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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第四章 [其れは生命、大地の化身]
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六十二話 高速特急の運び屋さん

 ただ走っただけでは、ここまで疲弊することはない。彼女の身体に負荷を与えていたのは、細くも逞しい腕に運転された荷車と、整頓されず粗雑に補填された色取り取りで多種多様な固体。

 店主さんが通過したであろう走路には、迷子の時にパン屑を道導にした感じで、運搬されていた物体が溢れている。


「あれは……全部、店主さんの商品棚にあった危険物ですね」

「貴様は……事情聴取に協力を願った森人エルフか。用件は聞こう、手短にな」

「はい、ギルドマスター。物資が不足しているとの話を耳にしました。微力ながらも、この火薬しょうひんを役立ててください!」

「……さっすがエルフ、太っ腹だな。献身的なそのこころざし、商人の鑑だなまったくよぉ」


 彼女は両手一杯に広げて、山積みの危険物を盛大にアピールした。

 瓶丸ごとだったり、中身が露出しているものだったり、火薬同士が混ぜ合わさっている問題は屁でも無い。この街が脅かされている事態を前には些細なこと。

 痒いところに手が届く。出し惜しみなど無用、全身全霊で防衛すべし。


「……無論だ。どういった因果関係かは知らんが、救援に応じない選択肢など無い。……他の冒険者には猿でも出来る雑務を担当してもらっている。改めて、貴様らには特別な作業に取り掛かってもらう! ……ゲイル、丁寧且つ迅速に概要を説明しろ」

「了承しました。……それでは皆様、説明は私、ケイルが行います。こちらへの訓練施設へ」


 側近ことケイルの指示に従って、悲鳴が流れてくる荘厳そうごんな扉とは真逆の、集会所の奥へと案内された。


「あ、私はどうすればいいですか? 大量の火薬を持ってきたのはいいものの……」

「お手数ですが、遠廻りして訓練施設へ向かって頂けますか?」

「分かりました!」


 ガラゴロと車輪を鳴らして、森人エルフはフェードアウトしていった。


「……なあ赤髪、訓練施設っつっても、何もなかったよな?」

「だよなオーガ。……ケイルだったか? 秘密兵器でもあんの?」




─訓練施設─


「こんな所があったのか、知らなかったな」

「随分と殺風景な場所ですね。砂と砂利しかないですよ」


 赤髪と鬼人オーガは、用途を誤って何度も修練あそびの場として通っていた訓練施設。俺とセリスは、この施設に入場したのが始めてなので相違点は分からんが、ロンゴとアイシャは瞬時に異なる点を見出せた。


「カラクリが一つもねぇな。オレ様に恐れおののいたか?」

「アンタの頭には花園があんのか? たかが人形に何言ってんだか」


 鬱憤晴らしや腕試しの為に暴行を加えられる怪物カラクリが一つ残らず撤去されている。

 その代替として、訓練施設から城壁外に繋がる通路の脇には、印象に残る体験をしてもらった生物が。


「……うわっ、何でアイツがここに……ケイルさん、まさかアイツに騎乗するとかじゃないよな?」


 俺はその生物を見て、顔を引きる。


 たとえ魅力的な報酬を貰えても、金輪際近づこうとはしなかった因縁の相手。

 俺が騎乗した時だけ、生きる絶叫マシーンに豹変する悪魔の使い走り。


 首が身長の半分近くを占めて二、三メートルはありそうなスレンダー体型。期待の追い風が吹く大地を疾走する疾風の大腿筋。スパイクの機能を約束した、千里を駆けるための鉤爪かぎづめ。フサフサフンワリ、丸っこい胴体には、あまりの俊足に耐えうる造りのくら

 風を斬るは健脚の象徴、なび鶏冠とさかは走者の勲章。


 そう、ヤツの名は……


「わあ! キャクチョウがこんなに沢山! 八羽もいますよ!」


 キャクチョウ。キャクチョウである。

 セリスが目を輝かせている。

 彼らは平常通りで、毛繕けづくろいやら仲間へのちょっかいやらに勤しんでいる。

 忌まわしきキャクチョウの傍には、先日、俺たちが決死の覚悟で掻き集めたニトロ石が。ソリに積もられ、ソリは鞍に繋がれている。


 ニトロ石の量の割に、キャクチョウ多くね?


「大変危険な任務となりますが、貴方方あなたがたには『大地』の侵攻を食い止めるための『地雷』を創ってもらいます。ニトロ石の火力ならば、爆撃によって進路を曲げることが出来る筈です。設置場所は進路上、正門から真っ直ぐ進んで二キロメートル地点と三キロメートル地点です」

「はぁ……また乗るのか……」


 説明を続行しようと呼吸したケイルさんを遮り、ガラゴロと忙しく荷台がやってきた。


「火薬、どうすればいいですか!」

「そうですね……手綱を荷車に結び付けてください、キャクチョウ二羽に任せまばよろしいかと」

「はい! ……あと、私も同行していいですか?」


 テキパキと慣れた手つきで手綱を締め、自ら率先して任務をせがんだ。


「構いません。人手が増えるだけで、こちらとしては恐縮です」


 店主さんの表情を見ると、『協力』を建前としてキャクチョウにまたがる事が目的となってる事が窺える。

 こんなに嬉々とした笑みを浮かべているのは珍しい。


 セリスといい店主さんといい、キャクチョウは女子に人気なのだろうか。アイシャは無関心そうだ。


 ……一通りの準備は万全。いつでも出発可能だ。


「……それでは、説明は以上です。ご活躍には期待していますよ。吉報をお待ちしております」

「あ……ああ……」「うぃー」「はい!」「おうよ!」「はい!」


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