見るとやるとでは大違い、勘違い大賞は誰の手に?
「……その話を信じるとすれば、天使に転移された者達の中にはそのまま魔族と魔物になり徒党を組んでいると?」
「そうだ、現に澪は何も聞かされず転移した途端、相方の天使は魔族へと変化し同時に澪も魔物になりかけた」
だが
「多分賢者の天性が有った為だろう、ぎりぎり人間の心が戻った……そんなところだろう」
証拠は?と詰め寄ってくる護衛達に
「この前ギルドの依頼で捕縛した夜盗達は、森の外れに居を構え田畑を耕し、木々を集め素朴な生活を送っていた者達だ……魔族が襲ってくるまでは」
「……魔族」
「はっきり言いますと魔族は元々私たちと同じ天使です」
ミルフィはバサッと自分の羽を見えるようにした。
「魔族と同じ……だが色が違う」
「本来は居ない筈の魔族、そして魔物……増え出したのも最近の話と聞いた。王都の王にな」
「で、すが」
「平穏に通常の生活をしていただけなのに、行成村を焼かれ妻子を嬲り殺され、田畑を踏み荒らされ……どうやって生活していく?冒険者としての才能があればそうしただろう、猟師としての才能があれば……」
「……分かりました」
勿論罪は罪だ
「だからこそあいつらは大人しく罰を受けている……澪はそんな村で魔族に襲われる前に村で匿って貰っていたらしい」
見れば、澪は悲し気に悔し気に唇を噛みしめている。
「たまたま村に居なかったときに襲撃にあったらしい、戻って来てみれば世話になった人達が躯となっている、村は焼かれ跡形もない」
アンタたちが
「同じ目にあったならどうする?」
言葉にもならなかった。
ポロポロと綺麗な涙が澪の目から溢れては流れていく。
「この姿にさせられてから、人の街には近付けなかった。すぐ討伐対象になるから……森の中で獲物を取り、生きていくのがやっとだった……そんな時に迎え入れてくれたのがあいつらだ」
今までため込んでいた感情が溢れ出す。
「生きる糧を奪われ、この町に来たからってすぐに何が出来る?受け入れて農地でもくれるのか?住むところをくれるのか?……この姿の僕を誰が助けてくれる?彼らは事情を聴いてくれ僕を置いてくれた」
「ミオちゃん」
レティが、優しくその頭を撫でていた。
「心まで魔物になっていれば寧ろ楽だったかもしれない。でもそうなればタカツグやミフルィ、レィティに会う事も出来なかった…」
「アタシもそうよ、少しだけ他と違うってだけでエルフの里では異端者扱い……澪の気持ちよくわかるわ……いい子よ。仕事は丁寧だしちょっと大雑把だけど優しい子だわ」
「一言余計」
「ごめんなさい」
どうやら留守をしていた間に二人の間の感情に何かが芽生えたのかもしれない。
互いを思いやる、そんな様子が見て取れた。
「護衛の方、此方に来てよ」
「……何をする気だ」
「別に大したことは」
それ
相手の剣を持つ右手を指さし。
「古傷が元で本来は左利きなのに、それが元で右で剣を使うようになったんだろう?」
「何故それを」
いいから、と澪の方からずいと近付き男の左腕に服の上から両手をかざし。
治癒の魔法陣を展開させる。
「術式<巻戻し>」
綺麗なオレンジ色の光はそのまま男の腕に吸い込まれていく。
「な、動く……動く俺の手がっ」
「澪は賢者だからな」
ありがとうと、涙ながらに感謝する護衛にを見ると。
「私はこの領地を治めている領主ランドだ…護衛のこいつらは私の従兄弟達で、兄弟も同然の仲だ……彼の腕を治してくれてありがとう」
自分の事の様に涙する領主は普段は善い人なのだろう。少しでもあるのならと半魔物化している澪を見付け、後顧の憂いを経とうとしたのだろう。
「なぁ、こう言った事がこの世界のあちこちで起きている。そう王が言っていた。その原因を突き止め、出来る事なら止めさせたい。何をしていいか、何がやれるか分からない不安感から解き放ってやりたいんだ」
昔の自分の様に。
「だから、力を貸してくれ」
「私の力などたかがしれているぞ」
「一人一人の力は確かに小さい、だけどそれが集まれば話は別だ」
そこで
「レティ、酷な事を言っているのは重々判っている」
「そうね、でもアタシの力が貴方達への協力となるのならアタシのプライド何かくそくらえだわ」
「レティ行っちゃうの?」
「澪も行くんだよ、お前は奇跡に近いんだよ……何が有ったのかは知らない、だけど外見は魔物でも人の心も賢者の腕もある。その姿を見せれば一人が二人、二人が四人へと必ず伝わり始める」
「ミオを見世物にするのは反対だわ」
「だが、神輿が必要だ」
魔物になっても、心が人間のままの女の子が居る。
それはきっと人の心を動かす。
「勿論、澪の意志が一番だ。嫌ならそう言ってくれ」
「僕は………」
ぎゅ、と自分の胸元で両手を握りしめ
「……あのままでは変われなかった、単なる盗賊になり果てていつの間にか身も心も魔物となっていた……タカツグとミルフィが僕を見付けてくれ、レティがいてくれなかったら」
一旦目を閉じ
「だから、行くよ……僕に出来る事があるなら」
「うん、よく言ってくれた」
勿論、澪に仇なそうとする者には容赦しない。そう心に決めた時
「そろそろ、妾の事も紹介しておくれ」
窓の外から、メイヴの声がする。
「誰か外で待たせているのか?」
ランドがそう言いつつ、窓の外をのぞいて腰を抜かしていた。
「ド、ドラゴンッ!?!?」
「大丈夫、単なるトカゲですから」
「聞こえておるぞ、羽虫」
一気に日常感が戻ってきた感じがする。
「レィティもミオも皆さんも一旦外へ」
後ろ足で耳の辺りを掻いていたドレイク・メイヴが呑気に欠伸をしていたが。
「デカいと首が痛くなる、人型になってくれ」
「タカツグの願いと有らば」
ぽん、とドレス姿のメイヴへと変わり。
「ドレイクのメイヴだ、王都への途中で仲間となった……だからドラゴン族は既に協力体制にあるから安心していいぞ」
「我が伴侶の言葉じゃ、約定は違えぬぞ」
「伴侶になった覚えはない」
「冷たいのぅ、そう言うところも…」
「タカツグ様が嫌がっていらっしゃるのです、トカゲは引っ込んでいなさい」
「また、羽虫がぶんぶんうるさいのう」
いつも通りやり合っている二人をよそに
「各種族を回り、現状の把握協力を願いたい」
「そう言う事でしたら、王都の王殿下もそれに賛同されたと聞けば、お触れはすぐに出されるかと…人族である我らも微力ながらもお手伝いさせて頂きます」
「やり方は至極簡単。一人が二人に真実を話せばいい、その後は二人がそれぞれ二人に話してくれたらいい。倍が倍へと変化して行く、俺らは各種族に協力を要請しつつ、原因を探る」
「流石タカツグ様」
折角やり直すための転移だ、澪の他にも半魔物となっている者もいるだろう。
やり方がブレブレだが、いつか形になる。
それを信じて、今は前を向いて進もうとそう決めた。




