八十四話 到着
そんなこんなで、悠々自適と列を成すキャラバン隊は、着々とジトラピアへ歩みを進めていた。
ジトラピアに近付くにつれて、緑豊かであったエルメス近辺とは一転し、廃れた色合いの岩や大粒の砂で覆われた世界に。見渡す限りの砂岩には、思わず口を半開きにしてしまう。
この乾燥した世界に来てからも、怪物の襲撃は度々起こった。
「まって生理的に無理! 生理的に無理なカタチしてる! いやああああこっち来た!」
「落ち着け小娘! 魔法を乱射するな! オレに当たるって……あぁぁぁああ目がああぁぁあ!!」
最初の刺客は巨大ワームの群れ。砂中を移動し、震動で獲物の位置を把握する代表的な怪物。予兆もなく、突如として急襲された。
催涙ガスをぶっかけられたが負傷者はなし。
「やっべ。オーガが泡吹いて白目向いて倒れちまった」
「誰か解毒できる人呼んでください!」
次の刺客は巨大サソリ。砂に擬態する色合いで、そんなに強靭ではないハサミと、強力な毒を含む針が特徴。道中にある洞穴で休息中、襲撃された。
負傷者は一人だが、直ぐに治癒をしたため実質無傷。
「おっしゃこいや! オレ様が相手してく」
「ロンゴが喰われた! 早く助けないと!」
最後の刺客は大蛇。前脚はあるが、後脚が無い蛇。自然に造られた岩の柱を通り過ぎる際に襲撃された。
柱を崩壊させながら粘液が混じった砂塵を吐き、縦横無尽に突進し、へらのような尻尾を打ちつけ、キャラバンを半壊させた。負傷者多数、撃退する形で戦の幕を閉じた。
「アイツだけ踏んだり蹴ったりじゃん笑える」
「ロンゴだって必死に生きてんだ。笑ってやるな」
「そうですよ! ロンゴだって一生懸命生き長らえているんですから!」
「オメェら……それって励ましてるのか?」
そんな刺激的な体験をするものの。変わり映えのない景色に加え、気温の上昇が伴ったために会話が途切れ、気力が削がれ、乗客のストレスが溜まりつつあるこの状況。
打破すべく盛り上げようにも、相手がその気でなければかえって逆効果となる。
それは、私が乗っている箱でも同様であるのであった。
後輩はこの世の不条理を悟ったような生気を失った顔をしている。時々、水を飲むので生きている。どうか気を確かにしてくれ。こっちが不安になる。
銀髪は堕落しきって、私が座っているにも関わらず椅子に横たわって占領して就寝。時々、蹴ってくる。どうかやめてくれ。地味に痛い。
オーガはもうだめかもしれない。乗り物酔いと死闘を繰り広げている。時々、嗚咽している。どうか吐かないでくれ。頼むから。
「ジトラピアの名物と言えば、果物でしょうな! いや、トカゲ肉も外せませんな。お客さん、ジトラピアは初めてですかい?」
「まーね」
「ジトラピアまでもう目前、財布に余裕があるならば、色んな店で食べ比べするのも乙でしょうな!」
「ほほー」
「ですが気を抜くことなかれ、荒くれ者もいますからね。もともと血気盛んな人が集まる国ですから、闘技大会も文化として生まれたんですよ」
「そりゃすごい」
「そうそう、闘技大会といえば───」
黙する人々と長居するだけで、こうも精神的な負担がかかるとは。長旅は良いことが一つもありゃしないなぁ。
それでも、御者さんだけは絡んでくる。私以外の他三人が受け答えしないせいで、私がターゲットとなってしまった。
素っ気ない態度で返しているが、マシンガントークは止まる気配がない。
よくもまぁ、連日絶えずに違う話題が出ること。
しかし、そんなおしゃべりさんとのお別れの時間がやって参りました。
そうです。ジトラピアの街が見えてきました。
「……おーい後輩、もう直ぐ着くぞ」
「………………」
反応、無し。
御者さんの話を聞き流しながら、銀髪お嬢さんの脚をぺちぺち叩く。
「ん……んぁ? どうかしました?」
「着くぞ。起きろ」




