うるさいよ!
外見では分からない強さ。
俺は、闘技場に立っている。
観客席には、生徒が観戦している。
まあ、学園長に話をしておかないといけないし、生徒達へのお勉強って所か。
でも、学園長、良いのか?
俺の考えが実行出来たら、この国の職としての騎士の支持率が下がるかもよ。
まあ、その辺りは俺が考える事でもないか。
「さあ! 誰と戦う?」
「先ずは1番強い人。」
「良いだろう。カーマイン、出ろ。」
「はっ!」
「この者は、我が国の近衛騎士団長の嫡男で次期後継者だ。」
「レオナルド皇太子殿下。私など、まだまだでございます。」
「そうか。だが、今はこの者に、我が国の強さを示せ!」
「仰せのままに。」
「これより、模擬戦を始める。……始め!」
少しの間は、睨み合いが続いたが、俺から動き剣と剣が衝突する。
「結構やるではないか。」
「それはどうも。」
「私と対峙して揺るがぬ精神に軽口を叩く度胸。大したもんだ。」
「貴方も流石は近衛騎士団長の嫡男にして、次期後継者だ。結構、強いな。」
「おいおい。オレと戦って、その程度の評価か?」
「実際、その程度だし。」
「良いだろう。指導のつもりだったが、辛い現実を教えてやる。」
「そうかい。」
そういやあ、誰かが言ってたな。
物差しが1mからしか測れないから、1mmと3mmの差が分からない、だったかな。
「ぬぅ! はっ! がぁ! ぎぃ! ふん! ぐっ! がはぁ!」
向こうの袈裟斬りを俺は剣で受け流し、上段からの攻撃をギリギリに避けて、剣の一撃を相手の左腕に当て、その勢いを維持したまま回転して背筋のバネを使い肘撃を左脇腹に打つ。
向こうも接近した事を利用して横なぎ払いを仕掛けるが、屈伸して躱し、屈伸のバネを生かして鳩尾に左膝蹴りを打ち、相手の両腕が下がった所を剣の腹で喉を打つ。
「勝負有り、かな?」
「勝者ゼロ!」
「ば、馬鹿なぁ!?」
結構大きな声を出して驚愕しているな、レオナルド皇太子殿下。
一応、この国の者としては、申し訳ない気持ちなのだが、我が儘を言って来たのが、向こうだし。
何より、ティアとの邪魔はさせん!
「ぐ、偶然だー!」
「ほう。近衛騎士団長の次期後継者が偶然程度で土を付けると?」
「ぐっ。」
「まあ、良いだろう。次を出しても良いぞ。」
「次だ、と……」
「ああ。次は、3人組か4人組の連係が得意な人。」
「ああ。良いだろう。ベルダ! アルザ! ザイン! ダルガ!」
「「「「はっ!」」」」
「カーマインの汚名を晴らしてやれ。」
「「「「仰せのままに。」」」」
1人、魔法使い系が居るな。
「卑怯などと言わないよな?」
「ええ、勿論です。レオナルド皇太子殿下。」
「準備は良いか? ……始め!」
開始の合図ともに、魔法使い系は詠唱を始め、他の3人は俺を倒す隙を伺いながら、俺の動きを止める為に足を、攻撃を止める為に腕を狙って来る辺りは、流石は皇太子殿下の護衛を任された次代の精鋭で素晴らしい連係だ。
しかも、3人の中でメインを担当する騎士は、魔法使いに対して俺が背を向ける様に誘導してくる。
俺自身が精鋭の連係攻撃を充分に堪能した所で終わらすか。
「ぬぅ。すばしこいガキだ。」
「それは、俺の格好で推測出来るでしょう。」
「それにしてムカつくわね。当たりゃしない。」
「お姉さん。笑顔、笑顔。」
「うるさいよ!」
「じゃあ、行くよ。」
「がぁ!」
「ぐぅ!」
「あっ!」
左側に居た剣を振り落とし中の騎士に、自分の剣を使って払い落として空振りさせて、剣の払いの勢いのまま、右回し蹴りを打ち、右足着地と同時に伸身後方1回転で、右側に居た相手に対して着地の衝撃をそのまま威力に転換して腹に剣の握りの部分で一撃を入れる。
1人突っ込んで来た騎士のお姉さんを、ひらり躱して手刀で首にトン。
このタイミングで魔法使い系の魔法攻撃を、気絶しているお姉さん騎士を抱えて一緒に避ける。
そして、お姉さん騎士を魔法使いに渡す。
「まだやる?」
「参った。」
「勝者ゼロ!」
「そんな、ウソだ!」
いや、自慢出来るよ。
あの4人の連係は良かったよ。
ただ、俺が文字通りに桁違いに強いだけで。
それに、魔法使い系の人も凄い覚悟で魔法を撃ったからね。
騎士のお姉さんを抱き止めた時が、唯一、俺の足が止まった瞬間だから。
「さあ。次は、乱闘戦と行きましょう。」
「乱闘戦だと!?」
「はい。必ずしも、戦いとは、試合の様に形式化したものばかりとは限りませんから。」
「良いだろう。皆の者、準備は良いな?」
「はっ!」×残った騎士達
お~。
結構、精神をガリガリ削る試合結果なのに、平静を保っているもんだなぁ。
この国の民の1人として頼もしい。
「準備は良いな? ……始め!」
7分後、残った騎士達18名は誰1人立って居らず、闘技場に立っているのは……
「しょ、勝者ゼロ!!」
外野も最初は、騎士達の勝利は疑っていなかった。
生徒達は、「幾らゼロ講師が強くっても騎士には勝てないよなぁ。」とか言っていたが、俺が次期後継者に勝った辺りから、静かになり、乱闘戦が終了した時には絶望や怒りの顔になっていた。
「何だよ。騎士はこんなに弱いのかよ。」
「ボクらと変わらない子供に負けるなんて。」
……前言撤回
フォローしよう。
「レオナルド皇太子殿下。ありがとうございます!」
「はあ!?」
「レオナルド皇太子殿下の騎士様に指導頂き、今日まで鍛練を続けた結果、これ程の戦いが出来る様になりました。」
「おい?」
「ご指導ありがとうございました。これで、レオナルド皇太子殿下と同じ学園で学んだ友人を守れる強さを手にする事が出来ました。」
「……」
フェリシアがつつぅと、レオナルド皇太子殿下の斜め後ろに付く。
「レオナルドお兄様、此処は認める言葉を言わないと。」
「……あ、ああ。」
フェリシア、ナイスフォロー。
「う、うむ。友人はこの学園で共に学んだ者達の1人だ。頼むぞ。」
「はっ!」
コレを聞いていた外野は、「何だ。そういう事か。」とか、「そりゃあ、そうだよな。」とか、「やっぱり努力は必要なんだ。」とかを言っていた。
……俺のフォローは報われた。
何時の間にか、外野から降りていたティアが俺の横に居た。
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。
レオナルド皇太子殿下の闇堕ちを考えましたが止めました。
書いている内に、同情心が芽生えたから。




