第15話
おはようございます。
クロエ・カサブランカでございます。
本日は学年末試験の結果発表が行われる日です。
試験結果が貼り出されている中央ホールには、1学年の生徒が集まり、成績表をご覧になって一喜一憂なさっておいでです。
あ、わたくしの名前がありましたわ。
結果は…総合で61位ですか。
進級と、再試験の回避は確定しましたので、安心いたしましたわ。
各科目の順位も確認しますと、交換を使用した筆記試験全てと体術が合格ラインギリギリの90位。
マナーは…1位でしたわ。
マナーが全体の順位を上げたようですわね。
まぁ…これは仕方ありませんわ。
最低限、マナーの結果だけは残しておかなければ、王妃殿下に何を言われるか分かりませんもの。
無駄に王太子妃教育の時間を増やされても困りますし。
「えっ!?僕、薬草学基礎1位!?」
「やったじゃないか!しかも満点だぞ!おめでとう!」
ん?あれは、薬草学基礎の答案内容を交換したクラスメイトのダンデライオン様ですわ。
苦手な薬草学基礎が1位だったことで、総合10位に滑り込めたようですわね。
おめでとうございます。
「数学1位おめでとうございます!パンジー様!
時間が足りなかったあの試験を満点だなんて、素晴らしいですわ!」
「え…えぇ…?
信じられませんわ…」
こちらには数学1位のパンジー様。
事態が飲み込めないご様子で、呆然となさっています。
今回の試験では8名の方と答案内容を交換しましたので、あまり長居しますと心臓に良くありませんわね…
早々に退散しましーーーーーー
「ちょっと!何であたしが最下位なのよ!
こんなのおかしい!!!
きっと不正があったに違いないわ!!!」
ーーーーーょうと思ったらヒロインですわ。
入学試験、中間試験共に全科目わたくしとヒロインの答案内容が交換されたため、ヒロインはずっと学年1位の成績をキープしていました。
恐らく特に疑問も持たず、胡座をかき、ろくに勉強をしていなかったのではないでしょうか。
学年末試験もそのまま学年1位だと思っていたのでしょうが、今回はわたくしも再試験と進級がかかっておりましたので、筆記の8科目は全て合格ラインギリギリの方と答案内容を交換させていただきました。
えぇ。ヒロインと答案内容を交換すれば、確実に8科目全てで最下位となったでしょうし、再試験が確定するのは目に見えていましたもの。
貴重な春季休暇の時間を再試験になんて割きたくありませんわ。
一番下の最下位の所にあるヒロインの名前の欄を見てみますと、科目毎の順位も予想通り全て最下位ですわ。
筆記の8科目の最下位はご自分の実力ですし、体術の最下位は反則行為によるもの。
マナーの最下位は試験終了直前の騒動が要因で間違いないでしょう。(ダンスをしている所は見ておりませんので分かりませんが)
つまりは自業自得です。
「あたしが最下位だなんて…!
きっとクロエが権力を使って順位を操作したんだわ!!!」
いや。わたくしは何もしておりませんが。
全てあなたの自業自得では?
むしろ今まであなたが成績1位だった事には関与しておりましたが。
それにしても…転生者ヒロインは何がなんでもわたくしのせいにしたいご様子ですわねぇ…
めんど…げふんげふん…お相手なんてしたくありませんわ。
まぁ、入学セレモニー以降は認識阻害をかけておりますので、ヒロインがわたくしを見つけることは不可能ですわ。
「アンスリウム君!いい加減にしないか!
カサブランカ君は何もしていません!
全て君の実力と自業自得ではありませんか!!!」
おや?
数学のマグオート先生ですわ。
Sクラスの担当教師でもあります。
外見は焦茶色の髪に、モスグリーン色の瞳、眼鏡をかけた高身長イケメンさんですわ。
年齢はお若いですがとても優秀な先生で、普段は穏やかで優しく、生徒からの人気と人望がある先生ですの。
ここでマグオート先生が登場するとは、わたくし、とても意外で驚いております。
「オースティン先生…ひどぉい!
どぉしてそんなこと言うんですかぁ?」
先程とは打って変わって、自分の態度を注意しているマグオート先生に対して、涙目の上目遣いで、両手を組みながらあざとかわいく(と、思うのは人によると思いますが。)詰め寄るヒロイン。
………人が変わりすぎではありませんこと?
一瞬、どなたが話しているのか分かりませんでしたわ。
「アンスリウム君…いい加減、私を名前で呼ぶのは止めーーーーーーー」
まずい!
([魅了解除]!!!)
ふわぁっ
【オースティン・マグオートの魅了解除に成功しました。】
ヒロインが発動させた魅了に、マグオート先生がかかりそうになりましたが、間一髪食い止める事に成功いたしました。
「っ!…とにかく、婚約者でも無いのに名前で呼ばれるのは不快です!金輪際、やめてください!」
「そんなぁ…」
マグオート先生が不快さを隠しもせず、中央ホールから立ち去ってしまわれましたわ。
マグオート先生に拒絶されたヒロインが項垂れていると、王太子一行がヒロインに近づいてきました。
「マリナ。
毎度のことながらクロエは何もしていない。
みっともないからもう行こう。」
「…はい。レオン。」
ヒロインは項垂れながらも王太子の言う事に素直に頷き、そのまま攻略対象者達と一緒に中央ホールから去って行きました。
………てっきり、攻略対象者全員と親密になっていると思っておりましたが、どうやら温度差があるようですわね。
王太子はお互いに愛称呼びをするけれど、それだけ。
注意はするけれど、それだけ。
仲は良いのかもしれませんが、特に親密そうには見えませんでしたわ。
そして現時点では魅了にはかかっていないようです。
宰相令息は苦労人枠でしょうか?
去り際にヒロインが王太子の腕に絡みついたのをげんなりとした表情で見ていましたわね。
どちらかと言えばヒロインの事は快く思っていない様子。
当然ながら、現時点では魅了にかかっていません。
騎士団長令息は複雑そうな顔をしていましたわね。
それなりに仲が良かったのか攻略が進んでいたのか…体術のトーナメント戦の際は親密そうに見えました。
おそらくその後に何かあったのでしょう。
そうそう。体術の試験で使った小刀は、ヒロインが名目上はお守りとして渡した物だったようです。
体術の試験の次の日、先生方に呼び出されたヒロインが面談にて、あっさり白状していましたわ。
(失礼ではございますが、観察させていただきましたの。
体術とマナーの試験が安息日に行われましたので、次の日が振替休日でしたから。)
それが原因で一番落としたくなかった体術を、よりにもよって反則行為で失格になってしまったのですから、一気に気まずくなってしまった…とわたくしは推察いたします。
正直に言って、お守りとして受け取ったにせよ、使うと判断したのはご自分なのですから、最終的にはご自身にも責任はあると思いますが…
ヒロインの誘惑に勝てなかったというのならば、まだまだ未熟な部分があるという事なのではないでしょうか。
ついでに言いますと魅了にはかかっていません。
魔法師団長令息はかわいい系のヤンデレ枠という設定でしたが…前髪で顔が隠れていてほとんど見えませんでしたわ。
ですが、ヒロインを心配そうに見ている事は伝わって来ました。
ゲームでは、ご自分から人とあまり関わることなく成長していましたから、女性にも免疫がないという設定でしたが…現実も同じなのでしょうか?
ヒロインが初めて近くで接する女性であれば、魅了関係なしにコロっといきそうではなくて?
ついでに言いますと、魅了にはかかっていないようです。
生徒会顧問の攻略対象者…もう長いのでお名前で。ペチュニア先生は地理の担当教師でわたくし達Cクラスの授業も担当していますが、授業を受けている限り様子がおかしい事もありませんし、わたくし達生徒に対して平等に接しています。
そしてこちらも魅了にはかかっていません。
ヒロインは一体、誰狙いなのでしょう???
むしろ今の所誰とも親密度は高くなさそうですし、から回りしているのでしょうか???
いやいや、転生者なんだからもっと頑張ってよー。
今までの言動を見る限り、絶対にこのゲームのプレイ経験あるよね?
王太子限定でもっと魅了使っていこうよー。
その方が簡単に契約書を履行できるのにー。
あら。わたくしとしたことが。
つい本音が…失礼いたしました。ほほほ。
…まぁ、無理なら無理で構いません。
最終手段として、契約書を使う事は変わりませんから。
「共通語満点!?奇跡が!女神様ぁぁぁ!」
「あんなに苦手だった大陸史で1位…しかも満点だなんて…」
おっと。
わたくしもそろそろ退散しましょう。
おー危ない。




