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猫を助けたかっただけなのに  作者: めい


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第23話



「このシュガーバターとジンジャーエールをひとつずつ。」


「あら、会頭。いらっしゃいませ!

シュガーバターとジンジャーエールですね。

合わせて600フロール頂戴します。」


開店と同時に、ダンデライオン会頭がご来店なさいました。

ご注文のシュガーバターとジンジャーエールを注文伝票に記入し、お会計金額をお伝えします。


「はい、600フロールちょうど。」


「はい。確かに。ちょうど頂きました。

シュガーバターとジンジャーエールひとつずつお願いしまーす!」


「「「「「「「はーい!

ご注文ありがとうございまーす!」」」」」」」


まだ始まったばかりというのもあり、お客様は会頭のみですが、早く来てくださってありがたいですわ。

なぜならーーーーー


「わぁ!お母様!甘い良い匂いがします!

僕、このくれーぷという食べ物、食べてみたいです!」


「そうですね…これはわたくしも頂きたいですわ。

ブルーノ、どれにしますの?」


「お姉さんのお勧めは何ですか?」


クレープを焼く甘い香りに釣られて赤茶色の髪の毛と緑色の瞳が特徴的な10歳位の男の子と、男の子と同じ髪と瞳の色を持つ御婦人がご来店されました。

親子の様ですわね。そっくりですわ。


純粋な瞳の男の子に、おすすめを聞かれましたので、ここは精一杯アピールしてみましょう。


「いらっしゃいませ。

そうですね…お勧めは全部です。


シュガーバターはお砂糖とバターで生地に味付けた物ですが、生地本来の味とバターの風味、お砂糖の甘さが絶妙に合いますよ。


キャラメルとクリームはキャラメルの甘さと少しのほろ苦さにふわふわのクリームが合って美味しいですし、モモとクリームは軽やかに泡立てたホイップクリームとモモの甘さがよく合います。

イチゴとクリームは軽やかで滑らかなクリームと、イチゴの甘酸っぱさが合って美味しいですよ。


モモとカスタードは、コクのあるカスタードクリームとモモが相性抜群です。


キャラメルリンゴカスタードは薄く切ったリンゴをバターとお砂糖でしんなりするまで炒めたものと、卵と牛乳で作ったカスタードクリームを入れています。

これもとても美味しいです。


最後のクレープブリュレは、カスタードクリームとホイップクリームを合わせたクリームを入れ、上からお砂糖を少し振りかけて炙ったものです。

クリームの甘さとお砂糖を炙った所のカリカリとした食感とほろ苦さの対比が味わえます。」


ついつい熱く語ってしまいましたわ。

お勧めと聞かれますと…どれも自信を持って出していますもの。

説明にも力が入ってしまうものでしょう?


「うぅぅぅん…全部美味しそうで悩んじゃうなぁ…」


おや。

純粋なこの子にはわたくしの熱意が伝わったようです。

腕を組み、首を捻りながら本気で悩んでくださっています。

その姿はとても可愛らしく、微笑ましいですわ。


「そうですねぇ…悩みますわねぇ…」


御婦人も頬に手を当て、困った様に微笑んでいらっしゃいます。

確かにたくさん種類がありますから悩みますわよね…


「お2人は、本日のみ創立際にお越しの予定ですか?」


「えぇ、そのつもりでしたが…」


お話を伺ってみると、本日のみ創立祭にお越しの予定だったようで、マジックバックはお持ちでしたが、時間停止機能がないタイプしかお持ちではなく、お持ち帰りする事も難しいようです。

であれば、何日かかけて食べたい種類を召し上がることは出来ませんわよね…

せっかくお越しくださったのに、これでは心残りが出来てしまいますわ。



「でしたら、本日はお試しで食べて行きませんか?」


「カサブランカ嬢?」


隣の焼き台の前に立っていたシクラメン様に制止されます。

それでも、せっかく来てくださったので、出来る限りのことをしたいのです。

皆んなにお詫びと、ご相談をしてみましょう。


「シクラメン様、勝手な事をして申し訳ございません。

しかし、せっかくご来店いただいたのに、何もしないのは…

皆さん、わたくしに考えがございます。

どうかお付き合い頂けませんか?」


「分かった。」

「分かりましたわ。」


わたくしのお願いに、シクラメン様と委員長が頷いてくださいました。

委員長がそのまま続けて仰います。


「カサブランカ様、お考えがおありなら、思うままになさって。

皆さんも異論はありませんわよね?」


「「「「「「「はーい!」」」」」」」


「皆さん…ありがとう。」


本当に、Cクラスの皆んなは優しいですわ。

わたくしはご来店くださったお客様に向き直り、考えた案を勧めてみます。


「おひとりふたつずつ選んで頂ければ、それぞれ半分の大きさでお作りします。

それを食べ比べてみて、お気に入りの味を見つけてみてください。」


「よろしいんですの?」


「ええ。たった今、皆んなの許可も得ましたし?」


御婦人は気にされた様に仰ったので、お気になさらない様、ここはちょっとしたり顔で言ってみましょう。


「お姉さん!ありがとう!」


男の子が満面の笑みで御礼を言ってくださいました。

提案して、良かったですわ。


その後、御婦人はシュガーバターとキャラメルリンゴカスタードを、男の子はイチゴとクリームとクレープブリュレを注文してくれました。

飲み物はアイスティーとジンジャーエールをひとつずつ。


「はい。お待たせいたしました。

シュガーバターはこちらのカトラリーをご利用ください。

他の種類は手に取ってそのままお召し上がりいただけますよ。

どうぞごゆっくりお過ごしください。」


お会計もクレープ4品分の半分の料金と、ドリンクの料金を頂き、商品をお席まで運び、屋台に戻ってクラスの皆んなと一緒に様子を伺います。

…ついでにダンデライオン会頭もお2人の様子を凝視しています。

もう食べ終わったんですね…


「いただきまーす!」

「いただきます。」


パクッ…


「おいしーい!」

「まぁ!なんて美味しいのかしら!」


男の子と御婦人、同時に一口召し上がりました。

お二人とも満面の笑みで感想を仰っています。

お口に合ったようでなによりですわ。


「お母様!これ!お姉さんの説明通り、イチゴが甘酸っぱくて、甘いクリームがふわふわで、とっても美味しいです!」


「こちらのシュガーバターもお砂糖の甘さとバターの風味、そして生地のもちもちの食感と味がしっかりと伝わって来て、とても美味しいですわ!」


おおぅ…

この親子、食リポが上手ですわね…


でもまあ、気に入って頂けて嬉しいですわ。


そして勢いそのままにペロッと平らげ、お2人共ふたつ目に突入です。


「うわぁ!うわぁ!!

こっちのクレープブリュレも美味しいです!」


「こちらのキャラメルリンゴカスタードもとても美味しいですわ。

シンプルなシュガーバターも美味でしたが、こちらもリンゴとキャラメル、バターの風味と、カスタードクリームというクリームの相性がとてもよろしくて豊かな気持ちになりますのね。」


御婦人…前世はどこぞのグルメリポーターか何かでして…?


まぁ何にせよ、どちらもお口に合ったようで安いたしました。


「ごちそうさまでした!」

「ごちそうさまでした。」


「お姉さん!どっちもとっても美味しかったです!

ありがとう!!」


クレープを召し上がった後、男の子が御婦人と共に接客スペースまで来てくれて、笑顔で御礼を言ってくださいました。


「ふふっ。お口に合ったようで嬉しいです。」


「こちらの屋台は創立祭の期間中はずっと出店なさっているの?」


「ええ。その予定です。

創立祭の期間中は学園も開放されていますし、よろしければぜひまたお越しください。」


御婦人が笑顔でこの屋台の出店日を確認なさったので、5日間ずっと出店予定という事をお伝えします。


創立祭は5日間開催されますので、日にちを限定しての出店も多く、出店スケジュール等の冊子を配布している訳ではございません。

全体のスケジュールを把握しているのは教師陣や生徒会役員、クラス委員長位です。


わたくしの返答に男の子が瞳を輝かせながら嬉しそうに御婦人にお願いしています。



「本当!?

お母様、明日もまた来ましょう!」


「そうですわね。

明日はまた違う味を頂いてみましょう。」


「やったー!」


ふふっ。かわいいなぁ。

お願いが叶って、両手を上げて喜んでいる姿はとても可愛いですわ。



「ではまた明日、お待ちしてますね。」


「お姉さん、また明日!」


「ええ、また明日。

ありがとうございましたー!」


かわいいお客様と御婦人に手を振り、お2人は満足したように笑顔でその場を後になさいました。

お2人が座っていらしたお席の片付けをしているとーーー



「とても良い香りがしますわ…

こちらのくれーぷという物、注文よろしくて?」


「いらっしゃいませ!

ありがとうございます!

ご注文はあちらでお承りします。」



まだ午前中ということもあって、それからはポツポツとお客様がいらっしゃいましたけれど、まだまだ忙しいとまではなりませんでした。


しかし、これは想定内です。


午前中やお昼頃までは校門付近や目的の出店ブースを訪れる方が多いため、わざわざクレープ屋台に来られるのはCクラスの方のご家族やお友達がほとんどでした。

そこで、皆さんにはクレープや飲み物を持って、召し上がりながら校内の散策をお願いしました。


お行儀は良くありませんが、召し上がりながら歩いて頂ければ、この世界では未知の食べ物であるクレープの甘い香りや美味しさをアピールできるのではないかと思いましたの。


それに、用意したワックスペーパーや飲み物のコップは、通常ですと召し上がった後はゴミになってしまいますが、あいにく学園にゴミ箱は設置されていません。

ポイ捨てをされて学園の景観が悪くなってはいけませんので、ワックスペーパーとコップ、ストローには全て、中身が空になったら屋台裏に置いたゴミ箱に戻ってくるようにと返却リターン)の魔法を施してあります。

これで召し上がった後は手ぶらで移動できますので、とても便利!

という点も併せてアピールできます。


ご家族やお友達にクレープを召し上がりながら校内を散策して頂いたおかげで、お昼時を過ぎた辺りから徐々にお客様が増えだしまして、1日目の終了ギリギリまで行列は絶えませんでした。


「最後のお客様が帰られましたわね…

皆さん、本日はお疲れ様でした!

最初はゆるやかな来店状況でしたが、14時頃から最後まで忙しくなりましたわね。

本日はゆっくり休息を取って、明日もまた頑張りましょう!」


「「「「「「「おーーーーー!」」」」」」」


最後のお客様が帰られた後、委員長のお言葉に一致団結し、各々片付けに入ろうとした所ーーーーー



「いやぁ、皆さんお疲れ様でした!

やはりクレープは人気がある甘味でしたな!

明日からは朝から忙しくなりそうですな!」


ーーーーーーー会頭、1日いらしたのですね。


恐らく全員同じことを思ったのではないでしょうか。


「父上、1日中いらしたのですか?」


ダンデライオン様が冷ややかな目でツッコんでくださいましたわ。


「ピーター、当たり前ではないか!

この創立祭が終われば我が商会でもクレープを販売するのだぞ!

売れ行きを確認しておく事は大事ではないか!」


ダンデライオン様のツッコミに対して、会頭は至極真面目なお顔でお答えしていますが…

その割には全種類制覇なさっていましたわよね?


まぁ兎にも角にも、何とか1日目が終了しましたわ。

あと4日、頑張りましょう!



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