幾らなんでも強過ぎね?
「わぁん、タカツグ様が死んじゃったー」
「何度も言うが、俺を勝手に殺すな。人聞きの悪い…さて、これからお前に束縛の術を掛ける」
「グルルルルルッ!」
自分が何をされるのか、不安になったドラゴンがじたばたとその足や羽をばたつかせてくる。風圧に飛ばされそうになるのを両の足を地面に踏ん張らせながら、杖をかざす。
「術式<深淵の予言>改」
足元に、多角形の複雑な術式を何重にも組み込ませた赤紫の魔法陣を発動させる。以前は単なる白くぼんやりと光る丸だったモノを一気にまばゆい程の光のものへと変化させた、改・<深淵の予言>
以前とは違い、自分の位置を中心にドーナッツ状に魔法陣を展開させ、自分にはかからないようにしておく。これがレティとの特訓の成果だ。よけるのではなく、最初っから自分を対象外にしておく。何でこれ最初に分からなかったのかなぁと、軽く自己嫌悪に陥るが、そんな余裕などは無い。
おお、悶えている。ドラゴンの黒歴史とやらは分からんが、のたうち回ってぴくぴく言ってる。それを近くで覗きこんでいると、
「おお?」
暫くするとドラゴンの動きが止まり、立ち込める霧が周囲を包み込み、
「あれ?」
おっと、どうした崇継選手。いきなりパインパインした二つの幸せな山が背中に、そしてしなやかで肌障りの良い力強い腕が首元を包み込む―っ。
はい、ふざけすぎました。これは。
「タカツグ様っ」
ミルフィの悲鳴が聞こえる。うん、知っていた。今度は俺がピンチだね。
要するに、拘束されました。
あ、でも、
「ね、誰?」
「先程まで戦っておった者を忘れるとは不届き者じゃな」
その言葉で理解する。
「え、お前ドラゴン?そして背中に当たっている気持ちの良い感触から察するにメスドラゴンと断じても良いのだよな?」
「不埒な奴め、このまま絞め落としてくれようぞ」
「それは迷惑な話だなぁ、術式展開<真鏡の神髄>」
新たな術式・魔法陣を展開させ自分もろとも魔法陣が足元からすぅと上り、天へと消えていく。
「ややっ!?なんぞこれは」
「えーとね、お前は魔物で魔物はここでは人には敵わない、そしてこの辺りの動植物はドラゴンには不味いって言う魔法でね」
「解説的な物はよいわ!!!!」
するりと、拘束から抜け出し膝から崩れ落ちるドラゴン(人型)を改めて覗き込む。
「わぁ、スタイル抜群で、もろ俺好みの美人じゃんっ」
「たーかーつーぐーさーまー????」
ミルフィのどこか怒りを含んだ声が聞こえるが、気にしないでおこう。きっと後で嫌と言うほど攻撃喰らうから、うん。呑気だね俺、だって世の男性は美人でこう良いおっぱいの持ち主に弱い。世界の常識だねコレ。
「なぁ、何でここにたむろってったのお前ら」
「お前らではない、部下はワイバーンだ。そして妾は…」
「はいはい、ワイバーンね。で、商隊のキャラバンが通れなくて困っていんの。餌場なら他で探してくんない?」
「聞けっ、妾はやつらを率いているドレイクと言う種じゃっ」
「ああ、確かに他の奴らと姿が違うよなーでもドラゴンなら全部一緒だろう、ハイハイとりあえずこの場所は出禁ね」
「一緒にするなーっ」
ぜいぜい、と荒い息を吐きながら。
「大体、元々この地は妾達の場所じゃ。それを便利だからと勝手に道を作ったのはおぬしら人間では無いか!?」
「そうなの?」
一旦商隊の方を振り向くと、きまずそうな男の顔が横を向いている。
「はーん、じゃ悪いのは人間か」
「別段人を襲うつもりなどは無い、第一食いでがない。旨い訳でもないし」
「へ、そうなの?人襲ってない?」
「襲っていたのは寧ろこの地に生息している魔物達じゃ、そいつらを捕らえて餌にしていた」
「じゃ、お前ら逆に益をもたらしていただけじゃん…図体がデカいだけで」
「ドラゴンに戻ってミンチにしてくれる、女に体形の事云うなら潰す」
「あ、ごめんっ。謝るから止めて、良く考えて思い出すとドラゴン姿もきりりとして気高くて綺麗だったけど。人型のお前も格段にスタイル抜群に良くて艶っぽくて凛としていて、凄く魅力的だっ」
「ぬ、お主話が分かるではないか。よいぞもっと褒めても」
「あ、いや、これ以上お前を褒めると俺には死が待っている気がする」
少し離れた場所から、視線だけで人が殺せそうな気配がする。きっとどの道を選んでも俺ミンチにされるんだろうなぁ。もう達観しそうな俺の人生、きっと終わった。(終わってない)
「さっさと行きますよ、タカツグ様」
「お主タカツグと言うのか、ならば妾も連れて行ってくれ、この国の王とやらに話がある…勝手に我が縄張りに道を作りおって文句の一つでも言ってやらんと気が済まぬ」
「ご自分で逝かれたらどうですか?ドレイクの方」
「違う意味に聞こえるぞ羽虫。名はちゃんとある、メイヴじゃタカツグ」
「貴女と話しているのは私ですよ」
「羽虫と話すほど暇ではない。な、タカツグ…お主は強い。この妾よりも更にその上、妾を褒めたたえてくれる。そんなものは今まで居なかった…だから妾は其方と居たい」
「いりません」
「羽虫には聞いておらん」
話の中心に居た筈の俺をそっちのけで、女性同士のバトル勃発。
商隊が恐る恐る近付いてきて。
「そ、そろそろ出発しないと他の魔物が近付いて来ます」
「あ、そうだな行こうかそろそろ…ミルフィ、メイヴも付いてくるなら大人しくしろよ」
女性同士の喧嘩には口挟まず、実家の婆ちゃんの教えである。とりあえず話が伝わったらしく、ワイバーンたちの魔法陣は解いておいた。念のため嘴やら武器になりそうな部分には人だけは襲わないように簡易形魔法陣の保険はかけておいたが。
「あ、待って下さぁーい」
「あい分かった、行く」
どうやら双方引き分けになったのだろう。と言うか本当後が怖い。
ようやく、商隊の馬車が動き始める。とっとと奴らとは違う馬車に乗り込んだ方がよさそうだ、と先頭の馬車へと向かおうとして、がしっと両方の腕をグラマラスな胸と、発展途上の胸がそれぞれ抑え込まれ。
「タカツグ様ときっちりお話しさせて頂きますからね」
「タカツグ、妾は二人っきりが良いのだが」
あ、はい。逃げれませんねコレ。遺書残しといた方がいいのかな、と。商隊のリーダーのおっさんに
「報酬は王都で一番の医者を紹介する事に変えといてくれ」
「……ご武運を」
そしてずるずると一番後ろの馬車へと引きずられていったのは言うまでもない。




