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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第四章 [其れは生命、大地の化身]
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六十四話 出で来るは、跋扈たる旋風

「なぁなぁ、わざわざスコップで穴掘って埋めるより、小娘の泥魔法の泥濘ぬかるみに落としゃよくねぇか? そうすりゃ疲れずにパッパと終わんのによ」

「アホかお前は。んなことしたら火薬がオシャカになっちまうだろ。スポンジ脳味噌で少しは考えろ」

「待てよ? スポンジっつーことは、容量が多くて吸収が速いってことじゃね? やっぱ天才だわオレって」

「幸せな思考回路してんなコイツ」


 アイシャとロンゴは平常運転。鬼人オーガの進歩といえば、煽りにめげずに長所として捉える方法を講じたこと。偏屈で関わり辛い人柄へと改悪されてしまった。今のやりとりが特別という線も否めないが。


 熱心にスコップを脚で刺し、てこの原理を流用して土を盛り上げて穴を掘る。なんとも退屈で面倒で栄えのない労働だこと。こんなことやるんだったら、もっと人手を借りて効率化すればいいのに。


「コラそこ、手ぇ動かして真面目にやれ。鬼人オーガは体力にも自信があるんだろ? セリスと店主さんを見習え」

「だけどな相棒、オレぁもっと大胆に、そして豪快にやらなきゃつまらんのだよ。こんなチマチマやって何が楽しいんだか」

「そうだぜ? 相棒?」

「うるせぇ、やれ」


 亀のようなローペースでサボる二人組に何を言っても無意味だろう。此度の戦が終結して無事に生還出来たら、二人を解雇しよう。もっと騎士道精神の教養を受け、誠心誠意が込められた人材を雇いたい。そこまで高望みせずとも、一般的な趣旨、思案、発言をする人と出会いたい。


 アイシャはいざという時にイケメン化するが、一目散に退場するか人徳廃れた狼藉者ろうぜきものとなる場合が大概。なんだこいつ。

 ロンゴは頓珍漢とんちんかん。これに尽きる。あと木偶の坊辺りが適当か。超人ばりの怪力や濁色の魔法は強力なのだが、本人は発揮する気が無いしコントロールもする気がない。なんだこいつ。


「……そうえば店主さん、なんで火薬が足りないって分かったんだ? 実は集会所の関係者だったりする?」


 全く関連性のない話を振る行為は無駄口と言えば該当するが、殺伐とした空気で作業を進めるのは面白くないため、気分転換として有効だ。

 以上より、何の脈絡もなく店主さんに話題を振った。


「いやぁ、集会所とはこれっぽっちも縁はないよ? 私はしがない雑貨屋の店主だからね。……その聞き方だと、とうに忘れちゃったのかな?」

「何を? なんかあったっけ?」


 俺は店主さん疑惑の目を向けると、彼女はこめかみをトントンと突く身振りをした。

 この合図の意図は、『頭の違い』だとか『頭がイカレてる』とかの意味で活用されているが、今現在の俺と店主さんの間では示すものが違った。


「? ……あー、そういえば小細工されてたな。周りの会話も聞こえるなんて便利な───いや待て、盗聴器かコレ!? プライバシーの侵害か!?」


 一獲千金のお祭りで抜け駆けした際に発覚した、唐突の仕様と告白。俺の意識が無い間に、店主さんは人間の中枢部である脳に悪戯いたずらをしたのだ。

 悪戯といっても一発ネタではなく、永続的に寄生するたちの悪いもの。被験者の是非を問わずして、無断で仕組んだ人体実験。


「そんな心配しなくても大丈夫だよ、利用者が私なんだから。ちゃんとわきまえてるし、全部筒抜けって訳でもないからね。私が必要としている時とか、安否の確認やらしか利用しないから、平気平気」

「機械を植え込んだんじゃないよな? これ取り除けないの?」

「魔法の類だから解除は出来るけど……会話相手も欲しいし、このままでいいんじゃないかな」

「そ、そうか……」


 私生活に支障が出るのは明白。許容できたもんじゃないが、今後の動向を踏まえると『あってよかったお助け機能』として観点を変えて見れば、これはこれで良いと思える。


 日夜監視されるのは頂けないが。俺にそんな性癖はない。


「おーい後輩! イチャついてないで働けやーい」

「ヒューヒュー!」


 はやし立てるバカ二人は成敗しないと気が済まない。あの生意気な面に平手打ちしてみたい。

 

「……っはー、にしてもホントにやり甲斐が無ぇ。別に火薬が露出してたっていいだろ、絨毯じゅうたんみたいにすればよくねぇか?」

こすい事考えてないで……いや、いいなそれ」


 ニトロ石は衝撃が加わると爆発する。そして相手は超巨大と聞いた。

 と、なるならば、杜撰ずさんな罠でも安易に引っかかるだろう。ニトロ石なら、デカい図体でちょっと踏んだだけで爆発するだろうし、等間隔に並べて連鎖爆発を起こせば、一極集中でなくともダメージに期待出来る。


 討伐が目的ではないので、撃退だって構わない。爆音で脅かせば進路を変更して、街への直撃は防げるだろう。


 店主さんの商品には粉末状の物もあったが、瓶ごと置いときゃ問題ないだろ。


「確かに、それだったら時間も掛かりませんし、何より楽ですね。作戦に影響は及ばないでしょうし、任務に背くかも知れませんが、賢明だと思います!」

「いたのか銀髪」

「喋ってなかっただけです!」


 職場に革命的な案が検討され、会議せずとも採用された。


「じゃあ君たち、三分の二くらいはここに設置して、残りはもう一カ所に置いちゃおうか」

「おー」


 そうと決まれば時間は有限。早速火薬を荷下ろす───その時。


クエェェエエエ!! クエェェエエ! クエッ!! クエエエェェェエ!! クルエエェェエエッ!! クエェッ! クエッ!!


 七羽のキャクチョウが、共鳴するかのように大合唱を始めた。矢庭に喚く怪鳥は、近縁のナキムクロより声は抑え気味だが、七羽も集まれば耳が痛い。


「なんだぁ!? 急に騒ぎ立てやがってよぉ! 心臓に悪いわ!」


 ロンゴが異種族に一喝するが、恐慌は治まらず。

 これは不吉の兆しか、繋がれた杭を折る勢いで動乱する怪鳥。彼ら野性にしか感じ取れない超常現象が起こるのか、はたまた我々の手に負えない自然の災害が訪れるのか。


「っ! みなさん! アレを!」


 否。幼気な少女が目にしたモノが、全てを物語っていた。


 空を制し、地を制す波乱万丈。百鬼夜行の如く魑魅魍魎。

 夜明けを畏れた焦心のいななき。其れは大地より惑う者共。


 即ち───


「大量の怪物が押し寄せてきます!!」


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