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第11話 灯台(前編)




美しい世界樹の居所。世界樹はこの星の核を支える、このエルフの森にしか生えない大樹。

この居所は、代替わりしたかつての世界樹。 樹皮の壁には宝石がひしめき、帰宅者たちを騒がしく迎える。


窓から見える夜の森は、静かだった。

昼間の綻びの余韻はまだ、微かに残っている。

だが夜空は、何事もなかったかのように澄んでいた。

フカフカとした絨毯が敷かれた廊下を歩きながら、メディウムが呟く。


「私の部屋でいいかしら?」

「え!?」

「ぃや、それは……その」

「メディねぇちゃんトコ、お泊まりっ?」


ぎょっとするアルマ。

リューセイは口籠もり、少しだけ頬を染め。

ルチェだけが嬉しそうにはしゃぐ。


「おにいちゃんも?」

「!」


握っていたリューセイの手を両手で掴み。

キラキラとした、琥珀色の瞳を輝かせて小首を傾げ見上げるルチェ。

琥珀色のその瞳は。

期待に満ち満ちている。


「…………」


一瞬、息を詰める。

横からアルマの、「断れオーラ」が流れてきている。

リューセイとしても、女性の部屋に入るのは……少し、抵抗がある。

だが。

だがしかし。

ルチェがキラキラの瞳で、下から見上げてくる。

深く、深く息を吐く。


「……………………構わない、が」


随分黙してから。

やっと出た言葉だった。






世界樹の居所は、代替わりし役目を終えた世界樹であっても、その場所は不思議に満ちている。

木の幹に、まるで競い合うかのように、そこかしこに宝石が芽生えて煌めき。

掃除などしなくとも、埃一つ落ちていない、清浄で清潔な空間を保っていた。

更に、迷路のように広がる廊下は。

思っただけで、さして歩く事もなく、目的の場所まで、連れて行ってくれる。

もちろん、許可がないと入れない、行けない場所もある。

また、意図しない場所に繋がったりする事も、たまにある。

随分お茶目な世界樹だった。

今は眠っている、王の気質が強いのかもしれない。


難なくメディウムの部屋にたどり着いた四人。

案内されたのは、メディウムの自室……の隣にある、客室だった。

ほっ、と知らずと胸を撫で下ろすリューセイとアルマ。

夕食を取り各々身支度を済ませてから。

そこに集まった。


客室にある、子供には広すぎる、ベッドの上。

ラフな格好で、座ったり寝転んだりしながら、四人顔を突き合わせる。

メディウムがさり気なく、リューセイとアルマが隣同士にならないよう、間に腰掛け。

深く息を吐き、静かな声で呟いた。


「……さて。それじゃあ、説明してもらおうかしら」


アルマがちらり、とリューセイを見る。

リューセイは静かに、窓の外を見ていた。


ルチェはベッドに寝転んだまま、宝石のついたブレスレットをじっと見ている。

一つ息を吐いて、メディウムが続けた。


「森であった事。それと」


言葉を切って、リューセイを見る。

——静かすぎる、雰囲気を纏う少年。

まるで何かを、「隠している者の静けさ」のような。


「あなた」


リューセイは視線を動かさない。


「……なんだ」

「とぼけるの?」


メディウムが少し笑う。

それにアルマが口を挟んだ。


「さっきの異変。お前、わかってたんだろ」


沈黙。

リューセイは少しだけ息を吐いた。


「……まあな」


メディウムの目が細くなる。


「それに……お前、何かしただろ?」


アルマはさらに踏み込む。

その言葉で、空気が少し変わった。

ルチェが嬉しそうに顔を上げる。


「なおした!」


リューセイはアルマを見る。

大地色の瞳の光が、強い。

まるでこちらを、射抜こうとでもしているかのように。

静かに見返してーーそして、ため息を吐いてから肩をすくめた。


「……少しだけだ」

「少し?」

「完全には、直していない」

「……」


メディウムが眉を上げる。

アルマが小さく笑った。


「やっぱりな」


メディウムが口元に手をやり、ふと考えてから告げた。


「ちょっと待って。ーー直したって、何?」


それに妙な確信を持って、アルマが答える。


「さっきのーー振動? 地震、か? それを、此奴は直せるんだろ」

「……え? ど、どういう事?!」


驚いたメディウムは、口を押さえながら、そっと周囲を見回して。

頭を抱えて呟く。


「ちょっと……情報量が多い」

「……俺にもまだ、よくはわからない」


リューセイが呟く。


「だが……、たぶん血筋が、関係している、と、思う」

「血筋?」


メディウムの赤瞳から、リューセイは少しだけ視線を逸らし。

所在なさげに、ソワソワとする。


「......俺も…………、王族だ」

「王族?」


メディウムの瞳が、わずかに見開かれる。

アルマがニヤリと呟いた。


「やっぱりな」

「やっぱりって、何よ」


メディウムの視線に、アルマはふふんと腕を組む。


「黒髪黒目。しかも監視付き。どう考えても普通じゃねえだろ。メディウム姉だって、本当は。わかってんだろ」


リューセイは何も言わない。

メディウムは、しばらく考え込む素振りをした。

もしかして、とは。思っていた。

自分たちも、色々言われてはいるけれど。

居所(ここ)で。

「彼」は、あまりにも有名すぎる。


黒髪黒目。エルフにもいない訳じゃない。

だが、王族が住まう世界樹の居所。

そこに難なく入れる者は、限られている。


ハイエルフ女王アスティルと。

ピアノ弾きで人族の男性。


その間に生まれた子供。

黒髪黒目。エルフの耳を持つ、少年。

丁度ーー、目の前の彼と、年齢も同じくらいだろうか。


上層部で、もっぱら噂のその人物。

「隠された王子」。


「……じゃあ、本当にあなたが……」


息を継ぎ、ゆっくりと言葉にする。


「ーー「隠された王子」」


リューセイは少し考え、ため息混じりに言った。


「……なんだ、それは」


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