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寛さんのおはなし

缶入りドロップ

掲載日:2026/07/29

仕事の資料を探すために、寛さんが押入れをかき回していると、子供の頃のおもちゃ箱が出てきました。

おもちゃ箱、といっても、ただの段ボール箱です。


何が入っているんだろう?と中を覗きました。


腕の取れた超合金のロボット。

揃っていないルービックキューブ。

作りかけのブロック。


他愛もないものばかりですが、とても懐かしい思い出でした。


「あ、これも懐かしいなぁ」


寛さんはサクマドロップスの缶を引っ張り出しました。


なんで、こんなところに入れたんだっけ。


幼い頃に両親を亡くした寛さんは、祖父母に育てられました。

それから、飼い犬のボン。

それが寛さんの家族でした。


小さかった寛さんは、よくおばあちゃんとサクマドロップスの分けっこをしました。


「おばあちゃん、サクマドロップスの分けっこをしようよ」

「いいけど、寛ちゃんはすぐ『取り替えて』って言うからなぁ」

「今日は言わない」

「ほんとかな?」


カラカラと缶を振って、おばあちゃんのてのひらには黄色いパイン。

寛の手の上に転がり出てきた最後の1個は、白いハッカ味でした。


「ちぇ〜、ハッカかぁ」

「取り替えっこ、する?」

「いい、後で食べる」


寛は白いドロップを缶にしまいました。


「あの時のかなぁ」


寛さんは耳元で缶を振ってみました。

カラカラと音がします。

どうやら、ひとつぶ入っているようです。


「ドロップって賞味期限があるのかなぁ」


寛さんはフタを開けて、コロンとてのひらの上にドロップを出しました。

白いドロップが転がり出ました。


「ふふ、子供の頃は、これ、あんまり好きじゃなかったんだよなぁ」


そんなこと言わないで、食べてくださいよう。

白いドロップが文句を言っているような気がして、寛さんは、くすりと笑いました。


「おなかを壊しそうだから、キミは食べないよ。思い出として取っておいてもいいかなぁ?」


寛さんは、白いドロップを缶に戻して、立ち上がりました。

久しぶりにサクマドロップスを買ってこよう。

ハッカ味が出ても、今ならおいしく食べられるだろう。


分けっこをする人は、もういませんから。

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― 新着の感想 ―
あ、シリーズになっている。 寛さんのお話は、やさしくてほのぼのだけど、しんみり切なさもありますね……。 お盆なので、おばあちゃんやボンが帰ってきてくれるかもしれません。 寛さん、なんだか独り者っぽい気…
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