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猫を助けたかっただけなのに  作者: めい


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13/32

第12話



おはようございます。

クロエ・カサブランカでございます。


本日は光の月12日、学年末試験3日目でございます。

本日は午前中に体術の試験、お昼休憩を挟みまして、午後からはマナーの試験がございます。


ただいまの時刻は午前9時。

体術の試験が始まります。


各々動きやすい服装に着替え、1学年の生徒全員が学園の訓練場に集合しております。

体術の先生より試験の概要と注意事項の説明を受けた後、自分の名前が記載されているトーナメント表を確認し、4つある試合コートの中から、そのトーナメント表が置かれているコートに移動します。



この試験、騎士を目指す方は優秀な成績を修めておきたい科目でございます。


王立学園には騎士科というコースはございませんが、2学年以降の履修科目は生徒自身で選択できますので、騎士を目指している方は剣術、馬術、戦術学等、より実践的な科目を選択される方が多くなります。

ただしそれらの科目の選択を希望する場合、この体術で優秀な成績を修めなくてはなりません。

基本がなっていなければ、より実践的なものを教えても意味がない、ということなのでしょうか。

まぁ憶測でしかございませんし、当事者ではないわたくしが四の五の言うのはお門違いでございますので、これ以上はやめましょう。


閑話休題。




体術の試験の内容は簡単でございます。

授業で習った体術で1対1のトーナメント戦を行います。

魔法や剣、暗器など、他の方法は一切使用出来ません。

使用した場合、反則行為とみなされ、たとえ試合に勝ったとしても失格となり、その時点で再試験が確定します。


なお、騎士を目指す方は毎日欠かさずトレーニングを行い、体格を大きくしたり、筋力を付けたりなさっていますので、体格の差があるとハンデになってしまいます。

それに身体の構造として、男性の方が筋肉がつきやすい方が多く、力が強い方が多い傾向にあります。

ですから、男女別、体格差等を考慮して最初のトーナメントが組まれています。

勝ち進んでいくと、最終的には体格差のある相手との対戦や男性対女性…なんてことにもなっていきますので、ここは早いうちに負けておいた方が目立ちませんし、得策でしょう。


1回戦で負けますと敗者トーナメントに回らなくてはなりません。

敗者トーナメントも体格差が無いように組まれますが、ここで負けてしまいますと再試験が確定してしまいますので、より緊張感が高まります。


1学年は120名ですから、30名が再試験を受けることになりますわね。


再試験の内容は、かなりの広さ(前世で言う東◯ドーム程の広さでしょうか)の学園の訓練場を、指定された時間内に10周走り切らなければならないという過酷なものです。

ズルをしようとしても、コース全体に先生方が配置されており、常に再試験者が身体強化魔法を使用する等の違反行為をしていないかチェックを行っているため、かないません。

ですので、皆さん最低限1回戦への意気込みがすごいですわ。

わたくしもこれに関しましては再試験は御免でございますので、最善を尽くしたいと思います。



「次の試合、クロエ・カサブランカ!アリス・マリーベール!前へ!」


さぁ、わたくしの名前が呼ばれましたわ。

コートに入り、お相手のご令嬢と2メートル程離れて向かい合わせに立ちます。



「試合時間は10分!

先に相手のダウンを取った方の勝利!

10分経っても勝敗が決しなければ、審判3名による判定によって決するものとする!

では、始め!」


「やー!」


主審の先生の合図と共に、お相手のご令嬢が、一生懸命声を上げてこちらにやってきます。


うーーーん…

可愛らしすぎて全然怖くありませんわ。

わたくしより少し身長が低めで、見た目は文学少女といった印象を受けるお相手が、両手を上げて構えていらっしゃいますが、手も足も震えています。

きっと、心根の優しいお方なのでしょう。

これは早く試合を終えてあげた方が良さそうですわね。


タタタッ…


「はっ!」


わたくしはすぐさま彼女と距離を詰め、お相手のお腹に右手でパンチします。


「ぐっ…」


ズザザザーーーーッ!


パンチは見事当たり、お相手が吹っ飛び、場外へ。

起き上がれないようです。


「勝者!クロエ・カサブランカ!」


主審の先生が試合終了を告げた後、お辞儀をしてコートを出ます。

ふぅ…何とか勝てましたわ…


毎日とはいきませんが、マイハウスが完成してからは、家の中でストレッチやヨガをしたり、湖畔をランニングしたりと運動していた甲斐がありましたわ。

湖畔の景色と綺麗な空気を堪能しながらランニングするのはとても気持ちが良いんですのよ。


「う…っ」


「マリーベール様、お手合わせありがとうございました。

お加減は大丈夫でしょうか?」


わたくしは対戦相手のご令嬢に挨拶をし、怪我の具合を確認しながら右手で握手を求めます。


「は…っはい…何とか…大丈夫ですわ……」


ご令嬢がわたくしの右手を握り返してくださったので引っ張って起こしましたら、よろよろとしながらもしっかりと立ち上がってくださいました。


「それは良うございました。

それでは、わたくしはこれで失礼いたしますわ。

ごきげんよう。」

([治癒(ヒール)])


ご令嬢に話しかけながらも、心の中で治癒(ヒール)を唱えます。


「あっあれっ?痛くな…い?

え、えぇ、ごきげんよう…」


ご令嬢は不思議そうなお顔をしながらもご挨拶を返してくださいましたので、わたくしはその場から立ち去ります。


ふぅ…これで再試験は回避できましたわ。

しかもお相手の方のお怪我も大したことなくて安心いたしました。


1回戦を無事に突破したことですし、受付に行って2回戦の辞退を申告いたしましょう。

別に敵対しているわけでもない方を殴るのは、いくら授業であっても趣味ではございませんの。


ん?あれは…


「はああああああっ!!!」


ガッ!


あら。ヒロインですわ。

結構激しいですわねぇ…


「勝者!マリナ・アンスリウム!」


「やったー!」


試合に勝ち、ヒロインは両手を上げてぴょんぴょん跳んで喜んでいますわ。

何か落としたようですが、気づかずにそのままどこかへ行ってしまいました。

お相手のご令嬢…え。ちょっと!

頭から血を流してますわよ!?


「大丈夫ですか!?

先生!!!大変ですわ!!!」


慌ててご令嬢にかけ寄り、審判を務めている先生を呼びます。


「どうした!?」


このコートで審判を務めている先生3名が駆けつけてくださいました。


「頭から出血なさっていますわ!」


「「「!!!?」」」


「急いで医務室へ運ぼう!誰か!担架を持ってきてくれ!!」

「受付でポーションもらってきます!」

「レモネード君!しっかりするんだ!!」


「うっ…」


先生方が必死に呼びかけますが、ご令嬢の顔色は悪く、意識も朦朧としていらっしゃるようです。

先生が受付でもらってきたポーションを傷口にかけますが、なんとか傷口が塞がった程度で、あまり効果が無さそうですわ。

ほどなくして担架が到着し、ご令嬢は医務室へ運ばれて行きました。



あれは………


「先生、あちらは…」


先程ヒロインが落としたものが、まだ試合コートに残されておりました。

わたくしは審判の1人であるクローバー先生を呼び、コートに残った物を指します。


「これは……!!

先生方、来てください!」


クローバー先生の声に2人の先生も駆けつけ、コートに残された物を確認されました。


「これは、小刀ですね。」

「確かに、レモネード君の傷口は殴打によるものではなく、刃物で切られたような裂傷でした。」

「アンスリウム君が使用したという事でしょうか。」


「恐らく、間違いないのではないでしょうか。

アンスリウム様が立ち去る前、この場で何かを落とされるのを目撃いたしましたわ。」


先生方が、コートに残された血が付いたままの小刀を見ながら、それぞれ見解を述べられています。

わたくしも先程お見かけした事を証言させていただきます。


「持ち物検査の時には何も持っていなかったが…

恐らく、隠し持っていて試合直前に仕込んだのだろう。

見抜けなかった我々の落ち度でもあるな…」

「そうですね…

そしてレモネード君が1日でも早く回復してくれる事を祈るばかりです。」

「とにかく、アンスリウム君は反則行為により失格ですね。

我々もきちんと報告して、処分を受けなければなりません。」

「君のおかげで早くレモネード君を医務室に運ぶ事が出来たよ。

ありがとう。」


そう言って先生方は体術の先生に事の顛末を報告し、こちらのコートの審判の先生が入れ替わり、試合が再開されました。


確かに、ヒロインの不正を見抜けなかった先生方にも落ち度はありますが、その後はポーションや担架の手配等、適切な対応を迅速にされていました。

あまり厳しい処分にならない事を祈っております。



わたくしはレモネード様の容態が気になりますので、医務室へ向かいます。



医務室に着き、先生にレモネード様のお見舞いに来た旨を伝えると、お休みになっているベッドを教えていただきました。


仕切りカーテンをそっと開け、様子を伺います。

ベッドでお休みになってはいますが、レモネード様の顔色は依然として悪く、傷口もまだ痛々しい状態です。



(いくら試験とはいえ、ご令嬢のお顔になんてことを…!

とりあえず大事に至らないように[治癒(ヒール)]!)


スゥッ…


治癒(ヒール)をかけると、傷口は跡形もなく綺麗に塞がり、顔色もみるみる内に良くなって参りました。


「えっ?痛く…ない?」


目を覚ましたレモネード様が不思議そうな表情で上半身を起こしました。

わたくしはすかさず声をかけます。


「良かった…気がつかれましたのね。

貴女は試合中におでこを切られて、意識を失われたのですよ。

他に痛い所はございませんの?」


「いえ…特には…もう大丈夫ですわ…」


焦茶色の瞳を瞬かせながら、レモネード様がお応えになりました。



「そうですか…

ですが、頭を怪我していらしたのです。

念の為に、もう少し安静にしていらした方がよろしいかと存じますわ。」


「えぇ…」


「ミーナ!」


「エレナ…?」


「大丈夫!?何があったの!?

あなた!ミーナに何をしたのよ!」


どうやらこちらのご令嬢のご友人が来てくださったようですわね。

ただ、わたくしが何かをしたと疑っていらっしゃるようです。

困りましたわ…


「ミーナ。違うわ。

こちらの方は助けてくださったの。

試合で当たったアンスリウム様に小刀でおでこを切りつけられてしまって…

でもこちらの方が治してくださったの。」


「わたくしはただ居合わせただけですわ。

ご友人がいらしたので、もう大丈夫そうですわね。

それでは、わたくしはこれで。」



「あっあのっ!!!」


レモネード様の容態も回復し、ご友人もいらっしゃいましたので、もうこちらに用はございませんわ。

立ち去ろうとしましたら、レモネード様に呼び止められました。



「…何か?」


「助けていただき、ありがとうございました。

わたくし、ミーナ・レモネードと申します。

お名前をお伺いしてもよろしくて?」


「…アリス・マリーベールと申します。

それでは、ごきげんよう。」



冷静を装いながらその場を立ち去ります。

しかし、名前を聞かれるとは…

とっさに認識阻害をかけおいて正解でしたわ。

レモネード様、嘘をついて申し訳ございません。

マリーベール様、勝手にお名前をお借りしてしまい、申し訳ございません。

そしてお2人のお怪我が大事に至りませんよう心から祈っておりますわ。


その後、受付に向かい体術の先生に2回戦辞退の申し出をし、無事に受理されました。



午後からはマナーの試験ですので、早めに昼食を摂って準備することにいたしましょう。


レストルームの個室に入り、鍵をかけます。


([転移(テレポート)])


シュンッ




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