七十七話 肩慣らし
─高原─
今日も今日とて、冒険者のハローワークへご来訪。そして、ぐだぐだと依頼を決めて各々の職場へ赴く。
俺ことロインとアイシャの平凡グループ、ロンゴとセリスの魔法使いグループの二手に分かれて依頼をこなす。
魔法バカ二人は何故か大物の討伐に固執しており、後先考え策略戦法企てず、ノリと勢いで受注している。自爆行為紛いだが、もう慣れたし、説得も半ば諦めてる。
まあ、彼らの戦闘力は並大抵ではないのはリーダーである俺がよく分かってる。どんな強敵でも、相手にとって不足無しだろう。
本日もまた、ゴツくて強そうな怪物を仕留めに行った。もちろん、自身の階位で請けられるもの。
『犯罪に手を染めなければ、もう好きにやってくれ』と忠告だけはしておいた。もっとも、どこかのアイシャとは違い、善悪は判断出来る人と鬼人なので、杞憂かも知れないが。
キャッキャとお使い感覚で集会所を飛び出した兄貴と小娘を見送り、俺とアイシャで受注した依頼はというと……。
「……道のりが険しすぎやしないか? 砂利だらけだわ登り坂だわ。キャクチョウもなければ、後輩にゃ先輩に対する敬愛心も心遣いの片鱗もない。哀しくなるぜまったく……」
「『なあ後輩、これめっちゃ楽で稼げるぜ? 高原だけど近いし、大型の怪物の目撃情報は無し! こんなんガキから金塊を盗るより簡単だろ!』」
「何言ってんの後輩、ガキから金塊盗るなんて蛮行……お姉さん許さないよ?」
「全部お前の戯言だ。こんな真性のクズが先輩気取ってるなんて片腹痛いわ。無責任な事ばっか言いやがって、今回ばかりは逃がさねぇからな」
「疲れながら説教しても怖かないぞっ」
「呆れてんだよダボが」
「ダボ……?」
とある生物から剥ぎ取れる、素材の納品である。これまた、アイシャの鈍く光るセンスによって請けたもの。
要するに、地雷の可能性大。
誠に不思議なのだが、アイシャが目を輝かせて選んだ依頼は『報酬金が高額』であり、『誰も手を付けない』ものばかりなのだ。
危険な怪物の討伐とか、入手困難なレア物の納品ならまだ疑念の余地もない。だが、それがただの納品依頼なので、俺の第六感が虫の知らせを受信している。
「睨んだらシワが増えるよ? そんな後輩に朗報! これから手にする素材、美肌効果に加えて病気の予防効果があるのだ!」
「そうかい。土産だとセリスにでも渡しとけ」
この女の相手をするだけで精神が削られる。
高原と言うこともあり、ちょいと肌寒く草木はやや少なめ。色褪せた世界観とも相まって、一種の山岳地帯に似通う風貌である。
「───ってのが、『変異スライム災害』。為になっただろう後輩?」
「『会話の続きですよ』みたいな感じで話しかけないでくれる? ここまでの道のりでそんな会話してないぞ?」
「しゃーねーなぁ。じゃ、無知な後輩のために知識を与えてやろう。まず、スライムの変異種が生まれた経緯だけど」
「おおっと、怪物が視界に映ったぞ。臨戦態勢並びに狩り、依頼素材の剥ぎ取りだアイシャ」
砂利道にナニカがいた。地中に巣を張っているのか、地表に直径五十センチ程の蓋をして穴に引き籠もっている。
ちょっぴり開いた蓋の狭間狭間から、ガンを飛ばしてくる。
「前提知識としてスライムは同胞を喰って巨大化する事も出来るそしてスライムは本来気温が下がる冬になると活動を停止するんだけどそのなかで活動を持続する変異個体が出て来ちゃってそいつが休眠状態のスライムを捕食しちゃってめっちゃデカくな」
「なあ、アレから目的の素材が手に入るのか?」
「せやで。あの『ツチアラシ』どもの胃袋を取ってくりゃいい。土壌汚染する、憎たらしい奴らよ」
「俺はお前が憎い」
「はっはっは。ま、てんで大した毒も凶暴性も、内蔵ぶちまけるなんてこともねぇからちょちょいと終わらせようぜ」
アイシャのことを信用しきった訳ではないが、特段身構える必要もないと。つまらない会話をして、例のツチアラシに接近する───
「……おい、こっち来いや」
が、アイシャはその場で仁王立ちしたまま。
「行けたら行くわ」
いい度胸じゃねぇの。




