小話 冒険者は見た
ソリを引くキャクチョウが二羽、店主さんの火薬入り荷車を引くキャクチョウが二羽。残りの四羽は人間を騎乗させる役割となった。
「私は自分の荷車に乗るから、君たちがキャクチョウに乗りなよ! ちょっと残念だけど」
とのことで、店主さんは火薬満席になった荷車に登り、僅かな隙間に脚を挿した。
偶然、俺の相棒となった例のキャクチョウが気分屋で、その日に限り暴走車と成ったのかもしれない。気乗り薄いが、駄々を捏ねる時間と幼稚さはない。
「早く出発しましょう! 時間にゆとりはありませんので!」
「よーしオメェら、キャクチョウにライドオンだ!」
ロンゴは初体験だが、セリスは経験済みだった様子。銀髪は段階を踏んでキャクチョウへの負担を軽減する手順で乗ったが、鬼人は自信満々にノリと勢いで鐙を踏み、怪鳥の体調を踏まえずに荒々しく騎乗した。
クエエェェェェエエエ!!
「うおっ!?」
そのせいで、いくら強靭な脚でも支えるのには難があり、蹌踉けてしまっている。
……いや違う。正しい乗り方云々、それ以前の課題であった。
「……な、なあ。コイツ、体調不良とか病気じゃねぇよな? オレのせいか?」
細やかな鱗が生成された恐竜のような脚は、生まれたての子鹿のようにプルプルと小刻みに震えている。
「ロンゴ、ちょっと降りてみ?」
俺は懐かしくもトラウマである背中に乗りながら、苦しむ怪鳥に跨がる鬼人に提案をした。一つの疑惑が浮かんできたからだ。
訝しみながらも今度は丁寧に降りると、なにかと苦闘していた怪鳥は快調になった。
「………………」
再チャレンジ。手綱を握り締め、鐙に足裏を掛ける。
異変はない。では失礼して体重を乗せ───
クエエェェェェエエエ!! クエッ! クエックエッ!
「「「「………………」」」」
「……ロンゴ、お前は待機だ。ここで働け」
「オレを見捨てるなあいぼぉー!」
「まったく君たちは! 茶番は間に合ってるから!」
「こればっかりはオレのせいじゃねぇだろ!?」
「……なあオーガ、この私に名案があるぞ」
─城壁上部─
「一極に集中砲火できるよう、砲台を等間隔に並列! 追加の砲弾はサポート班より配給される。バリスタ隊B班とC班は通常弾の装填、A班とD班は特殊弾の装填並びに不備の再度確認を! 魔法班は───」
うっかり落ちたら靱帯損傷、即入院。運が悪ければ天国地獄。
高さ五十メートルは優に超えた絶対防壁。その上で働くのは冒険者共々。集会所の常連、冒険者を生業とする彼ら彼女らは、従事者として上からの命令に従って災害に備えている。
怒号のような伝達は労働者を自由自在に操っている。こんな仕事場ならデモクラシーが起こっても不思議ではないが、自慢の筋肉を躍らせる冒険者たちは、真剣に作業へ没頭している。
客観的に評価して『荒くれ者』に分類される野郎も、快く承諾している。
「ヤツが視認できる距離に達する前に完遂しろ!」
「おーい! こっち足んねぇぞお!」「あと十本くれ!」「セットこれであってるか?」「慎重に運べ!」「落ちる落ちる! 速く進めって!」「ちゃんと整理しろ! 転ぶだろうが!」
大砲の台座が線路に乗っており、線路に沿ってなら移動が可能となっている。バリスタは連射式、魔法使いはバリスタの弾に魔法で小細工を施したり、精神統一をしてベストコンディションに整えている。
「バリスタの弾二十本分! B班に回せ……ん? なんだありゃ?」
バリスタの弾を束ねる雑務をしていた男が手を止めて、城壁を見下ろした。
「どした? 余所見してねぇでちゃっちゃと……あ? なんでキャクチョウが走ってんだ? しかも何か引いて……っ!?」
バリスタの弾を指定数量まとめる雑務をしていた男が、彼の目線の先に焦点を合わせた。
そこにあったのは、襠から飛び出したであろうキャクチョウ数羽と、牽かれたソリに荷車。
一羽だけ凄まじい速度で駆け抜けるキャクチョウもそうだが、何よりも視線を釘付けにするものがあった。
「……あの鬼人、走らされてね……?」
見破ると同時に、その集団は、良い意味でも悪い意味でも名を轟かせる異色のパーティー。
ロイン一行であった。
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