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噂のあいつはどいつだ

 うっそうとした、だがどこか清浄なそんな深い森。


「この奥にレィティの故郷があるんだな」

「そうよ…ただ気を付けてね、基本平和主義だけど排他的でもあるから」


 前の世界に居た時の事を思い出し、無意識に自分の右腕をさすっていた。


「どっかわるいの?」

「あー、いや前の事思い出してさ。俺も似たようなもんだったし」

「似た者?」

「別に喧嘩したいわけじゃないくせに、妙に一人になりたがる…どっかとんがったヤツ、それが俺だった訳」


 そう、とレィティは何かを察してくれたのか、それ以上は聞いては来なかった。


「エルフってプライドが高いって聞いたけど、レィティ見てるととても信じられないな」

「言ったでしょ、私は変わり者だって」


 やや、遠い目をするレィティに


「レィティは変わり者なんかじゃないよ、優しくて物知りでしっかりしてて男らしいし」

「やぁねぇ、澪ほめ過ぎよ」


 やたらとレィティの肩を持つ澪に違和感しかなかった。


「あれ、何があったらああなるんだ?」

「元々夜盗の人らにも懐いていたし、刷り込み現象ってやつでは?」

「……そんな事はどうでもよいのじゃ、なにやら見張られている感がする。警戒されておるのかのぉ」

「まぁ、普段他領域を訪れるのは商人位でしょうから」


 一応町にあった酒やらを土産に持っては来ているのだが。


「話聞いてくれたらいいんだけど…っと!!!!」


 足元にタタタタタッと矢が撃ち込まれる。発射方向の方を見ても人影すらない。


「止まれ、それ以上進むな」

「別段アンタらの領域を攻撃しに来たわけじゃない、助力を頼みたいんだ」

「人間風情が?何故お前らを助けねばならん」

「アンタらの所にも魔族が来ただろう」

「……そんな者自分たちで十分立ち迎えられる」

「数、増えてんのよ。魔族も魔物も」

「!?」

「サラド、久しぶりね」

「その声は兄者…いや、レィティか」


 どうやら知り合いらしく、すとんと一人の青年が枝の間から飛び降りて来た。


「村を、俺らを裏切っておいてよくも帰ってこれたな」

「逆でしょう?貴方達の方が異端者扱いしたんじゃない」

「あーあー、こほん。久しぶりの兄弟げんかの邪魔はしたくないんだが、事は急ぐんだ」


 改めてレィティの弟らしき青年が此方を見る。


「魔導士……転移者か」

「話があるんだ、出来たら責任者…ってか代表と話したい」

「裏があるやもしれん者とおいそれと長が合うものか」


 そこで、澪が一歩前に出る。


「僕も転移者だ、だけどいきなりこんな姿にされてしまった」


 ばさり、と深めに被っていたフードをはずし澪はサラドと向き合った。


「魔物!?いや、言葉を喋る??」

「なりそこない、て言うか何かがあって魔物化が途中で止まった……人の心も持っているし、賢者の能力だってある」

「賢者、か……」


 少し思案した後


「着いて来い、ただ武器は預かる」

「えー、俺は魔導士だけど武器って俺そのものだぞ?俺をアンタに預けるの?」

「屁理屈こねるな、案内するの止めるぞ」

「タカツグ、ここはふざけてる場合じゃないのよ」


 和ませようと思っただけなのに……ちらりとミルフィを見るが(どうにもできません)とやれやれと首を横に振られる。


「わ、分かったから」


 軽く頭を下げ、詫びを入れる。


「なら、良い」


 意外にちょろいなとは思いつつもこれ以上ふざけたら身内から被害に合いそうだと、黙る。


「ここで少し待て、先に長に知らせてくる」


 開けた場所にたどり着き、そこでそう言われサラドは村の中へと入っていく

 その部分だけ緑の間から空の光が降り注ぎ、村の様子も見える。ほとんどが木造であまり石などは使われていない。雑多な様子もなく綺麗なものだなと感心していると


「待たせたな、転移者よ」


 レィティが年を重ねたようなそんなエルフが歩み寄ってきた。


「私が、この村の長だ」

「改めて自己紹介だな、俺は崇継…そして此方が賢者の澪だ、この世界に来るなり魔物化させられそうになった……魔物や魔族はこの村に来た事があると聞いた」

「……そうだ、本来いない筈の魔族。一体あれは何だ!」

「……もと天使です。此方に来た途端に堕ち魔族と化しました。何か原因がある筈です」

「天使?転移者をサポートする存在と聞いた。それが魔族?」


 エルフも現状把握できていなかった。

 この分では精霊達も、と思ったが。確認もせず確定するのは善くない。

 幸いエルフと精霊との間では交流があると聞く。


「で、こういう集団が出来上がったと」


 ふわりと、舞い降りて来た不思議な女性。初めて見る精霊の羽は確かに天使のそれとは違う。


「で、そこなミルフィとやらは魔族化もしていない。既にギルドにいる天使も変わりはない、か」


 意外に把握している女性に、目を見開く。


「何やら、この世界で言う上位クラス……神とやらの領域で何かが変わりつつある、と踏んだがタカツグお主はどう思う?」

「それは気付かなかった、此方で変化が起こっているこの現象しか頭になくてな」

「ふむ……ミルフィ、神の元へと行ける方法はあるのか?」

「……向こうから招かれなければお会い出来ません。ですがほんの少しだけですが調べてみたところ、タカツグ様は他の転移者と少々違う様で」

「そうなの?」

「魔力の量といい、本質といい……なぜかボーナスポイントが高いのです」

「ボーナスとか言うな、元の世界思い出すだろう」


 泣いてない、泣いてないんだから。


「タカツグ様が真剣に望めば、神様は応じてくれるのではないかと」

「俺?」


 はい、と頷くミルフィに首を傾げた。何一つ取り得も無くうすらぼんやりと生きて来た自分。何が違うんだ。


 だけど


「もし何かしら変わりが見られるなら」

 望もう。

「何か俺に言いたい事あるのなら、会いに行くか来るかどっちかやれよっ!!!!」


 そう、天に向かって怒鳴ってみた。


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