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時魔導士ネネユノの探しもの。~理不尽にパーティーを追放された回復役の私、実は最強でした!?~  作者: 伊賀海栗
故郷探し!

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15.チョコくれるならなんだって許そう


 時魔法があればどんなことができるか?

 ファヴは説明の前にネネユノへそう問うた。


 しかし改めて聞かれても、時魔法は物心ついたときからそこにあるものだ。ネネユノにとって、一般の人々が期待するほど特別な能力ではない。だから答えに困ってしまう。


「うん……? 怪我を治せるでしょ、壊れても戻せる、相手の攻撃を止められる……」


 指折り数えても普段やっていることばかりで大したものは出てこない。


 そこへ食事の載ったトレーを手にシャロンがやって来た。トレーをテーブルに置く際にスープが少しこぼれたようだ。


 ユノがこぼれたスープを顎で指すと、シャロンは口角をぎゅっと下げて首を横に振る。


「それは戻さなくていいわ。それより、ねぇユノちゃん。またニキビできてたんだけど」

「あ、あと若返りもできる!」

「若返らせろとはまだ言ってないけど?」

「まだ?」


 ホラここ! とシャロンが右の頬をネネユノに近づける。まだ食べている途中だというのに困ったものだ。


「いつできたやつ?」

「昨日はなかったと思うのよねぇ」


 戻すのは半日分くらいでいっか……と、右手にサンドイッチ左手に懐中時計を持って適当に詠唱しておく。

 その様子を見てファヴが眉をひそめた。


「魔力抑制の指輪、持ってはいるよな?」

「あります! て、転送門通ったからとっただけ。これ終わったらすぐに――」

「いや、もうしなくていい。魔力のコントロールもだいぶうまくなったな」

「やったー」


 魔力抑制の指輪は時魔法の暴走を防ぐために必要だった。これはネネユノが生まれながら多大な魔力を有していたせいだ。


 両親がまともに指導できないまま彼女を置いていくことになっため、苦肉の策として持たせたのだろうとファヴが言っていた。


 ついに一人前と認められたような気がして、ネネユノはホクホクする胸を手で押さえる。


「話を戻すが、時魔法に求められる効果としてもっとも重要なのは『解呪』だ」

「解呪?」

「呪いとは魔術の一種ではあるが、行使するための代償が魔力じゃないこともある。その最たるものが……生命」

「なるほどねぇぇぇ?」


 大袈裟に頷いてみせたのはクローだ。

 手鏡を覗き込みながら頬の様子を確認していたシャロンがクローを睨みつける。


「るっさいわね」

「いや、だって。生贄とか使うような呪いは術者を特定しない限り解呪できねぇんだよ。同じだけの代償を用意すりゃできるけどさぁ」

「そう。特に術者が死亡しているものは本当に厄介だ。たとえば百の死者を出した呪いの書を知っているか? 読めば死ぬ、燃やそうとすれば死ぬ、しかし解呪はできない……それを可能にするのが時魔法というわけだ」


 ネネユノは手の中の懐中時計をくるくる回しながら、分厚く古い本を想像してみた。

 開いても燃やしても死ぬ本をどうにかしろと言われたら、確かに呪いを付与される前の状態に戻すしかないか。しかし。


「いつ呪われたかはわかるんだよね?」

「いや……たまたま発見された遺物などはお手上げなんだ。だから、たとえば本なら装丁から作られた時期を推定し、ほぼ新品の状態へ戻すことになる。解呪されたかどうかは腕利きの魔術師が見ればわかるな」

「じゃあ百年分戻すこととかもあるわけ?」

「ある。そういうものは戻すのにも時間がかかるし、後回しにされやすい。それで時魔導士の里は呪いで溢れた」

「それなら里を隠すのも納得ね。強い呪いがかかったアイテムって高く売れるもの」


 シャロンが白身魚のムニエルにナイフを入れながら言う。


 元貴族だと知ると一層その所作が優雅なものに見えた。だがその手は貴族令嬢のものではない。何年も斧を振り回した戦士の手だ。だがシャロンはきっと元の美しい手に戻せとは言わないだろう。


「それで時魔導士たちは王家から呪物を引き受ける役目を与えられて、辺境に隠れ住んだんです!」


 そう目を輝かせるのはヨナスだ。

 ヨナスはネネユノが時魔導士だと言い当てたばかりか、里の場所へ案内するとまで言っている。しかし彼自身が時魔法を使えるわけではない。一体どういう立場の人間なのか、とネネユノは首を傾げた。


「住人だった俺は、里が隠されていたとは知らなかったがな。さぁ、そろそろ行こう。ヨナスの家までここから3日はかかるぞ」

「ヨナスの家ェ?」

「はい! 僕の家は代々、王家と里の連絡係をしていましたので。父なら里のすぐそばまで案内できるはずです」


 連絡係か、なるほどねーと納得している場合じゃない。ファヴは荷物を背負い歩き出しているのだ。


 ネネユノが慌ててサンドイッチを口に詰め込む横で、シャロンは食べ終わった食器類を片付け始めた。食べるのが早すぎる。いや違う、にきびを治させている間もシャロンは食べ続けていたのだ。許せない。


 むぅ、と眉を寄せたネネユノの口の周りを、シャロンがナプキンで拭う。


「ほらまたソースつけてるわよ。あと調理場のおじさんがチョコレートくれたから、後で一緒に食べましょう」

「シャロン好き」

「なによ、それ」


 チョコレートをくれるなら全て許してやってもいい。チョコレートは人を幸せにする。

 鳩のクリスティンに狙われる心配がないというのが最も素晴らしい。


 そうして5人は、バルバーソ討伐のヒントを得ようと時魔導士の里を目指して塔を出る。まずはヨナスの家だ。そこで里の詳細な情報を得る予定になっていた、のだが。




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― 新着の感想 ―
「チョコをくれれば」って、あかんやろ!!
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