小話 集会所の者
「……いよいよ決戦か。用意周到から程遠い環境から大逆転は望めると思うかね? ゲイルよ」
「残された弾数で致傷を与えるか、画期的な戦略を編み出すか。正攻法では無駄足掻きとなるでしょう。これならば、優秀な人材を雇い入れた方が格段に賢明であったと思います。……それと、ケイルです」
バアァァアン……バアァァアン……バアァァアン……。
「……銅鑼が鳴らされたな。いつ聞いても、この音は胃が痛くなるもんだ。……集会所に向かうぞ。まずは馬鹿どもの説教だ」
─集会所─
午前九時。いつぞやの銅鑼が、街中を震撼させた。
集会所で朝食を頂いている俺たち四人は突拍子の出来事に、ピクリと肩を動かし食器に添える手が固まる。
「ぅおっと……ここで聞くとたまったもんじゃねぇ、破れそうだ。んで、銅鑼が鳴ったっつーことは、またお祭り騒ぎか?」
「お前は何を聞いてきたんだオーガ? どー考えても『大地』だろうよ。近々、お目覚めするって受付のネーチャンも言ってただろ」
「てことは、その『大地』が活動を再開したとかだよな、……なあアイシャ、身を案じるはいいけどさ、面倒な事柄から逃げる姿勢はやめような? 座れ」
バンッ!
おせーぞ! もっと早くしろ! 奥に詰めろって! 入れねぇだろ! 二階だ! 二階に登れえ!
不動の扉が弾け飛んだ。外で待機でもしていたのか、騒ぎを嗅ぎつけた冒険者が集会所の扉を乱暴に開けて、濁流のように混入してきた。
普段は野蛮で、数多の怪物を大地に返還してきた暴君たちの忠誠心が垣間見えた。
呼ばれたならば、何よりも優先して集会所へ赴く精神。素直に感服です。
「……銅鑼……祭り……大勢の冒険者……うっ頭が……」
セリスが何かを彷彿とさせたようだ。両肘を机に着いて、頭を抱えて魘されている。
大量に流し込まれた冒険者は、先着の同職に相談したりしている。
プラムカシムのな季節はとうの昔。ならば、此度の緊急集会はなんなのか。
勘の良い人や情報網豊かな人は、大方の勘定を共有して発信地となって注目を浴びている。
胡散臭い俗説も飛び交うが、大体が『大地』というキーワードが浮上するもの。
そんな人口密度が極端に高く騒々しい空間に、食器具や机椅子とは別の音が空気を伝った。
奥から足音を立てて参上する、男前な髭が生えたオヤジ。
ギルドマスターその人である。
眉間に何重ものシワを寄せ、揺るぎない立ち姿からは強者の風格が漂う。
戯言など場違いな、深刻な雰囲気に誰もが固唾を呑んだ。
「……貴様らに言いたいことは、全部で三つだ」
静まり返る集会所。沈黙を破ったのは、ギルドマスターの重々しい声であった。




