第10話
おはようございます。
クロエ・カサブランカでございます。
本日は安息日。学園がお休みの日です。
王太子妃教育は学園入学前に終了し、今は王妃殿下にご招待頂いた時のみ王宮に出向き、お茶会と称した王太子妃教育の仕上げをしている段階でございます。
この度、隣国アクアシャイン皇国の皇太子殿下が御成婚され、2週間後に各国のトップを招いての盛大な挙式を予定しております。
フローレン王国からは国王陛下と王妃殿下がご招待され、3日前にお二方はご出発されたばかりです。
つまりは、1日お休みでございます!!!
久しぶりのお休みの日ですわ!
最近は学園の入学もあって忙しくしておりましたから、久しぶりにマイハウスに行けますの!
では早速ーーーーー
コンコンコン
ーーーーー嫌な予感がしますわ。
仕方ありません。
ベッドで横になり、体調が悪い振りをいたしましょう。
「…はい。」
「お嬢様、失礼いたします。」
「どうぞ…お入りになって…」
わたくしが体調が悪そうな弱々しい声で応じると、侍女のナーシャが部屋に入ってきました。
風邪を引いた振りをするとお医者様を呼ばれかねませんので、ここはひとつ、王太子妃教育の終了に向けての勉強と、学園入学が重なって疲れが出たために体調が思わしくないという事にいたしましょう。
「お嬢様、具合がお悪いのですか?」
「えぇ…ちょっと…体調が思わしくありませんの…
学園の入学など色々と重なったからかしら…」
「最近、色々と立て込んでお忙しかったからでしょうか…お疲れが出たのでしょう。
朝食は召し上がれそうですか?」
少しの量を体調悪そうに頂く自信はありません…
心配してくれているナーシャに申し訳ない気持ちでいっぱいです。
それでも嫌な予感が拭えない今はこのまま嘘をつく事にいたします。
ナーシャ、嘘ついてごめんなさい。
「…申し訳ないけれど……食欲はないわ……
それより…ナーシャ…わたくしに…何か御用があったのではなくて…?」
わたくしが用件を尋ねると、ナーシャが申し訳なさそうに口を開きました。
「…実は、王太子殿下がいらっしゃってまして…
今応接室でお待ちいただいております。」
「こんな時間に…?
一体何の御用かしら…?」
ちなみに現在朝7時でございます。
休みの日の朝早くから一体何の御用でしょうか?
ちなみに何のお約束もしておりません。
したくもありませんが。
「お嬢様と1日デートをなさりたいので、お迎えに来たとのことでした。
ですが、お嬢様が体調を崩されている旨をお伝えいたしますので、お嬢様はどうぞごゆっくりお休みくださいませ。」
それは何の罰ゲームでしょうか?
バカ王子と1日デートだなんて、わたくしにとっては罰ゲーム以外の何物でもございません。
ここはナーシャに甘えることにいたしましょう。
「何のお約束もしていないのに…困りますわ…
ナーシャ…申し訳ないけれど…お願いね…
あなたにはいつも…迷惑をかけるわね…」
嘘をついていることも気持ちにのせて、ナーシャに謝罪しました。
「そんな!お嬢様!とんでもございません!
悪いのは約束もしていないのに急に来る王太子殿下でございます!
お嬢様の体調が思わしくない事もお伝えして、お帰りいただきますよう“しっかりと”勤めを果たします!」
何故か途中でものすごい圧を感じましたが気にしない事にいたしましょう。
わたくしは力弱い笑みを浮かべながらナーシャに弱々しい声で感謝の気持ちを伝えます。
「ナーシャ…いつもありがとう…
よろしく…お願いね…」
「お任せくださいませ!
何か必要な物がございましたらお持ちしますが、いかがなさいますか?」
「いいえ…今は結構よ…ありがとう…」
「では、何かございましたらいつでもお呼びくださいませ。
王太子殿下には必ずお帰りいただきますので、お嬢様はごゆっくりお休みください。
それでは、失礼いたします。」
パタン
ナーシャが部屋を出て行ったことを確認し、ベッドから出ました。
…ふぅ。
ナーシャ、嘘ついて本当にごめんね。
いつもありがとう。
それにしても嫌な予感が的中しましたわ。
バカ王子と1日デートだなんて、罰ゲームでしかございません。
体調が良くない振りをして正解でしたわね。
それでは、マイハウスに行きましょう!
[転移]
シュンッ
スタッ
マイハウスの玄関に着地しました。
靴を脱いで、リビングに移動します。
念のために、カサブランカ公爵家の自室の前の様子を監視するモニターを表示させておきましょう。
体調が悪いと言ってベッドで静養しているはずのわたくしがいなくなったとなれば、ナーシャが邸の者に報告してしまいかねません。
ナーシャはきっとわたくしを心配して、そして職務として報告をするのでしょうが…その報告を受けた者がどうするかまでは、はっきりとは読めません。
そこまで邸の人間と深く関わる事がありませんから。
ナーシャは、わたくしが5歳の時に専属となった侍女でございます。
それまでのわたくしは、日替わりで使用人が付いていましたが、皆子守が好きではないようで、食事を持ってくるくらいの必要最低限の扱いしか受けていませんでした。
ナーシャは当時16歳、貧乏な男爵家の六女のため、家計を助かるためにカサブランカ公爵家の使用人として就職したばかりでした。
(それまでは家事を手伝っていたそうです。)
半ば押し付けられるようにわたくしの専属侍女となり、新入りの立場では逆らえなかったのでしょう。
それでも、きちんとわたくしを気にかけてくれる点は他の使用人とは違います。
しかし、ナーシャは近々他国に嫁ぐ事が決まりました。
1年程前、隣国アクアシャイン皇国の大使が、外務大臣をしているカサブランカ公爵家を訪問された際、ナーシャに一目惚れし、公爵に婚姻の打診をされたとか。
ナーシャは今年26歳、前世でいえばまだまだ若い年齢ですが、この世界では行き遅れの年齢です。
本人は断りたかったようですが、公爵からの命令のため、断ることが出来ず、婚姻がまとまりました。
その後何度かデートを重ね、お話をするうちに、お相手の誠実さにナーシャも惹かれたそうで、今では相思相愛のようです。
わたくしもナーシャから話を聞いて、どのような方かを観察してみましたが、優しいけれど仕事もきちんと熟す誠実な方とお見受けしました。
年齢も28歳とナーシャの年齢に近い所も、ナーシャが気後れせず接する事が出来そうで、よろしいのではないかと思います。
きっとナーシャを幸せにしてくださる事でしょう。
ひと月後、ナーシャが旅立つ日に、わたくしもこのマイハウスに拠点を置こうかと考えております。
マイハウスにいる間は今のようにカサブランカ公爵家の自室の前を監視するモニターを表示しておき、何かあればすぐに自室に転移をすれば良いかと。
もしかしたら、ナーシャが辞めれば次の専属侍女は配属されないかもしれませんが…それならそれで好都合ですわ。
閑話休題。
6歳のあの日に、この家を建てるために動き出して9年が経ちました。
王太子妃教育の合間を縫って頻繁にここに転移し、コツコツと作業を進めて参りました。
家の建築は大変でしたが、先日、なんとか完成いたしましたの!
そして、今日は家具を買おうと思います!
とっても、楽しみにしていましたの!
自分が好きな家具を思いっきり買いますわ!
「[ネットショッピング]」
ヴォン
音と共に監視用とは別のモニターが表示されます。
【ショッピングサイト】
サイトを選択してください
・ハマゾン
・ニオン
・コトリ
・オケア
・ユメリ
・ヘブンクレブン
・ノーソン
・ソレリーマート
・ミニマムバリュ
・ドラッグストアムリ
・タケモトキヨス
・オニクロ
・その他の店舗を検索
まずはコトリをチェック。
それからオケアを見ましょう。
ちなみに、わたくしの前世の家の家具はほぼほぼ◯トリでございました。
だってお手頃価格で趣味も合ったんですもの。
◯ケアも好きでしたが、近くに店舗が無かったため、残念ながら気軽に買えませんでしたの。
あ、ちなみにわたくし、前世からネットショッピングは好きでしたが、実物を確認してから買う派でございまして、欲しいものがあった場合、実際に店舗に足を運び、見本や展示物で実物を確認し、家具ならば家のどこに置くか、用途がはっきりしているか、服ならば今持っている服とどうコーディネートできるか…なども踏まえて考え、大丈夫そうなら購入するタイプでございます。
ちなみに家具ならば設置したいと考えている場所と、大きい物ならば玄関や部屋のドアの大きさも採寸、カーテンならば設置したい箇所のカーテンレールを基準に採寸し、カーテンレールの仕様と一緒にスマホにメモをしてお店に行っておりました。
その方が店員さんに相談する際、困らせなくて済みましたし、設置の際、入り口が狭くて部屋に入れられない、設置してもサイズが合わなくて困る…という事もありませんでしたので、採寸とメモはおすすめですわ。
しかし、ここは異世界。
実際の店舗に行く事は出来ません。
ですから、VRでサイズ感や色、デザインなどを確認するしかなさそうですわ。
素材感を確認できないのは痛い所ではございますが、そこは仕方ありません。
あら、このベッド素敵ですわね。
お気に入り登録をしておきましょう。
ベッドメイクは大きめのクッションを2つと枕も2つ…カバーの色は白を基調として揃えたいですわ。
シーツと布団カバーも白で揃えて、掛け布団とマットレスも選んで…
寝室に移動してこの組み合わせをVRで確認してみましょう。
「[VR]」
ヴォン
音と共に選択した商品がコーディネートされた状態の立体映像が現れました。
おぉー!出ました!
これでサイズ感も確認できますわね!
ベッドはここに置きたいので、そうすると…
うん。サイズも良い感じですわ。
サイドテーブルとライトは…
そうして全ての家具、家電、雑貨を購入し、設置も終えることが出来ました。
今からここに住み始めても支障ありませんわ。
時間を確認すると午後6時。
食事をはさんではいましたが、どうやら夢中でお買い物と購入した物の設置をしていたようです。
…楽しい時間はあっという間ですわね。
残念ですが、もう公爵邸に戻らなくては。
「[転移]」
シュンッ
名残惜しさを感じつつ、もう少しの辛抱と自分に言い聞かせて、わたくしは公爵家の自室に戻りました。




