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猫を助けたかっただけなのに  作者: めい


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第20話



ごきげんよう。

クロエ・カサブランカでございます。


わたくしは今、クラスのミーティングを終え、ダンデライオン様と一緒にダンデライオン邸の応接室前に来ております。



コンコンコン


「父上、カサブランカ嬢をお連れしました。

入りますよ。」


「失礼いたしますわ。」


ガチャ


ダンデライオン様がノックをし、入室なさる後に続き、わたくしも応接室に入ります。



「おぉ!ピーター、すまないな。

カサブランカ様、どうぞおかけください。」


ダンデライオン様のお父様、ダンデライオン商会の会頭はすでに応接室にいらっしゃいました。

先程ミーティング中に入って来た時にも思いましたが、やはり親子。

ダンデライオン様にそっくりな、柔和で、人好きするお顔のおじ様ですわ。


「ありがとうございます。」


わたくしは勧められたソファに腰掛けます。


さすがは国内最大手商会会頭の邸宅。

先程ミーティングで使用した大広間もそうでしたが、この応接室も素晴らしいですわ。

調度品は価値のある物がさり気なく置かれていらっしゃいますし、テーブルやソファ、シャンデリア等も全て一級品ばかり。

しかし無駄な装飾は無く、全てがセンス良くまとめられており、まさに瀟洒という言葉がぴったりの、とても素敵な空間ですわ。



テーブルを挟んで向かい側のソファに会頭とダンデライオン様が掛けられるや否や、会頭が話を切り出しました。


「カサブランカ様、本日は急にお呼び立てしてしまい申し訳ございません。

しかし!先程貴女がお作りになられたクレープという甘味!

これはこの世界で一大ブームを起こせる程のポテンシャルを秘めていると拝察いたします!

ぜひ!このクレープを私どもの商会で扱わせては頂けませんでしょうか!」


「そうですわね…

ダンデライオン商会はダンデライオン様のご実家の商会である…という点を差し引いても、このフローレン王国でも信用に値する商会だと思っております。

わたくしとしてもぜひ、お願いしたい所ではございますが…条件がございます。」


「条件…ですか。お伺いしましょう。」


わたくしの条件という言葉に、会頭は然もありなんと言わんばかりに頷き、話の続きを促されます。

わたくしも頷き、話を続けます。


「条件は2つございます。


まずひとつ、クレープは学園の創立祭にて、わたくし達2学年のCクラスが、クラスの出し物として出店をする事が決定しましたので、そちらでクレープを扱うのは、創立祭終了後にしてくださいまし。


ふたつ目は、このクレープの権利は、わたくしの名前で登録させていただきます。

この後、商業ギルドに向かい、権利の登録を行いたいと考えておりますの。

クレープの使用料は売上の3割での登録を予定しておりますが、ダンデライオン会頭が先程の条件を了承してくださるのなら、ダンデライオン商会に限り、使用料を売上の1割とさせていただきますわ。

いかがでしょうか?」


正直に申しますと、クレープはわたくしが考えた物ではございませんので、使用料はそんなに高くなくてもよろしいのですが、全くもらわないというのはこのレシピに価値がないと言っているような気がして憚られますので、このレシピを考えてくださった方に敬意を払う意味でも3割は取らせて頂こうと思っております。

ちなみにレシピを買ってもらい、利益を得る方法もありますが、それだと模倣して出店された場合、ダンデライオン商会だけ損をしてしまいかねません。

余計なお世話かもしれませんが、権利を登録し、利益を得る方法を取らせて頂きます。

それにこちらの方法ですと、クレープが売れ続ける限りコンスタントに利益を得ることができますので、わたくしとしても助かりますわ。ほほほ。



「本当に…1割でよろしいのですか?」


ん?

会頭が下を向いて震えていらっしゃいますが、どうなさったのでしょう?


「えぇ、わたくしはこの条件をのんで頂けるのであればそれでよろしいですわ。

ご不満な点がございまして?」


「不満だなんてとんでもない!!!

喜んでこの条件をのみましょう!!!

しかし…カサブランカ様はそれでよろしいのですか?」


おおぅ…

会頭が突然顔を上げたかと思いきや、勢いよく話し出しました…

そのきは…げふんげふん…勢いに押されそうになりますわ…


「よろしい…とは?」


「こんなに儲けられる金の卵のレシピをたったの1割で良いだなんて!

破格すぎます!!!

それに通常の使用料もたったの3割だなんて!!

今出回っているケーキの使用料ですら7割だというのに!!!」



そう。

あのねっちょ…げふんげふん…謎のケーキ。

調べた所、その使用料はなんと売上の7割と、とても高額なのです。

この世界では他にケーキと呼べる物はありませんし、ケーキ以外の甘味といえば、石のように硬いクッキーしか存在しません。

ちなみにそのクッキーの使用料もケーキ同様売上の7割です。

極端に菓子の種類が少ないため、こんなぼったく…げふんげふん…高額な使用料でもまかり通ってしまっているのでしょうか?

その上、この世界にはカフェという物が存在しません。

なので激硬クッキーも謎のケーキも、買うとしたらパン屋さんで購入して食べるのが一般的です。

ただし、使用料が高いため、パン屋さんでも高額で販売されており、実際に購入するのは貴族や一部の裕福な平民に限られておりますが。


クレープは屋台でも販売出来ますし、カフェの文化が無いこの世界でも、受け入れられやすいのではないでしょうか?



それでも、わたくしの利益の事も考えてくださって、会頭の心遣いに暖かい気持ちになりました。



「会頭は金の卵と仰ってくださいますが、まだ販売していない商品ですし、今までに無い新しい食べ物ですので、使用料は3割でよろしいですわ。」


「何と…!!!」


「それに、ダンデライオン商会がクレープ屋台、またはクレープ屋の開業準備を整えて、学園の創立祭の翌日から営業を始める事が出来るのならば、わたくし達も学園の創立祭で好評を頂けますように精一杯努めてまいりますわ。

併せて、そちらの宣伝もさせて頂ければ、良いスタートが切れるのではないかと思いますの。」



ガシッ!!!


わたくしが自分の考えをお伝えすると、何故か会頭にいきなり両手を握られましたわ…

そして何故か泣いていらっしゃいます…

ちょっと恐いですわ…


「貴女は女神だ…!!!」



・・・・・はい?


「本当に!本当に!ありがとうございます!

このご恩は決して忘れません!!!

貴女の条件は全てのみます!

そして開店準備を整え、王立学園創立祭の翌日に開店させます!!!

これで我がダンデライオン商会は益々発展していきますぞ!!!

全ては女神様の望むままに!!!」


「カサブランカ嬢!!!

本当にっ!本当に!ありがとうございます!!!」



「どっ…どういたしまして???」


親子揃って号泣なさっていますわ…

どなたか助けてくださいまし…



その後、わたくしは感激しているダンデライオン親子を宥めながら、契約の詳細を詰め、契約書を交わす日程を決めた後、応接室から退出し、そのままお邸からもお暇しました。


その足で商業ギルドに向かい、クレープとパンケーキの権利登録を行い、帰路に着きました。




………何だか今日は長い1日でしたわ。



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