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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第四章 [其れは生命、大地の化身]
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七十話 優勢を保て。意識も保て。

 錯乱状態の暴走機関車が一直線に向かってくる。

 何年も冷暗な地下空間に閉じ込められていたバズーカ砲。付録の解説書を流し読みして、最低限の操作方法を会得した店主さん。一人で弾を補充して銃身の側面に装着されたスコープに右目を覗かせ、何キロメートルも先の的に目掛けて引き金を引く。


「よいしょお!」


 骨の髄まで伝わる反動を誤魔化すために、根性を張り上げる商業者の森の住人。一発、二発、三発と休みなしの連続攻撃で甲殻、角、肩からすすと黒煙が巻き起こり、風に流される。


 どれも各部位に打撃を与えた筈だが、勢いが滞る様子が見受けられない。それどころか、被弾する度に段々と底力が発揮されていき、走力が向上している気がする。闘争心を駆り立ててしまったのだろうか?

 火薬が右後脚を爆砕した影響もあり、走るのが困難になっているが、それでも『大地』は猪突猛進。


「あれ、おっかしいな? 全然効いてる感じがしないんだけど! 見かけの割に威力は無いのかなぁ……結構高価だったのに、弾があと二発分しかない……」

「そう項垂れるな店主。効いてるっちゃ効いてるぜ? ただまぁ、火薬で負傷したぶんだけ手負いになってるし、死中に活が入ってみなぎってきたんだろうな」

「そんなことある?」

「あるんじゃね? ……よーし店主、前脚を狙え。あんだけ強烈なんだ、弾が命中したときヤツにもそれなりの反動が来るだろ。上手くいきゃあ転倒出来るかもな。がんばっ」

「そう簡単に言うけどね、予想以上に難しいんだよ大砲コレ。弧を描いて飛ぶから癖もすごいし……」

「じゃあ貸してみろ。カッコいいおねーさんが手本見せてやる」

「弾が勿体ないから、遊ばないでよ?」

「誰が遊ぶかよ。……っと? 後輩と銀髪じゃん。もう直ぐ到着……後輩の顔、逆風ですげぇことになってる」

「余所見しない!」


 選手交代して、店主さんが支える係でアイシャが射撃手。スコープを覗き、世界の一部を何倍にも拡大させて狙い澄ます。武器の性質上、適当な角度に合わせないと届かず仕舞になったり通り越してしまう。


 色々と徒疎あだおろそかな彼女に任せたくはないんだけど……私の肩甲骨も限界を迎えそうだし、不安しか残らないけど致し方ない。アイシャさんの腕前を信じよう。

 弾数は残り二発。『大地』が猛進していて悠長にしていられないが。必中するよう慎重に軸合わせして……


「このへんか、よいしょい!」

バスンッ!

「んふっ!?」


 後先考えない、無責任な流星が放たれた。

 赤髪をはためかせてスコープを覗いたと思ったら、私が衝撃に身がまえる前に、即座に貴重な一発を射出させた。お蔭様で胸部を圧迫された後に似た、肺から空気を押し出すような声が出た。


 彼女の判断力は敵無しと言える。守りに徹しているときはいやうえにも即刻脱兎。ここだと思えば自己完結で即刻執行。それが彼女のライフスタイルであり、アイシャという人間像なのだ。

 天晴あっぱれ、優柔不断の対辺に位置する行動力。


「ちょっと!? 頼むから真面目に狙ってよ!」

「こっちは至って大真面目よ。短時間で狙い澄ました(・・・・・・)から───」


────────────ッ!!


 杜撰ずさんに見えて、所有者よりも精密な射撃。岩壁を射貫く鋼鉄の弾頭は、スローに見えて高速に動く超巨大な右前脚にめり込んだ。同事に、次の一歩を踏み出さんとする脚が爆破された。


 甲殻を砕く威力を誇る弾丸は、歳月を積み重ねて形成された強靭な外皮、鱗を四散させ、『大地』の勢いとの真っ向勝負に打ち勝った。

 はじかれた右前脚は地面と出会えず、バランスを崩して盛大に滑り込んだ。砂浜に上陸した船の跡のように、『大地』の左右には土の小山が出来上がった。


 際立った特徴のない平原には、隕石が斜め向きに衝突したみたいな惨状となる。

 自然の修復作業と題して、冒険者を募って豊かな草原を修繕する未来が目に浮かぶ。


「ざっとこんなもんよ」

「お……おお! やるじゃん!」

「そりゃ的がデケぇからな、外す方が難しいだろ。……んで、どうすんだ? また様子見で時間浪費……じゃねぇな、もう体勢立て直してるよしぶといなぁ」

「あっでも、走ってこないね。着実に弱体化出来てるから、直ぐに路線変更してくれるかも!」


 寸刻、冒険者たちは大砲やバリスタの発射を止めたが、『大地』が進行を開始すると各自働きだした。

 目立つ損傷は与えられているが、後脚がぎこちない以外は特段弱った素振りを見せず。

 機会を窺わず、とりあえず撃ってけの精神で弾を消費していったので、鉛球が仕舞われる木箱も空になっていく。



─ロイン・セリス─

 『大地』に対しての集中砲火、という目的であるのは重々承知しているのだが、それなりの頻度で俺たちに直撃しそうになるんだが。砲弾時々バリスタ弾の悪天候を、見事なキャクチョウ捌きで華麗に回避していくのには反射神経を使う。

 視力には問題はないが、どの辺りに落下してくるか見定めるのが難業であるため、スレッスレを回避することばかり。


「やっと着いた……アイツら、俺たちが残ってるの忘れてるだろ! 何度も流れ弾で死にかけたんだが!」

「怒っても仕方ない事ですよ、他意があってやった訳ではないんですから。それより、私たちも手伝いましょう!」

「こっから城壁登るの辛いんだけど。何メートルあんの? 五十メートルは超えてるよね?」

「大丈夫ですよ。内部には設置型の転移魔法がありますから、一瞬で上部へ行けます!」

「……えっ、じゃあ、城壁を這って登ってた赤い人影は一体……?」

「……ロンゴには、教えてあげない方角が吉ですね」


 キャクチョウは、人間が降り立ったのを確認するとエルメスの大通りを駆けていった。

 城門の真横に作られた扉を開け、ヒンヤリした薄暗い空洞に入る。色んな物質が壁沿いに並んでおり、中央には直径三メートル程の円形が描かれている。


 転移魔法……とても魅力的で利便性に優れているのだが、過去の体験を思い返すと、乗り気にはなれない。


 なんでこんな所で転移魔法を取り入れる必要があるんだ。城壁が高くて上り下りが大変だからか。もっと低くしろ。それじゃ防壁として困るな。やっぱ必要だな、転移魔法。


 というか、転移魔法ってルイシュの特権じゃなかったのか? もしかして、そのルイシュが設置したのだろうか?

 そんな疑問を感じながら、紫色の光を放つ魔方陣に両脚を揃えて、城壁の上部へと転送した。



「よしぅおああっ!? 耳があっ!」


 特殊な任務を終えた二人を歓迎してくれたのは、火薬の臭いと頭が割れる程の爆撃音。

 思わず耳を塞ぎ顔を伏せると隣から何かが倒れる影が見えた。


 影は人型。詳細に言うと、小柄な女性。もっと詳細に言うと、銀髪で俺のパーティーメンバー。


「セリース! 誰か担架! 担架持ってきて!」


 救助を求めるが、騒然とした激戦地では声も掻き消される。ほっとく訳にもいかないので、彼女の腕を自分の首に回して引き摺る。


 この娘は何度気絶すれば気が済むのか……。


 先に到着したであろうアイシャと店主さん、そしてロンゴを探して見渡すと……


「やっほー、後輩。元気してた?」

「ロイン君、お疲れ様。事情の説明無しに帰っちゃってごめんね?」


 一般的な大砲と大砲の間に、なんか凄そうな兵器があって、そこに二人がいた。



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