捕縛とおねだり上手な王様ってあり?
「へ?王様が会いたがっているって??」
誰にやられたなどとは、言わないが両頬と顎の痣を治癒師に治して貰いながら、やってきた衛兵二人からそう告げられた内容。
「はっ、タカツグ殿のご活躍既に王宮にも届いております。あのドラゴンの群れを大人しくさせたばかりかドレイクも従属させた勇者様だと」
我が国の王がギルドに出していた依頼でもあり
「それを見事成し遂げたタカツグ様と謁見をと……言うなればこれ以上の名誉は無いと存じ上げます」
「いや、存じ上げますとか言われても従属してないし、大人しくもさせてないし」
「ですが、今タカツグ様の御そばで膝ま付き、見上げていらっしゃる方はそのドレイク様ですよね、その隠しきれぬ尻尾が何よりの証拠」
更に現在山の街道にてワイバーン達も
「みだりに旅人を襲ったりすることなく、平穏そのもの……これはタカツグ様の功績です」
一言いえば、何十倍にも返ってくる。キミ営業向いてるよ?元の世界の俺の会社で働いてみないか、一気に鬱になるから。
と、言いつつも王族の呼び出しに逆らう訳にもいかない。郷に入れば郷に従え、そしてこの世界の中心、情報もそこに集まっている事だろうし、と。
治療してもらった料金を支払おうとしたら「既に商隊の方に頂いております」と丁重にお断りされ、否応なしに迎えの馬車に押し込まれる羽目となった。
当然、ミルフィとメイヴも一緒である。今はおとなしくしてくれているが、この二人どうやら水と油と言った関係の様で、寄ると触るとひっかく猫みたいに喧嘩し出す。そのとばっちりを受けるのが俺と言うこの地獄絵図。もしかしたら元の世界の方が平和だったんじゃないかと錯覚さえ覚える。
ちらりとメイヴを見ると、ドラゴンから人化し真っ赤なドレスから出ている尻尾は隠せていないがナイスバディで。出るとこは出てて、見どころのある見事なプロポーション。艶やかな腰まであるさらりとした緑の長髪、顔立ちも艶っぽく美形でプルンとした唇は赤く染め上げられていて、どこの美人女優だと言わんばかり。はっきり言えば外見は好みだ、あくまでも外見は、だが。
しかしながら、ミルフィも最近ではバグのせいか身長も伸び、スレンダーだが出る所が出てきてこれまた、美人モデルと言われたら素直に信じちゃうぞ?ってな感じ。顔立ちがまだ少し幼いのもまたいい。
「じゃなくて、王様が出してた依頼だったんだな……ドラゴン退治」
「退治そのものでなくても、被害が出無くなればラッキー位のモノだったんですよ」
いや、簡単に言ってくれるけどさ。チート能力無けりゃあれ全滅コースだぜ?メイヴに聞いたところドラゴンスレイヤーでも来ない限りは、ドラゴンに刃や槍は通用しないし、弓など、蚊に刺された位のモノらしい。
「で、誰も依頼受けなかったと」
「そうなります」
王都からの使者でもある衛兵さんは、複雑そうな顔をして両隣に美女を侍らせている俺を見ている。
羨ましいかそうか、代わってやろう。寧ろ代わってくれ。
「なぁ、タカツグ…お主からは好い匂いがするのう」
「タカツグ様を誘惑しないでくださいね、脳筋ドラゴンさんそして巣に返ってください」
「はてさて、どういう意味に聞こえたのやら、耳年増はこれだから乳臭い言われるのよ」
もうやだ、二人からがっちりと両腕をホールドされてて、かゆいところも掛けない。
「王宮まであとどれくらい?」
「……もう直です、今門の前に来ました。ここから十五分程したら城壁に向かいます。手続きが済んだら三十分程して第一の宮に到着」
馬車を降りてからまた三十分程したら、手続きの間に到着。
「危険物や武器は一旦そこでお預かりとなり、更に騎士団によるボディチェックが入り、安全だと認定されたら術式を刻んだ指輪を付けて頂きます。王宮にて攻撃魔法を使えなくするものですので、何もなければ一時間程ですみます」
「と言うとー二時間後って事か」
「そうなりますねぇ」
「勇者とか言っておいて、謁見までそんなにかかちゃうの俺。ただでさえ行列に並ぶのも嫌いなのに」
「お願いですから、我慢してください。でなければお出迎えに行った私たちの首が飛びます」
「やだ、バイオレンス。じゃなくてーこの二人さえ剥がしてくれたら俺一人で行くし、むしろ歩く凶器はこの二人だし」
「何て事言うんですかっ、このトカゲが危険物扱いは分かりますが」
「このじゃじゃ馬羽虫ならともかく妾はタカツグの傍で大人しくしておるぞ…何と言うても妾より強い男じゃ、我が伴侶にふさわしい」
もうぎゃんぎゃんうるさい。
「いい加減にしないと悪夢見せっぞ」
途端にしゅんとなる二人。衛兵がほっと胸をなでおろしたのを見て
「すまない、こいつらが騒がしいばかりに気が急いた。ちゃんと手順を踏むので安心してくれ」
「いえ、ご心労お察しいたします」
普通は羨ましいポジションだろうなぁ、中身がヤキモチ天使と、肉食獣ドラゴンでなければ、の話だが。
第一伴侶だの惚れたのだと、今の俺には興味が無い。恋愛的な意味ではないが寧ろ気になるのは澪だ。同じ転移者、だが半魔物化している。
あれをどうにかしてやりたい。
どうにかこうにかして、厄介な決まり事をこなした後。大広間に通される。入り口から王座まで高そうな絨毯が敷かれ、これまた一つでも拝借して売れば高額なの間違い無しなシャンデリアのクリスタル。広い部屋の両端には甲冑に身を包んだ騎士たちが一部の乱れも無く、姿勢を正し並んでいる。
そしてそのはるか先にある王座。ジャーンと一度鐘が鳴り響き、騎士達が片足を揃え、その場で足音を立てる。
「殿下から直接言葉を交わす名誉を受けております、ささ……どうぞ前へ」
「何でこんな大事になってん?」
「それだけタカツグ様の行われた事は素晴らしいと言う事ですよ」
促されるまま、前に進む。(気は進まないけど)そして、一歩遅れてミルフィとメイヴがしずしずと着いてくる。流石に王宮に置いて騒ぎを起こしたら、俺の責任となると言って聞かせたのが効いたのだろうか。
「勇者・タカツグ様馳せ参じました」
「お初にお目にかかります。到着までお待たせした、非礼どうぞお許し下さい」
いや勇者じゃないし、魔導士だし。ツッコミ入れたいのを我慢し、使者と同じく片膝を着き恭しく首を垂れる。
「苦しゅうない、表を上げ楽な姿勢を取るがよい」
そうは言ってもなぁ、両脇の騎士達の緊張がどうにもこうにも。
「ドレイクとワイバーンの件、事情聞いておる。どうにも情報が間違っていたようだ。その赤き麗しき女性がドレイクの化身とな。其方らを討伐しようとするなど相すまなかった、ほんに申し訳ない」
「分かれば良い、我らの絶大な能力を知り尽くしておるのであれば、臆するのも仕方無し…我も一族を率いるもの、民の危機と知れば何らかの手段を取るのは理解できる……これで手を互いに打とうぞ」
騎士たちの間で、ざわっと殺気が漂う。だが、王が右手を上げ「よい、儂とドレイク殿は種族が違うなれど、同じ立場だ」と言葉を告げると途端に静まり返った。
「麗しき竜の王よ、ワイバーン達にも手出しはさせぬと誓う。そしてタカツグ、ミルフィおぬしらには本当に足労をかけた、この世界の人の王として謝罪をさせてくれ」
「謝罪などいらん、寧ろアンタに聞きたいことがある」
楽にしていいと言われた以上、本当に楽にしたら今度は目にもとまらぬ速さで騎士の一人の剣が喉元に突きつけられ
「物騒だな、楽にしていいとお前らの王様が言っているんだが」
「……例え殿下がそう申されておられても礼節を護らぬ者は……」
不満ありげな騎士の射抜かれそうな殺気をかんじながらも
「なぁ、王様。聞きたい事…と言うか、確かめたい事がある」
真っすぐに王座に座り、目を細めた子の王都を収める主に問う事にした。




