10話 腐女子、エルフの隠れ家に突撃!
「じゃ、じゃあ付いてきてください」
コクリと頷いて、少し元気が戻ったニルスくんのあとに続く。
ガサガサっ
その時、草むらから音がした。
動物でもいるのかと思って一瞬目線を向けるが、また小鳥みたいに動物が飛び出してくることはない。
「どうかしましたか?」
「…いいえ」
気の所為かな…まぁ襲ってくる魔物とかじゃないなら別に何でもいいか。
首を振ると、今度こそ洞窟の中へと歩いた。
ニルスくんの後ろについて、足音がカツカツ響く洞窟内に入る。
洞窟の中は薄暗く、極端に真っ直ぐか入り組んでいるかのどちらかで、ニルスくんがいなければ迷子になっていただろう。
「おかしい…」
何度か曲がり角を曲がった後に、怪訝そうにニルスくんが呟いた。
首を傾げれば、洞窟の奥を指差す。
「生活音がしないんです…普段であれば足音がするはずなのに」
音…エルフは耳がいいのだろうか?
長い耳をピクピク動かしながら音を感じ取ろうとするニルスくんの後ろ姿をじっと見つめる。
やっぱ可愛いなこの子。
「っ…息が荒い」
一瞬自分の肩が震える。
決して可愛いからって息が荒くなったりはしていない!そんな犯罪者一歩手前な感じではない!
弁明する為に流石に重い口を開く。
「ちがっ」
「みんなの息が荒いっ!!フェリアスさんすみません、急ぎましょう!」
「……あ、はい」
青ざめ、立ち上がり、恐怖か混乱かのせいで私でもわかるくらい息を荒くしながら走るニルスくんの後を私もついて行く。
良かった、私じゃなかった…。
ま、まぁ?私じゃないことは分かってたけどね…?
考え事をしていると、距離が離されていく。
このままでは迷子になると思って、走ることに集中してもそれは変わらなかった。
「みんなっ!!」
木の実が蓄えられているカゴがポツポツと等間隔で置かれた場所を越えると、先に曲がり角を曲がったニルスくんが叫ぶ。
少しして追いつくと、そこには入院室に並べられた患者のように、場所を取らないため整列して魘されて横になっている、老若男女のエルフ達がいた。
一応柔らかそうな毛皮が敷かれているが、足元は硬い岩の為寝心地が悪そうだ。
「父さんっ!母さん!!!」
ニルスくんがエフルの中でも1段だけ華美な服装の二人へ近付くと、体を揺する。
返事は無く、辛そうに熱い息を不規則に吐き出し続けている。
取り敢えず鑑定してみるかな…
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個体名 エルダー・エルフ
名前 カプト・オーフェル
状態異常 魔力錯乱(大)
レベル | 37/50
魔力 | C
攻撃力 | E+
体力 | C
知力 | D
特殊スキル
【エルフ族固有魔法】レベル1
常備スキル
【グラマリア言語】レベルMax【毒耐性】レベル3【混乱耐性】レベル2【麻痺耐性】レベル2
スキル
【植物魔法】レベル4【水魔法】レベル2【射撃】レベル4【共鳴】レベル2【魔法付与】レベル4
称号
【村長】
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ニルスくんが父さんと呼ぶtheエルフという身なりの大人びた美しい顔の金髪長髪の男の人に鑑定を掛けると、状態異常には魔力錯乱と書かれている。
「魔力錯乱のようですね」
自分で言うがそれの意味はよく分からない。話しながらも、もう一度魔力錯乱に鑑定を掛けた。
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魔力錯乱
魔力が乱れ暴走している状態。
体が魔力の乱れに耐えきれず全身が痛み、気絶、発熱、を起こす。酷い場合は死も有り得る。
しかし、最長でも三日程度で自然治癒する場合が多い。
また、乱れた魔力を一度一定量抜き出せば収まる。
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わぁ…やばぁ…。
「魔力錯乱…!!そんな…っ」
ニルスくんが絶望したように肩を震わせて、母親に抱きつく。
他のエルフも鑑定したが、状態異常はみんな魔力錯乱だった。
病気というよりも状態異常だし、伝染するとかないと思う。それなのにみんなが同じってことは、人為的としか思えない…。
となれば、考えられるのは奴隷商だろう。
隠れ家の場所がバレて、今度は逃げられない為に何かしらの方法で魔力錯乱を起こさせた。そんな筋書きが頭のなかで出来上がる。
これはまずい…場所がバレているなら、エルフが動けなくなった頃を見計らって来るだろう。
それに、この状態になってどのくらい経ったかは分からないが、少なくともみんな重症になるくらいは時間が経っているのは確かだ。
一日くらい経ってるとして、そろそろ来ててもおかしくないよね…。ていうか…あの草むらの物音は奴隷商だった可能性ある…?
「うっ……う…」
ニルスくんの押し殺しても漏れ出る声だけが洞窟内に反響する。
「僕が…僕がもっと早く帰ってきていれば…」
「ピッ?」
悲哀のムードには似合わない小鳥の声が耳元で聞こえる。
視線を向ければ、まだコレクトル・バードが我が物顔で私の頬を突いた。
…コレクトル・バードって魔力吸い取れるんだよね?
これ……どうにかなるかも。
早くこの場から逃げたいが、エルフの隠れ家に入ってきた見知らぬ人間を警戒してまだ洞窟の外に奴隷商が潜んでいるとして、その時私は抵抗虚しく捕まることが目に見えている。
なら、早くここにいるエルフを治してしまったほうがどうにかなりそうだ。
「君…このエルフたちから魔力を吸い出せますか?」
「ピッ」
スキル欄に【グラマリア言語】と書かれていたし、言葉の意味は理解できるはずだ。
後は言うことを聞いてくれるかだが…
「ピッ!!」
小鳥はニルスくんの父親の頭のうえに乗ると、額をつつきはじめた。
………うん…多分…魔力吸い出してくれてるんだよね…?
「な、何するんだ!」
私が小鳥にお願いしていたのが聞こえていなかったのか、ニルスくんが焦って父親の側に寄った。
「大丈夫です」
しかし、私が声をかければ払いのけようとしていた手を止めて、私を見つめる。
「魔力錯乱を治すために魔力を吸い出してくれているんです」
多分。
心の中で付け加える。
ちゃんと通じているかは半信半疑なのだ。
でもこのまま終わりを待つよりかは、この子に任せたほうが良いだろう。
と、思いつつ一応鑑定で様子は見続けている。
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個体名 エルダー・エルフ
名前 カプト・オーフェル
状態異常 魔力錯乱(小)
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うんうん、大から小になってるしいい感じ。
それからもう少し額をつつくと「ピッ…」と疲労し、体が重そうな様子で小鳥が私の肩に戻った。
少し重みが増して、熱を放っているように感じる。
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個体名 コレクトル・バード
名前 ???
状態異常 満腹(大)
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鑑定してみれば満腹(大)になっている。
どうやら魔力を吸いすぎて苦しいらしい。
爆死しないよね…?
しかし、ニルスくんの父親の方は魔力錯乱が消えているし、発熱し赤くなっていた顔色も良くなっている。
「ありがとうございます、小鳥さん」
「ピッ!」
お礼を言うと小鳥は自慢げに羽を広げた。
「っ……ニルス」
「父さんっ!!!」
一方、ニルスくんの父親ことカプトさんも目覚めたようでまだ怠そうな頭を押さえてニルスくんを片手で抱きしめた。
「無事だったか…」
「うん、父さん…大丈夫?」
「あぁ…何故かはわからないが、体調が良くなったようだ」
上半身を起こし、他のエルフ達の様子を確認しようでしたカプトさんと目が合う。
カプトさんは一瞬固まった後に、ニルスくんを自分の後に引っ張ると私を睨んだ。
「…奴隷商ではないようですが、どなたでしょうか」
思ったよりも声色は刺々しくない。
目覚めた後に問答無用で殺されないか少し心配だったが、そこは大丈夫のようだ。
「父さん!この人はフェリアスさん、僕を助けてくれて、父さんも今助けてくれたんだ!」
ニルスくんが全部説明してくれたので、取り敢えず微笑を浮かべる。
詳細を言えば私ではなくこの小鳥が助けたのだが、細かいこと説明はしない。
やっぱり子供よりも大人の方が緊張する。どもってしまわないか心配だからだ。
「愚息共々助けて頂き感謝します」
カプトさんは一瞬ニルスくんに目線を向けた後に頭を下げた。
まだ警戒はしているようだが、敵意は減った。
まぁ、このくらいなら大丈夫かな、そんなことよりも早くこの後のことを話し合いたいしね。
最後まで読んでくださりありがとうございました!




