表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

7話 腐女子、初めての地雷トークします

 今日も今日とて、BL本に目を通す。

 今見てるのは、最近見始めたエルフ×獣人の他種族感のラブロマンスだ。

 ちなみに一週間前から何故か恩返しと言って、雑用をしてくれるニルスくんのおかげで、私は朝から昼までずーと本を手放していない。


 目の前に人がいる状態で読むのはTPOに欠けるかもしれないが、致し方がない。

 だって、それ以外私はここに転生してからやってないんだから。

 今さら人に気遣って本を読まないとか、目を見て話すとか、無理に決まってる。私の人生=BL本を読む。これがもう魂レベルで刻まれてしまっている気さえする。


 それに、この共同生活は私が許可したと言うよりかは、返事に迷っていたら何故か表情を明るくして「頑張ります!」と言われてしまい断れなくなったから始まったものだ。

 だからこそ、こうやって静かにBL本を嗜むくらい許されていいだろう。


 ちなみに言っておくが、前世の私はBL本を読んでいるとニヤけたり、奇声を発したりしていたが今は違う。

 年の功か、スキルのおかげか、私はそれこそはたから見たら気難しい本でも読んでいるような落ち着いた表情をしているはずだ。


 私が持っている普通のスキルは【暗記】【孤独耐性】【凪の精神】【仮面】で、【凪の精神】がオートで普段から精神統一ができるスキル。  

 そして、【仮面】は好きな表情でいられるというスキル。人見知りで無愛想な私には人と関わる上で一番必要不可欠なスキルだ。


 これのせいで、ニルスくんに偶に微笑みで無言の了承をしたと思われるのは困りものだが、それを差し置いても有用だ。

 これらのおかげで、私はニルスくんに腐バレすることなく穏やかに過ごしていられる。


「今日はどんな本を読んでいるんですか?」


 食器が洗い終わったニルスが私の本の中身を見ようと顔を寄せる。

 最初やられたときは死ぬかと思ったが大丈夫だ。


「んん…やっぱ僕には読めません…こんなに難しい本を読めるなんて流石ですね」


 そう、私の特殊スキル【秘密の書庫】から出した本は私以外には誰にも読めないのだ。

 それが漫画だとしてもニルスくんには入り組んだ記号や魔法陣の羅列に見えるらしい。


 本当にケチのつけようがない最高のスキルだ。


 最初はニルスくんにR18指定のBL本を読んでいる変態だと思われていると思っていたが、そうではなかったことに気づいた時はどれだけホッとしたことか。


 それに、ここ一週間で少し懐いてくれているようで、ニルスくんの警戒心も薄れている。

 本当に良かった。


「……フェリアスさんは毎日こうやって過ごしていたんですか?」


 その問いに頷く。

 その通りで私はこんな最高の生活を二百年間出来ている幸せ者だ。


「一体何をそこまで勉強なさっているのです?」


 勉強?と思ったが、ニルスくんからしたら確かに毎日難しい本を読み耽って勉強しているように見えるのかもしれない。


「……今は他種族間の共生についての本を拝読しています」


 エルフ×獣人の純愛ラブストーリーとは言わない。私は趣味を押し付ける厄介腐女子ではないのだ。


「…………他種族間の共生…」


 ニルスくんがいきなり本を見つめてきた。

 まさか…ニルスくんも他種間の恋愛について興味があるのだろうか?


「……他種族間の共生なんて…綺麗事ですよ」


 吐き捨てるように言い放つその表情は苦しみが滲んでいる。

 これは、間違いない…興味があるんじゃなくて地雷なんだ。


 これは大変なことになってしまった。腐女子歴二百年以上の私だが、今世も前世も含め地雷による静かなる戦いはしたことがない。

 何故なら語り合う友人なんて一人もいなかったからだ。


「そうかも知れませんね。私はだからこそ興味深いとも思いますが」


 取り敢えず相手の意見を尊重し、さらに自分の意見も軽く添えてみた。私は他種族間BLが大好物だし、ニルスくんに賛同まではできない。

 しかし、これなら地雷を踏むこともないだろう。


「……っどこが?他種族と分かり合うなんて不可能です…」


 憤慨するようにニルスは肩を震わせた。

 これは思ったよりも大きな地雷らしい。

 グラマリアだと本当にエルフもいるし、多分獣人もいる。前世よりもシビアなのだろうか?


「難しいからこそ、考えることをやめてはいけないんです」


 私は文化の違いのせいで起こる、切ないすれ違いは大好物だったりする。最初のすれ違いを乗り越えるために考えて二人がどんどん愛し合っていくのが尊い。


「っ…考えたってどうにかなるわけない!!!!」


 ニルスは興奮した様子で机に身を乗り出した後、ハッとして俯く。


「すみません……」


 その後すぐに絞り出すように言った。


 ふむ…この様子から見てかなり他種間のBLはかなり地雷らしい…もしかしたら凄い地雷作品でもあったのだろうか?


「ニルスくんあなたが見たものはなんですか?」


「っ…………!」


 私の問いかけに振り返ったニルスくんは涙を溢れさせていた。

 流石にここまで地雷BLの話で感情的になるとは思えない。


 そこまで地雷なBL本があったのかな…?ん…待って…?…………これニルスくんからしたらBL本の話じゃなかったりする…?


 私はBL本の話しかしていないが、ニルスくんはこの本を壮大な歴史書と捉えられている可能性すらあるのだ。

 初めての地雷話にすっかりそのことが頭から抜けていた。


「あなたは…何者なんですか……」


 これは…特大地雷の冷戦どころでは済まない。

 しゃくり上げながら落ちる涙はさっきまでの温和な雰囲気を霧散させるには十分だ。


 どうしようか、困ってしまった。こういう時なんて言えばいいのか全くわからない。


「……フェリアスさんは…どこまでも見透かしているんですね…」


 いや何も見透かしてないけど…。


 言葉に迷っていると、ニルスくんがどこか諦めがついたように笑った。

 

 まぁ、喋らずに済むならそれでいい。これ以上話せば地雷を深ぼってしまいそうだし…。


「隠すのはやめにします…。もう知られているかも知れませんが、僕はここからすぐ近くのエルフの村のエルフです」


 いや全然知らないけど。

 ここの近くにエルフの村があること自体初耳だ。


「ご存知の通り僕の村は人間によって破壊されて…住民も何人か連れ去られてしまい、今は他の拠点で暮らしていました」


 いや全然ご存知じゃないけど。


「そして………っ役立たずな自分が嫌になり…家を出て彷徨っていました…」


 一通りツッコみたいことは沢山あるが、表情を変えずにただ頷く。


 まさか…そんな大変な思いをしていたとは全く思わなかった…。

 確かによく考えてみれば、子供一人で餓死しかけていたのだから、何か重大な理由があるはずだった。


 にしても…人間がエルフを連れ去って村を破壊…

 この世界、グラマリアはファンタジーの中でもかなりシビアな世界なのかもしれない。


 二百年住んでるが外については全くの無知のため、何でそんなことを人間がしたのか想像もつかない。

 BL本ならエルフの密猟なり、森の無理矢理な開拓なりが理由としてよくあると思うが、もし後者なら私のこの家も壊されてしまうのだろうか?


 それは駄目だ…BL本を静かな小屋の中で読む生活が終わってしまうのは耐え難い。


 話を聞く必要があるね…これは。

主人公は知性はあるんです、本当に。ただ人と対話するのが絶望的に下手で、脳みそが腐ってるだけで…。



最後まで見てくれてありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ