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久しぶりに戦ったわ。

強い奴にはやっぱり「下」が出来ますよね。

 青空だった天気が急に暗雲が広がる中、ティアからの称賛の言葉を貰う。


「凄かったよ、ゼロ君。」

「ありがとう、ティア。……ぶない!」


 俺はティアを抱き寄せたまま、後ろに大きく飛んで下がる。


 ズゥン!


 ……俺とティアが居た場所には、バスターソードが刺さっていた。


「匂いを手繰(たぐ)って来たが居たな。」

「お前は誰だ?」

「オレか? オレはその他大勢の男爵級悪魔だ。まあ、序でに言うと『兵士』をやっているギランガだ。」


 それを聞いた俺は、冷や汗を流した。

 そして、外野が騒ぎ出した。


「何だ、アレは?」

「あんなモンスターが居たか?」

「コレは余興?」


 ……不味い。


(ゼロ!)

(ああ。)


 俺は広範囲に「刻心掌握」を放つ。

 これで少なくとも学園でまだ意識が有るのは、学園長と俺達くらいの筈だ。


「ゼロ! どういう事だ!」


 青い顔をした学園長が体裁をかなぐり捨てて警戒しながらやって来た。


「ゼロ! 『アレ』は、『何』だ?」


 多分、「元」とはいえ、聖女であるが故に、強さを感じ取っているのだろう。


「簡単に言えば、歴代の大聖女達が知る悪魔は爵位に関係なく、全て悪魔としては『一般人』です。」

「え!? い、一般……人?」

「そして、『あいつ』は、悪魔の『兵士』です。」

「……あ……」


 学園長は俺の言った言葉を理解したからこそ耐えきれなくなり気絶した。

 まあ、この後の事を考えたら、むしろ良かったか。

 全て、終わった後にでも口裏を合わせよう。


 俺は学園長を闘技場の壁の隅に運び、皆を呼び寄せて、物理、魔法に対しての結界を張る中、合間に悪魔の「兵士」を見るが大人しくしている。


 結界の外、つまり戦う者は、俺とキサラのみ。


「待っていてくれた事に感謝する。」

「折角、地上に来たしな。話の通りなら、あんたと戦えるのは嬉しいからな。」

「そうか。」

「準備は良いな?」

「ああ。」

「魔界七公爵が1人! アスモデウス閣下の配下! 兵士のギランガだ!」

「冒険者のゼロ! いざ、尋常に……」

「「勝負!!」」


 流石は「兵士」だ。

 今までの「一般人」とは違うな。

 やはり、同じ攻撃でも「技術」が伴うと、結果も変わる。

 ギリギリに避けようものなら、剣の刃に付与された魔法で身を切り裂かれるかもしれない。


「どうした? ゼロ!」

「勿論、確認さ。この身体(・・)で『兵士』と戦うのは初めてだからな。」

「そうかい。で、どうだ?」

「ああ。身体が(ぬく)もって来たな。」

「それは良かった。それなら、こっちも上げで行くぜ!」


 俺は両手両足に魔力を纏い、コレを防具代わりに使い戦う。

 正直、地上の防具は悪魔の「兵士」には、紙装甲で直ぐにボロボロになるだろう。

 そう思いながら、ギランガの攻撃を少し大きめに避ける。


「どうした? それでも魔界の頂点に立った悪魔か!」

「無茶言うな。数百年掛けて作り上げた身体じゃあないんだからな。」

「たった数百年で、魔界の頂点に立てる身体を作れた事自体が異常なんだよ。今までに、見た事が無い攻撃をしてくるとか。見せてみろよ!」

「ああ。良いぜ。」


 俺は、ギランガが上段からの振り落としを躱した時に空手の前蹴りの要領で剣を握っていた小指を潰した後、蹴り足を入れ換える反動で剣の腹を蹴る事で隙をつくり、ギランガに密着と言える程に近接する。


「痛てて……。確かに、素手と剣。ましてや、バスターソードでは攻撃範囲が違い過ぎるが、これじゃあ、ゼロもまともな攻撃が出来ないんじゃないのか?」

「そうでも無いぜ。」


 ドゥン!


「がはっ! ……何だ、この衝撃は!?」

「どうだ、効くだろう。何せ、身体強化や魔力の強化なしでも、ゴブリンなら、花火に出来るのだからな。勿論、身体強化や魔力を纏った一撃だ。充分にダメージを与える事が出来る。」


 日本人の時に良く読んだ格闘系や武闘・武術系の技から修得した拳撃だ。

 そして、「溜め」等が必要無く、ボクシングの様に連撃が出来る。


 ドゥン! ドゥン!


 ギランガは、俺から離れようとするが、そんな事を許す訳もなく、バスケみたいに離さずにいた。


「ぐはっ! ぐふぅ! ……冗談キツいぜ。これでも人族という『器の限界』が有るのにな。だがな、確かにダメージは受けるが、決定力に欠ける。それはどうするんだ?」

「それも解決済みだ。」


 ドゥン!


「がはっ!」


 俺は離れる前に一撃入れて、離れた。

 そして、左手を水平に伸ばす。


「キサラ!」

「やっとアタイの出番だ!」


 キサラの身体が光り、キサラの本来の姿を現し、俺の左手に握られる。


「……何で、女を1人だけ結界に入れないのか疑問だったが。それは、……鬼神刀か!?」

「ああ。元は誰のかは知らんが、今では、正式に俺の『物』だ!」

「確かに、鬼神刀なら互角の勝負になるな。」

「……互角? 違うな。」

「どういう事だ?」

「俺の……圧勝だ!」


 そこからは、騎士団長と新米騎士の模擬戦の様な展開になった。


「ちょっ、何で武器1つでこんなに差が出るんだよ!」

「そりゃあ、お前のは量産品で、俺のは、一騎打ちを目的にしている鬼神族の鬼神刀だぞ。人族の肉体とはいえ、素手でお前より強いのに、その俺に『鬼神族』の鬼神刀を使っているんだ。当然の結果だろう。」


 言葉を交わしながらも、お互いに剣撃を繰り返す中、そろそろ終わらせる為に、ギランガの上段からの振り落としをギリギリで避け、剣の追加ダメージの付与を魔力の纒で受け流して、あの「拳撃」を右脇腹、顎に連続で入れ、出来た隙で、鬼神刀を心臓に刺し致命の一撃を入れた。


「がはぁ……」

「終わりだな。」

「ああ。」

「ギランガ。何故、地上に?」

「兵士のオレが言う訳ないだろ。」

「……そうだな。」

「だが、アスモデウス閣下の『兵士』であるオレが動いたんだ。分かるだろう?」

「はぁ。あいつら、まだ諦めていないのかよ。」

「そういう事だ。楽しかったぜ。じゃあな。」

「ああ。俺も楽しかったぜ。じゃあな。」


 俺の鬼神刀でギランガは漆黒の霧となって霧散した。


(お疲れ、ゼロ。)

(お疲れ、ライオス。久しぶりに戦ったわ。)

(しかし、あいつらが動くとなると、これからのゼロの人生は更に波乱万丈だな。)

(言うなよ、ライオス。気が滅入るだろ。)

(まあ、頑張れ。)


「ゼロ、楽しかったよ。」

「キサラは大丈夫か?」

「アタイは鬼神刀だよ。大丈夫よ。」

「そうか。さて、皆に事情説明をして、口裏を合わすか。」


 俺は皆の所に戻り、学園長をお越し、表向きな説明をして、場の混乱を収める為の口裏を合わせた。



暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。


8月10日は区切りが付く為、2話連続投稿します。

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