缶入りドロップ
仕事の資料を探すために、寛さんが押入れをかき回していると、子供の頃のおもちゃ箱が出てきました。
おもちゃ箱、といっても、ただの段ボール箱です。
何が入っているんだろう?と中を覗きました。
腕の取れた超合金のロボット。
揃っていないルービックキューブ。
作りかけのブロック。
他愛もないものばかりですが、とても懐かしい思い出でした。
「あ、これも懐かしいなぁ」
寛さんはサクマドロップスの缶を引っ張り出しました。
なんで、こんなところに入れたんだっけ。
幼い頃に両親を亡くした寛さんは、祖父母に育てられました。
それから、飼い犬のボン。
それが寛さんの家族でした。
小さかった寛さんは、よくおばあちゃんとサクマドロップスの分けっこをしました。
「おばあちゃん、サクマドロップスの分けっこをしようよ」
「いいけど、寛ちゃんはすぐ『取り替えて』って言うからなぁ」
「今日は言わない」
「ほんとかな?」
カラカラと缶を振って、おばあちゃんのてのひらには黄色いパイン。
寛の手の上に転がり出てきた最後の1個は、白いハッカ味でした。
「ちぇ〜、ハッカかぁ」
「取り替えっこ、する?」
「いい、後で食べる」
寛は白いドロップを缶にしまいました。
「あの時のかなぁ」
寛さんは耳元で缶を振ってみました。
カラカラと音がします。
どうやら、ひとつぶ入っているようです。
「ドロップって賞味期限があるのかなぁ」
寛さんはフタを開けて、コロンとてのひらの上にドロップを出しました。
白いドロップが転がり出ました。
「ふふ、子供の頃は、これ、あんまり好きじゃなかったんだよなぁ」
そんなこと言わないで、食べてくださいよう。
白いドロップが文句を言っているような気がして、寛さんは、くすりと笑いました。
「おなかを壊しそうだから、キミは食べないよ。思い出として取っておいてもいいかなぁ?」
寛さんは、白いドロップを缶に戻して、立ち上がりました。
久しぶりにサクマドロップスを買ってこよう。
ハッカ味が出ても、今ならおいしく食べられるだろう。
分けっこをする人は、もういませんから。




