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軍事研究所に乗り込んでみた

 バルベリア研究所。

 世界中の権力者達の威信にかけて、絶対に秘匿しなくてはならない情報満載の軍事研究所。

 人里離れた断崖絶壁に聳え立ち、屈強な男達が護りを固める不可侵の要塞。


 の、はずだよなぁ?


 ザキと母さんが実に楽しそうに蹂躙と破壊活動を繰り広げているけれど。

 易易と中に入れたけれど。

 私の力は全然使ってないんだけど。


 研究者達は、若い奴等もザキと母さんの顔を知ってるみたいだから、資料に二人の似顔絵でもあるんだろう。

 自分達が造って制約を与えたはずの勇者が、自分達に牙を剥く現実を受け入れることが出来ないようで、反抗の素振りも無く呆けたまま縛られて転がされた。


 騒ぎに乗じて逃げたらしい変態植物は、観葉植物のある部屋で雁字搦めにしておく。

 アレの始末は後でやるとして、とりあえず研究者を片付けるか。


「ザキ、母さん、こいつらどうする?」


 私の言葉に先に反応したのは研究者達の方だった。


「母さん?! まさか生殖能力の無い勇者の子供か?!」

「何処の研究者が製造に成功したんだ?!」

「勇者の能力データは取れた! 次は子供だ!」

「早く! 早く縄を解け! その女を調べ尽くさなければ!」


 現実逃避で呆けてたんじゃなく、データを取る目的で身動きせずに観察していたらしい。

 そして興味は私に向いた、と。


「痛覚のデータを取るために麻酔無しで処置をしよう」

「子供には生殖能力があるかも試さねば」

「痛覚以外の感覚もデータを詳細に。薬物の効きも調べなければ」


 どう聞いても、媚薬使って犯して麻酔無しで切り刻みたいという欲望が透けて見えるんだが。

 マッドサイエンティストも男ではあるのか。


「こいつ等、殺すのは簡単なんだけどさ。ザキと母さんに態々手を汚させたくないんだよね。でも、勇者製造の知識を持つ人間を放置は出来ないし、どんな罰を与えても悔い改めはしないだろうから、せめて苦しみながら後悔はして欲しいんだけど。どうしようか」


 私を研究対象にしようとした時から殺気立ってたザキと母さんを手で制し、私が首を捻っていると、甘い匂いがフワリと包んだ。

 私に向けられていた不機嫌が、殺意に姿を変えて研究者達に向けられている。


「絶望を感じ続けてもらいたいので、肉体は殺しませんよ」


 にこり。上品な笑みは、しかし原始的な恐怖を呼び起こすモノで。


「手伝って、くれる、の?」


 私も、殺意を向けられている対象ではないのに喉がコクリと鳴り滑らかに喋れない。


「もちろんですよ。園芸師の初仕事に執事が花を添えて差し上げます。苦しみと後悔と絶望の花を」


 ふふっ。と溢す息さえ艶やかなのに。いや増す恐怖に絡め取られる。

 かつて父さんと呼ばされていた大地霊と対しても感じることなど無かった感覚。

 勝てない。敵わない。

 でも、嬉しい。

 強い。美しい。

 

 欲しい!


「可愛らしいですね。私の力に発情したのですか。帰ったら酷くシテあげようと思っていましたが、その可愛さに免じてお仕置きで容赦してあげます」


 満足そうに細められた桃色の輝きに陶然とする。

 もう、囚われた甘さが欲しい他は考えられない。


「先ずは、勇者に関する記憶を奪いましょう。それ以外の持てる知識も全て、使えないないように。好奇心は殺してしまいますね。喜びを感じる必要もないでしょう。満足感は消失。代わりに苦しみを感じる処は広げてあげます。死に方が分からないので、長生き出来ますねぇ」


 片腕で抱き込んだ私の背中に指を這わせながら、歌うように心地よい声が流れる。

 気持ちいいな。

 いい匂い。甘い。


「ザクトヴァルス、資料の全てを破棄してください。ザキ、園芸師が捕獲した変態植物は無力化したので運んでください」


 フワリ。抱え上げられた。

 至近距離で、桃色に覗き込まれて、体の力が抜けて行く。


「お仕事は終わりましたよ。帰ってたっぷり愛し合いましょう。最初よりも、もっと、可愛がってあげますよ」


 くたっと体を預けて、私は恐怖よりも歓びに支配されていた。

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