お先真っ暗、のち晴れ
暫く間が空きました、申し訳ありません。
『何じゃ、用があるならこっちに来んかい』
「え?」
何か聞こえた気がする。ミルフィの方を見ると「あのとんちき上司」とブツブツと呪詛の様な事を言っていた気がするが、聞かなかったことにする。
「どうやって、そちらに向かえばいい」
『お主が望めば門が開かれる』
「門?」
周囲を見渡してみても、それらしきものは無い。
『新月の夜にしか現れぬ、あと三日たてば月が隠れる…その折に門を開け」
「くそじじぃ、表出ろ」
ミルフィさん、本音がダダ漏れですよ。しかし成長するにつれ何となく性格も変わったような気がしないでもない。
『此方からそちらに行っても良いが、手が離せんのよわし』
ああ、確か仕事が山積みとか言ってたな。
「そんなに溜まってんのか仕事」
『見せてやりたいわ、机の周囲書類の壁が出来ておるわ…』
そりゃやべえ、今時そんなブラック企業な……いやあったわ、俺の元職場。
「タカツグ様、強引に門こじ開けましょう」
「え、それやっていいやつ?」
「知りません、ですが此方もこれだけ放置されたんですから門の修理位トイレットペーパーより薄い頭の神様がやってくださるでしょう」
『ちょ、ミルフィ流石にそれは看過できぬ発言だぞ』
「薄いのは本当でしょう」
『髪の事は言っとらんわっ』
「事実ですからね、まぎれもなく」
「ミルフィ、とりあえず落ち着いて?な?」
「タカツグ様は甘すぎます、あのじじぃのせいでこんな世界になってしまっているんですから」
「そりゃそうだけどさぁ」
周囲を見渡せば、被害者だらけの会?的な自分の仲間達、一人はモンスター化しかけているし。
「門、どのあたり?」
『ちょ、本気かタカツグっ!』
「さっきから話が見えないんだけど、つーかタカツグとミルフィ誰と話をしているの?」
「ああ、アンタらには聞こえないのか……神様と話してんだよ、今」
「創造神と!?」
「こちらじゃそう呼ばれてんだな、まぁ違わねぇな……この世界と作ったヤツ」
「はぁ、只者じゃないとは知っていたけどアンタマジで凄いわ」
「いや、俺ただの日本人だし平凡だし」
「でも私たちには無い能力があるわ、寧ろ神側に近い側面もあるし」
「レティ達は被害者ですよ、あのじじぃへのクレームありましたら事付けしますので、なんなりと」
「ミルフィさん、ほんとお前ちょっと黙れてやって下さい」
「タカツグ様がおっしゃるなら」
話に置いて行かれているエルフの長も困惑中、途中参加の精霊も、だ。
「とりあえず、門こじ開けるのは明日にして現状のすり合わせしようか?」
「……それ賛成」
はぁ、疲れたと言わんばかりのエルフの長が「今晩は泊まっていけ」と宿舎を案内してくれた。
◇◇◇
「ダメだ、眠れん」
お互いの現状の報告、これからどう防御するのか議論は色々出たがどれも決定打になり得ないまま、夜遅くなりひとまず会議はお開きとなったのだが。
枕が変わると眠れない性質ではなんだが……ゴロンゴロンと転がりながら、考える。
元、人間。いや、今でも人間なんだけど。
「俺、この世界代表みたいになってね?」
「疑問符つけなくても、そうですよ」
「ミルフィ、前から言ってるけどな?異性の部屋に夜来てはいけません」
「タカツグ様のサポートですから」
巌として受け付けない彼女に、頭を抱える。
「最初から頑固だったけどさ、ミルフィ性格変わってなくね?」
「……最初は単なる巻き添えでしたが、今は違いますから……タカツグ様はこの世界に来て成長されています、そのサポートをする天使が前のままでいい訳有りません」
「天使も成長するって事か?」
「たまにあるのですよ、本来は階級も変わらず生まれた時のまま一生を過ごします」
ですが
「私はこうして貴方のサポートと言う絆を持てました、魂が繋がりタカツグ様が成長すれば私も……逆もありますが」
「それが、魔族なのか?」
「おそらくは」
何が、他の天使を黒く染め上げたのだろう?いや、何となくわかっては居るんだ。
元々転移する人間の性質。死にたいと思える程追い詰められた者の元に現れる天使。
「全部俺らのせいだ」
「違います」
「違わねぇよ……繋がりが出来ちまえば片方が真っ黒ならもう片方にもしわ寄せがいく」
極々、自然と。
それを見なかったことには出来ない。
「お前も俺が一歩間違えたら堕ちてたんだな」
「そう言う意味ではタカツグ様の担当で、私は良かったのかもしれません……貴方には何も無かったのですから」
「何も、無い?」
「はい」
確かに無かった、金も心も。死のうとしたのも何となく現状から逃げたいという気持ちだけで、発作的だし。
あったのは、ノリだけ。
「でも、そのタカツグ様に私は救われました。貴方は以前の貴方ではない。今のタカツグ様は私の恩人でもあるのです」
相変わらず空に浮いているミルフィを改めて見て。
「今のお前は天使なんだな、って思えるよ」
「……私はタカツグ様の救いになっていますか?」
その問いに、ああと頷く事で応えた。




