9話 腐女子は小鳥に懐かれました
「フェリアスさん、こっちです」
先導するニルスくんに私は大人しくついて行く。
早速ニルスくんの村の人たちが今隠れている場所に行くことになったのだ。
作戦を立てるにしても信頼を築かないといけないし、奴隷商の奴らがいつそこを突き止めるかもわからない以上、善は急げだ。
しかし、小屋からは離れるのすら初めてな私は数分歩いただけで息を切らしてしまう。
それに比べてニルスくんは汗一つかいていない。
ニルスくん体力ありすぎじゃない…?これが体力Fと体力Eの差……
なんかもう駄目な気がする。森を舐めていた…。
さらに最悪なことに、常時発動の【仮面】スキルのせいで顔色で疲れていることに気づいてもらえない。
【仮面】は表情を相手にわかりにくくする効果もあるようだ。
ニルスくんとの距離が2メートル超えたくらいで、私は足を止めた。
もう限界だ。
「ニルスくん、止まってください」
「どうかしましたか?」
どうかしましたか?じゃないのよ、私こう見えて今喉から血の味するくらい疲れてるんだからね。
なんて文句言えるわけなくただ微笑んでみる。
この微笑みに特に理由はない。
ただコミュ障故に言葉が喉で突っかかったから誤魔化しただけだ。
「……?」
流石にニルスくんもこの行動にはいつもの深読みをしてくれることはない。
気まずいな……。
息を整えながらそう思った瞬間、ニルスくんの前の茂みが揺れる。そして、何か小さな生き物がそこから飛び出した。
「わっ…!!」
目の前にいたニルスくんは、驚いたようで身を翻す。
しかし、飛び出してきたものはそれに興味がないようで、私にまっすぐと向かってくる。
そして、私の肩に止まると「ピッ」と鳴いた。
それは、日本ではメジャーなペットの文鳥に似た鳥だ。
真っ白な羽毛に包まれていて、文鳥よりも少しふっくらと太っている。
「それは…!!」
ニルスくんが瞳孔を細めて鳥を睨んだ。
もしかしたら、こんな身なりで凶悪なモンスターなのかもしれない。
一応【鑑定】しとこ…
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個体名 コレクトル・バード
名前 ???
状態異常 満腹(中)
レベル | 22
魔力 | F+
攻撃力 | F
体力 | C-
知力 | C-
特殊スキル
【コレクト】レベル1
常備スキル
【グラマリア言語】レベル4【孤独耐性】レベルMax【満腹耐性】レベルMax
スキル
【マナドレイン】レベル4【隠密】レベル9
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おお?おお…、んー?
いまいち強さがわからないな…。
でも少なくとも私よりかは強い。この小鳥と戦ったら私は負けるらしい。
しかし、小鳥に敵意は全く感じない。なんなら友好的に「ピッピッ!」と甘えた声で鳴いている。
逸れ鳥…?
「フェリアスさん…っ流石のあなたでも危険です!!」
私が小鳥の頭をグリグリ撫でていると、ニルスくんが大声を上げた。
私が森にいた年数が多かったとしても、この森のことを深く知っているのは確実にニルスくんだ。
そのニルスくんが顔を青ざめていることからして、随分危険なモンスターなのかもしれない。
私は手で刺激しないように払おうとしたが、逆に小鳥は私の指に乗り移り「ピッ!」と鳴いた。
これじゃあ戯れているだけだ。
「っ……大丈夫なんですか?」
後退りたいのだろう、足が震えている。
それなのに私の心配をして、ニルスくんは一歩前に出た。
確かにステータスは私よりも高いが、恐怖心はない。スキル【凪の精神】のお陰だろうか?
「ええ、大丈夫そうです」
そう微笑を作ると「ピッ!」と返事するように小鳥が鳴いた。
それでもニルスくんの警戒は収まらない。
一応詳しく【鑑定】しておこうかな…
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詳細
古代に繁栄した魔物。
魔力を持つ獲物から魔力を吸い出し、自身の身体に保管する。
しかし、保管しすぎると爆死する為に個体数は少なく、その危険性から見つけ次第殺されているためか現在では絶滅の一途をたどっている。
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獲物から魔力を吸い出す。爆死。というところは少し気になるが、それ以外は特に攻撃性が高いという訳ではなさそうだ。
一安心すると小鳥を肩に戻す。なんか苦しいほどお腹いっぱいらしいし、満足するまで肩に乗せてやることにしたのだ。
絶滅危惧種っぽいし、優しくしてあげないとね。私は魔力Fどころか無いから危険もなさそうだし。
「さ……流石すぎます……」
私のピンピンしている姿を見てやっと危険が無いことが分かったのか、ニルスくんは苦笑気味に笑った。
それから暫くはニルスくんも小鳥に警戒していたが、川を二個越えた辺りから余り目を向けなくなった。
ニルスくんはやっぱり最初は警戒するけど、直ぐに心を開いてしまう悪癖があるようだ。
……………受けかな……。
はっ、駄目だ私、やめなさい!もう懲りたでしょ!!
自分のの頬を引っ叩くと、ニルスくんが今度は私の頭が心配になったのか見つめてくるので、また微笑んでおいた。
それから数分後、やっとエルフの隠れ家が見えてきた。
鬱蒼とした場所にある洞窟で、草木花に隠され指を差されなければ気づけなかっただろう。
「あそこです…」
久しぶりに家族に会えるだろうに、ニルスくんの顔色が暗い。
話を聞いた感じ家出してきたっぽいし、気持ちがわからないわけではない。
「私が一人で入ったら警戒されてしまいます。先導を頼んでもよろしいですか?」
背中をそっと押すと、ニルスくんはパッと笑顔を浮かべた。
やっぱりこの子は少しチョロい節があるようだ。
最後まで読んでくれてありがとうございました!




