表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第五章 [闘技と事件と騒動と]
99/100

八十三話 水を呑む巨影

 何かと思えば、アオミズモリ。皮を剥いでよく焼けば、とても香ばしい薫りがする。地域によって調理法や味付けは様々で、私はアオミズモリを利用した料理の中では、照り焼きが一番好き。


 つまり彼らは食糧、捕って食うべし。

 かったるそうにキャラバンから降りてくる冒険者。さも無害な生物を相手するように、武器も何も構えず近付いていく。

 まあ、アオミズモリ自体は穏和な性格。逃げ足が遅すぎるので、外敵が現れたらのっしのっしと逃げるか守りに徹するのみ。水に入ったら割と速い。


 忘れちゃいけないのが、彼らの皮膚からドクが分泌されていること。

 触ったら炎症を起こすぐらいで、そこまで強力ではない。しかしながら、粘性があって洗っても落ちず、とても厄介。肌を気にする乙女たちの天敵である。

 治癒が出来る魔法使いか、解毒剤があればいいんだが。


 さて、私は後方支援といきますか。


 すかさず後輩の目を盗み、冒険者に紛れて戦略的な後ずさり。我らがオーガと銀髪、頼りないが威勢は良い後輩がいれば安心……。


 いやまて。一瞬で解決できる方法を編み出した。


 後ずさりをやめ、後にいるオーガの背中を叩き、身長差の耳打ちをする。


「おい、風魔法をぶっ放してやれ。それで解決だ」

「よっしゃ任された。おーいオメェらどいてくれ」


 話が速すぎて助かるわぁ。

 頭の中で何も整理せずに受け答えたロンゴ。ズイズイと進路上の冒険者を掻き分け、最前線へ。


 そして例の魔法の発動準備。おぞましく汚らしい色が集約されていき、大きな手の中へ納まっていく。


 風の噂でどんな魔法か知っている者、その目で直接見た物は、苦虫を噛み潰したような顔で引き揚げる。

 知らない者は、鬼人オーガという物珍しさに見入り、何をしでかすのか固唾を呑んでいる。


「あ、ロンゴさんがまずいです。アイシャさんに吹き込まれましたねあれは」

「もう勝手にやらせとけ」


 なんか後輩と銀髪が睨み付けてくる。

 また私、何かやっちゃいました?


 なんて思っているうちに。


「出力抑えめどっせいやああああ!!」


 楽しそうな波動砲が、アオミズモリの寝顔へストレートアタック。

 とはいえ、埃が舞うかのようにアオミズモリが散り散りになる訳でもなく。

 買い物帰りに遭遇したら、ちょっとイラッとくる程度の強風と、気を抜いたら胃液が逆流しそうな悪臭が彼らを襲うだけだった。

 それでも充分脅威だけど。


「お? あいつら逃げてくぞ」

「捕まえなくていいのか? 俺は食ったことねぇけど旨いらしいじゃん?」

「いいだろ別に。今獲ったって、誰が血抜きやら調理やらするんだよ」


 鈍感なアオミズモリでも流石に効いた。なんとも表現できない声を上げ、ヌルリと着水していく。

 とりあえず剣を出していた者は、呆気なく事態が解決したことに『なんだかなぁ……』といった感じで、剣を鞘に収めた。


 冒険者共々は自分の席に戻って談笑を再会し、御者は仕切り直して長旅を再開する。

 先頭が橋を渡ろうとしたその時。


バッシャアアアァァン……!


 川の上流で、見上げる程の水飛沫が立ち上がった。霧状になった水が小さな虹を描く中、水柱に紛れて、首を伸ばした大きな亀が現れた。


「ほー。こりゃたまげた」


 これが、先頭にいた御者さんの反応。

 この御方、鋼の精神をお持ちであった。


 あー、なんだっけか、この怪物の名前。ティタータンだかなんだか。タ行ばっかなのは覚えてる。基本的には何でも食べる雑食で、食事の回数が極めて少ないとかなんとか。


 三角形の頭部に、カメレオンのようなギョロリとした目玉。地味な灰色の皮には、幾つものシワやたるみがある。鼻先には、紐状の器官がだらしなく垂れ下がっている。

 尖った口元には、先程とんずらしたアオミズモリの一匹が咥えられている。


 ……咥えられているのだが。


ペッ…………ジャポン…………


 とても食えたもんじゃないと判断したのか、勢いよく吐き出して水面に叩き付けた。

 あのこ、かわいそう。しぜんはきびしいなあ。


 若干どよめいたキャラバンだったが、何事も無かったかのように先を急いだ。


「なんか臭くね?」

「えっなんか、えっ臭っ。なにこれ、いや臭っ」

「どっからこの臭っ。臭いがくるんだ臭っ」


 声を潜めて、空気の不純を感知した冒険者の会話を聞きながら、優雅なる旅路を凱旋する。

 ……フッ、今回も私の出る幕ではなかったな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ