたいですね。」
何故でしょう?
笑顔ですが、圧を感じますわ…
「かしこまりました。
どうせならクラス皆んなの分も作りましょう。」
余ったら余ったで、活用法もございますし。
「「「「「頂きます!!!」」」」」
皆んな…聞いていらしたの?
すごく揃っていましたわ。
「では作っておきますので、皆さん休憩時間になったら召し上がってみてくださいまし。」
「「「「「はーーーい!」」」」」
お返事が息ぴったりですわね……
ダンデライオン様が持ち場に戻られましたので、気を取り直しまして…
先日インターネットで調べていましたら、30分で出来るカレーのレシピを発見しました。
この世界ではカレールーという素晴らしき企業努力の結晶は存在しませんので、スパイスから30分で出来るという夢のようなレシピに全力で乗っかりたいと思います。
まずは、材料の準備から。
あ、ちなみに食材は昨夜大量購入しまして、亜空間収納に入れてありますので、固有スキルを使う必要がありませんし、バレるリスクもございません。
昨夜のわたくし、グッジョブですわ。
材料は
ロックバードの肉(一口大に切ります)
トマト(粗みじん切り)
タマネギ(粗みじん切り)
ニンニク(すりおろす)
ショウガ(すりおろす)
プレーンヨーグルト(ボウルに取り出し、混ぜて置いておく。容器は証拠隠滅のため、すぐさま亜空間収納に入れる。)
油
水
塩
クミン(ホール)
コリアンダー(パウダー)
ターメリック(パウダー)
レッドペッパー(パウダー)
以上ですわ。
え?
ロックバードの肉をなぜ持っているのかですって?
それはネットショッピングで購入したからですわ。
実はわたくしのネットショッピング、この世界の物も販売されていた事が発覚いたしましたの。
魔物の肉や素材等、冒険者ギルドで扱われている物が商品としては多いようです。
ですので、ロックバードもきちんと精肉された物が販売されておりました。
これはとてもありがたいです。
他にもレッドボア、ブラッディホーンブル、ワイバーンのお肉等も精肉された状態で販売されておりましたわ。
わたくしのネットショッピング、優秀すぎませんこと?
もう何でもありな気がして参りましたわ…ほほほ。
閑話休題。
下準備を終えたら、調理開始です。
まず、大鍋に油とクミンを入れて強火にかけます。
クミンがパチパチと音を鳴らしましたら、タマネギを入れて炒めます。
タマネギが茶色になってきましたら中火にし、ニンニクとショウガを加え、香りが出るまで炒めます。
ニンニクとショウガの香りが出てきましたらまた強火にし、トマトを加えます。
トマトの形が無くなりましたら、パウダースパイス3種類と塩を加え、水分が無くなるまでしっかりと炒めます。
水分がしっかりと飛んで、全体がねっとりしてきましたら、ロックバードとヨーグルトを加えます。
ロックバードの表面に火が通りましたら、水を加えて弱火にし、8分から10分、少しねっとりするまで煮ます。
「ふぅ…」
待っている時間が惜しいので、この鍋の中身だけ8分進んでもらいましょう。
([この鍋の中身を8分早送り])
【鍋の中のカレーを8分煮込んだ状態にしました。】
おぉ!成功しましたわ!
なんて優秀な魔法なのでしょう!
では、一口味見をして、塩味を確認しましょう。
…うん。塩加減は良さそうですわね。
お味も良い感じです。
これでカレーは完成ですわ。
ご飯も昨夜まとめて炊いた物がございましたので(昨夜のわたくし…以下同文ですわ。)、先程同様鞄の中(の、亜空間収納)から土鍋を出して、調理台の上に置いた鍋敷きの上に置きます。
「皆さん、お待たせしました。
カレーが出来上がりましたのでどうぞお召し上がりくださいまし。」
お皿とスプーンは食堂の物をお借りします。
30人分のお皿と、スプーンを入れたカトラリーケースを調理台の上に置き、5人分のカレーライスをお皿によそい、休憩メンバーに配ります。
それぞれ食堂内の休憩スペースのテーブルに着いて、食べ始めます。
「「「「「頂きます!」」」」」
パクッ…
んっ!中々上手く出来ましたわ!
美味しいです!
時間もあまりかかりませんでしたし、これはリピート決定ですわね。
ん?
皆さん静かですが、お口に合いませんかしら…
ガツガツガツガツ!
パクパクパクパク!
ごっっっくん!
「「「「美味しい!」」」」
ほっ。お口に合ったようで何よりですわ。
「何だこれ!?美味いぞ!」
「初めて食べる味ですわ!」
「後引く味だ!止まらない!」
「ロックバードもジューシーで、食材の旨みとこの爽やかな辛味がたまりませんわ!
この白い物ともよく合います!」
おふ…
ポインセチア様…ブルーノ様親子に感化されまして?
ともあれ、お気に召して頂けたのなら作った甲斐がございましたわ。
わたくしもカレーへの欲求を満たす事ができ、満足でございます。
その後、皆んなでお話に花を咲かせながら楽しく昼食を摂り、後片付けをして、1時間の休憩が終了しました。
持ち場に戻ろうとした所ーーーーー
「カサブランカ様!」
ーーーーーん?




