すったもんだの挙句に
とは、言っても大した準備ではない。どちらかと言えば覚悟だけだろう、世界を救うなんて柄じゃない。
だけど。
澪や、天使たちの惨状。忙殺されそうになる神々。
あと一つ気がかりなのは。
「そりゃ何だ?ミルフィ」
これですか?とミルフィが手にした杖を目の位置に掲げる。
「タカツグ様の新しい武器です。ここをこう押すと中に仕込み刀があり、普段は魔術用としても使用可能な優れものです。魔石は最高級の物をはめ込んであります」
「いつの間に、そしてそれ資金はもしかして……」
「はい、勿論タカツグ様の資金からです」
にっこりと満足げに微笑むミルフィが鬼に見える。
「安定のミルフィだな」
「褒められてる気がしません」
「人の財布握って、勝手に装備買う奴を褒める奴がどこにいる」
「タカツグ様の物をタカツグ様の財布から出して何の問題があるというのです、第一魔石はレティ様よりお譲りしたものですよ」
はいはい、もーえーわとばかりに面倒くさくなり
「分かった分かった、ありがとうレティ、そしてミルフィも」
「付け足しみたいで何か釈然としません」
「奇遇だな俺もだ」
「相変わらず仲良しね、貴方達は」
「これ仲良く見えるのか」
頭を抱えたくなるのを我慢し、こっそり溜息を吐く。
「メイヴ、頼む」
「任せろ、乗るがいいタカツグ」
ミルフィは自分の羽が有るので、それで飛べと云う事だろう。
メイヴの背に上ると、ばさりと巨大な羽が動き空中へと飛び立つ。
「いざ、魔族の元へ」
「タカツグ様結構ノリノリですね」
「テンション上げないとやってられるか」
「張り切っておられるという事ですね」
畜生、照れ隠しもバレてる。何のかんのと長い付き合いになりそうだしな、と。
手にした仕込み刀付き魔導士用の杖(もう何が何やら)を片手に握り絞め、空を切る様に飛ぶメイヴに
「北へ行くぞ」
「任せろ」
と、短い言葉を交わし前を見据える。
長い距離を飛んだ所で夕暮れに差し掛かる。
「今日はここで野営だ」
「妾はまだ飛べるぞ」
「お前の体力は信用しているが、俺とミルフィも体力は温存しておかねぇとな」
「タカツグの言葉であれば、羽虫はどうでもよいが」
「私も体力にはまだまだ余力は有りますが、タカツグ様の御言葉であれば」
何だろ、これ。ハーレムってやつか?つーか誤解を招きそうだから言っておくが二人に恋愛感情っての物はない。
ミルフィもメイヴも家族、みたいなものだからだ。
第一、俺はただの人間だ。寿命も生活形態もちがう。チラリとミルフィを見る。見た目もすっかり大人の姿だ。よくよく見れば結構タイプに……いやいや、違うったら、違う。
首をぶんぶんと振り、きょとんとしているミルフィに。
「寝床作る、手伝え」
「分かりました」
「妾も手伝おうぞ」
張り合うようにメイヴもいつの間にか人型になり、人手が増え簡易テントをはり、火をおこす。
「交代で見張りを行う、まずは俺が先に見張る。次はミルフィだ頃合いを見計らって起こすから頼む」
「寝なくても大丈夫ですよ、私」
「そうなの?……って、神だって寝ないで死にそうになってんじゃんか、ダメだ休め」
でも、と躊躇うミルフィに「いいなちゃんと寝ろよ」と携帯食と水筒を渡し、俺はそのまま焚火の前に座り込み、携帯食の干し肉を軽くあぶりメイヴにも渡す。
「おお、気が利くのう」
メイヴも何でこんなに俺に懐いているんだ?と言った具合に良くしてくれる。
彼女いない歴が年齢と同じだと、気付くのもずっと先の事である。




