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時魔導士ネネユノの探しもの。~理不尽にパーティーを追放された回復役の私、実は最強でした!?~  作者: 伊賀海栗
故郷探し!

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16.本当はちょっと不安だった


 ヨナスの家はこの国によくある一般的な家屋であった。ネネユノにとっては憧れの、「普通のおうち」というやつである。


 ただし、南北に長いこの国においてネネユノが育ったのは南の端で、ここツリフト丘陵地は北の端だ。よくよく観察してみれば、見慣れた家屋より柱が太くて壁が厚い。ちゃんと確認しなかったけれど、屋根もとんがっていたかもな、と思う。


 家へ入る前に見えた小さな日時計は夕日を受けて長い影を作っていた。


「ファレス団長と同僚のカバナさんが時魔導士の里のご出身なんだ。それで里の場所を教えてほしくて――」


 家へ入るなりそう告げたヨナスに、出迎えた父親はネネユノたちを一瞥しつつ「知らん」と眉根を寄せた。


「愚息が何を言ったか知りませんがね、わたしゃ怪我で退役して以来恩給を頼みに暮らしてるだけです。好きな酒を週に1回ちびちび舐めるのが楽しみでね。古傷の調子がいいときにゃちょっとその辺に散歩に出掛ける。それだけです。何も知らない。あんたがたの期待にはこたえられません」


 ヨナスの説明によると彼の父親は王家と時魔導士の里を繋ぐ連絡係だった、とのことだ。しかし本人はこの調子で取り付く島もない。


「父さん、なんで――」

「別に出て行けとは言わん。皆さんお疲れだろうから、今日は泊まっていただきなさい」


 それだけ言うと、一行に背を向けて奥の部屋へと引っ込んでしまった。

 困惑しつつ「すみません」と謝るヨナスの肩を、ファヴが二度叩く。ネネユノもへらっと笑って背負っていた荷物を置いた。


「大丈夫だよー」

「ユノちゃん、割と平気そうね。ご両親探すためにお金貯めてたでしょ。もうちょっとだったのにって思わないの?」


 愛斧を壁に立て掛けながらシャロンが首を傾げる。


「ううん、むしろちょっとホッとしちゃった。パパとママがもし生きてたらさ、どんな顔して会えばいいのかわかんなくて」


 迎えに来るって言ったのに来なかった。


 死んだものと思えば気にならないが、里に行って両親が存命だったらどうしよう、と不安になるのだ。ここまであっという間に答えに迫ろうとは思っていなかったから、魔術塔を出て以来ずっと緊張していた。


 だから、知らないと言われて安堵したのである。

 ファヴも理解を示すように頷いた。


「まぁ、里が近いのは確かだろうし、適当に探すさ。そのうちユノの気持ちも落ち着くだろう」

「でもよォ、ヨナスの勘違いだったって可能性はねぇの?」


 クローはそう言いながら勝手にキッチンに立ち、湯を沸かし始めている。棚を開けては閉じてお目当てのものをテーブルに並べているようだ。ネネユノはクローのそばに行って様子を窺うことにした。


 クッキーの缶まで開けるのはやり過ぎだと思いつつも、ネネユノは共犯になるほうを選ぶ。クッキーは美味しそうなので仕方がないのである。


「むしろ確信に変わったよ。普通の人間は時魔導士の存在をこそ最初に否定するはずだが、彼はそうしなかった。それに」

「それに?」

「ヨナスが『同僚のカバナ』と言ったとき、一瞬ではあったが彼は迷いなくユノを見たからな。恐らく、ユノの両親を知っているんだろう。ユノ、髪の色は母譲りか?」

「うん。髪も目も」

「なるほどねぇ~」


 確かに、ヨナスは紹介するつもりでその言葉を発したわけではないし、ネネユノを指差したわけでもない。普通なら性別さえわからないはずなのだ。


「実は僕も連絡係だと聞かされたことはないんです。でも僕だって月侯騎士団に入れる程度には魔術に理解があるので、呪いのアイテムが届けられればわかります。今までは気付いていない振りをしてましたが、時魔導士が里を探してるんだから……。うーん、もう少し父と話をしてみます」


 ヨナスが奥の部屋へ入るのを見送って、ネネユノはクローとともにお茶会を始めた。


 クッキーは少しシナモンの風味がする。お茶にリンゴのジャムを混ぜて飲めばまるでアップルパイみたいだ。フリーランドで食べたアップルパイは美味しかった。


 ただ、食事中に若い女がファヴを取り囲んでいたのには少々辟易したが。そういえばファヴという男は黙っていればイケメンなのである。


 邪魔だと思うなら黙ってないで邪魔だと言えばいいのに、とイライラしたことまで思い出してしまう。


「あら。あんたたち、なに勝手に寛いでるのよ」

「シャロンも飲む?」

「思ったよりいいお茶飲んでるのね、この家。もちろんいただくわ」

「ファヴは――」

「静かに」


 ファヴが右手を挙げる。そのまま瞳を閉じて微動だにしない彼に倣い、ネネユノたち3人もなんとなく耳を澄ませてみたところ……。


「なに、この音」


 ネネユノが眉をひそめる。


 ゴゴゴゴ、と地響きのような重い音が遠くから近づいているのであった。さらに集中してみれば、生物の咆哮あるいは絶叫も聞こえてくる。


 ()()と判断した後のファヴ、シャロン、クローの動きは早かった。立ち上がり、武器を手に取る。


「シャロン、先に行け。クロー、念のため周囲に民家や人影がないか確認してから合流。ユノは……」

「んっ」

「食いながらでいい」

「いいんだ」


 クッキーを一生懸命ハンカチに包むネネユノを小脇に抱え、ファヴは先に出て行ったシャロンの後を追った。

 こちらに迫っているのは魔物。しかも互いに殺し合うほど興奮しきった群れだ。


「クッキーいっこ落とした!」


 ネネユノの絶叫は無視された。




お察しの方がほとんどかと思いますが

ストックが切れました


以降の更新は書けたら出すという感じになります。

別件で少々立て込んでおり、しばらくお待ちいただくかもしれませんが

そっちが落ち着けばもっとコンスタントに出せるはず…なので…!


それと!

「私に内緒は通じません。~婚約破棄された令嬢はその夜、難攻不落の伯爵様と運命的な出会いをする~(https://ncode.syosetu.com/n4181jm/)」

こちらがコミカライズされます。

詳細は別途、活動報告等でお知らせする予定です(どうしてここで言うのだろう)。

よろしくお願いします!!

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