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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第四章 [其れは生命、大地の化身]
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六十九話 闘争心を駆り立てよ

……なんて考えていた矢先。


ドゥォォォオオオオオン───

──────────────ッッ!!


 心髄や脳を震わせる鈍い爆音と、鼓膜が寿命を迎えそうな金切り声とも例えられる絶叫が、自然界の音を掻き消した。


「爆発した!? 地雷作戦は成功したってことでいいのか!?」


 心臓に悪い爆発音を聞いた際に、セリスに問い掛けながら反射的に後方確認をしてしまう。


 目にしたのは、全貌が明らかとなった超巨大生物。前方ではエルメスの城壁が見え始め、怪物とは充分な間隔を有している。

 まるで波紋が広がるように土煙が吹き、爆心地からは黒煙が立ち上っている。その爆心地というのは、大地』の前脚ではなく、右後脚だった。激痛を味わい悶え苦しむ怪物は首を大きく左右に振り、悲痛な咆哮を上げている。


「そのようですね」

「よっしゃあ! 見た感じあの様子だと、ヤツに致命傷を負わせられたって事だよな? 任務遂行って事で特別報酬貰えねぇかな、待遇も良くして欲しいんだが!」

「……ロイン、残念ですけど、浮かれるのは気が早いですよ」


 見事に地雷が炸裂して大打撃を与えたというのに、追い詰められた表情をするセリス。


「なんでだ? あの火薬の量だったら、被爆した脚が損傷して使い物にならなくなるだろ?」

「後脚が使い物にならなくても、前脚が生きてるなら充分な行動は可能ですよね? しかも最悪なことに、爆発したのはその後脚なんですよ?」

「……つまり、これが起爆力となって、なにが始まるんだ?」

──────────────ッッッ!!!

「……とにかく、止まらずに逃げ延びることです!」



─城壁─

「ん? ……おーい、なんか爆発したぞ!? ヤツの後ろから煙りがでてる!」


 単眼鏡で視察する男が、レンズ越しに見た光景をありのままに話した。

 この地雷作戦については事前に告知されていた。とうとう来たかと、報告を合図に迎撃準備が為されていく。

 準備が為されていくということは、それまでは警戒態勢を執っていなかったということ。熱血漢だった現場監督も仕事を放棄していたのか。


 城壁の裏事情を知る者は、彼らに加えて二人の女性。


「おー? あんま映えないな。火薬の量から期待してたのに」

「もしかしたら私の保存方法が悪かったのかな……もっと厳重に管理しないとなぁ」

「危険物を見境なく陳列棚に並べてる処から見直せよ。いつ爆発するかわからねぇから、見てるこっちがヒヤヒヤするんだわ。せめて『瓶に入れるだけ』ってのはやめろ。それでも商人か?」

「これでも商人ですよー。……裏の、ね」


 配給された双眼鏡を覗くアイシャが、仲間を置いていった結束の地を眺めながら、さらに思った事を言う。


「……ドッカン出来たのはまだいいんだが……後脚かぁ……」

「? 当たったんだから良いんじゃないの?」


 店主さんは無用と断定されたバズーカ砲の上に座り、不満顔のアイシャをキョトンと見つめる。

 早退した彼女たちは、キャクチョウに重労働をさせながら帰る男女と似通った会話をする。


「バーカ。ヤツの前脚なら耐久力があるし、あの程度の火力じゃあ掠り傷だろ?」

「だったら尚更、後脚に当たって良かったじゃん?」

「バーカ。いいか? 私らの目的は『撃退』であって『討伐』じゃない。まあ詳しく言うと『海へ逃がす』事なんだけど。それはいいとして、前脚にあたればダメージが少なくて、単純に進路の誘導が出来るんよ」

「ほ……へ?」

「バーカバーカ」


 アイシャは解説好きでも、要点をまとめて分かり易く説明するのが下手であった。

 要するに、前脚に地雷が当たれば傷を負わせる事は無い。更に、爆発に驚いた『大地』が本来の進行予定だった軌道からずれ、エルメスへの直撃を防ぎながら大海へ帰せる、ということ。


「さっきからバカって、君……こっちは住居を提供してるんだよ?」

「脅してもへりくだったりしませーん。……さて問題。後脚に当たったら、一体何が不味いでしょう?」

「え? ……えーっと……」

「遅いバーカ。正解は御覧の通りよ、ホレ」

「ん~……ん? え、なんか、勢いが増した!?」


 投げ渡さず、手渡しで受け取った双眼鏡を両眼に被せる。

 捉えたものは、威風堂々たる尊厳が失せた怪物の姿。我を忘れて、全てを薙ぎ倒す捨て身の突進を繰り出したのだ。


「後ろから攻撃されたら、前に逃げるのが筋ってもんでしょ? つまりそゆこと」


 多くの場合、生き物が危険と巡り会った場合、危険とは逆方向に逃げるもの。

 前方(前脚)が攻撃されたら、順路を変えるか引き返す。後方(後脚)が攻撃されたら、全力で真っ直ぐ突っ切るのが一般的。


「総員、配置に付け! なんとしてでもエルメス到達を阻止するのだ! 大砲、バリスタともに射撃準備が整い次第、ただちに砲火せよ!」


「なんか『大地』がいかりくるってるぞ!? 爆発のダメージが足りなかったのか!?」

「んなこと考えてる暇ねぇよ! こっち手伝え!」

「装填完了! 撃て撃て撃てー!」


 冒険者の活力が再燃して、砲撃戦が勃発した。

 魔法班は射程圏外なので、圏内に来るまで力を蓄えている。


ドン! ドドンドン! ドドドンドンドン!!


 大砲に特殊な改造を施されているのか、普通なら届かない『有り得ないだろ!』とツッコミたくなるような長距離でも、鉛色の砲丸は面白いぐらいによく飛ぶ。

 無数の砲弾が怪物の甲殻や頭部、脚部に命中するが、勢いは衰えず。こんな具合では、無駄な足掻きとしか思えない。


 不定のタイミングで激しい発射音が飛び交う中、無意味な抵抗の背を押す秘密兵器。

 店主さんの異形なバズーカ砲も、赤髪と二人掛かりで固定して反動を軽減する形をとり、いざ。


「喰らえー!」

バスンッ!


 大砲の『ドカンッ!』という音とは異なり、スマートに噴出するイメージが捗る音が鳴る。


 大砲の弾よりも、一回り小さな黒い弾丸。空を牽制する鳥の如く、天空の覇権を握る竜の如く。一閃のはやぶさと偽りを成して、たてまつられ、偉大なる地母神に鋼の牙を剥く。


 豪華に、そしてはかなく砕け散る無機物の想いを積もらせ、不滅の鎧に着弾する。


ドゴオォォォオオオン!

─────────────ッ!?


 乱射される砲弾とは比にならない、凶悪で暴力的な破壊力。一国の防壁にぶっ放したら、一発で風穴が出来上がるだろう。

 命中したのは背中の甲殻。当たったには当たったが、無傷だった甲殻が僅かに欠けただけで、止まる気配はさらさらない。


「……あんなモンを床下に放置してたのかお前。つーか反動すごっ、なんだこれ肩が痛いんだが」

「我慢して! 二発目いくよ! しっかり押さえてね!」


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