小話 大地の息吹
─集会所本部─
数日後……。
「───なるほど、そうかそうか。ようやく納品された、と。たいへん喜ばしい事だ。『大地』の目覚めは……予言が正しければ明後日なのだが、君の見解を述べよ。ケイル」
「っ……。率直な意見を言わせてもらうと、当日が命日になりそうですね。他国との交易、各地からの収集等々、できる限りの手段を実施しましたが、軒並み成果は得られず。控えめに申して、絶望的です。……禁じ手となりえますが、ルイシュ様に……」
「彼女の言葉を忘れたかね。逆鱗に触れてしまうぞ?」
いつになく、訝しむ表情を緩めないギルドマスター。いつも側近として使命を果たすケイルの事を、悪ふざけなくケイルと呼ぶ。私情が絡めば、地位に泥を塗る馬鹿げた発言を繰り返すのだが、そんなゆとりはない。
冗談半分で思議する件ではない。歳月を経て活性化した街を、平等に尊重すべき住民の命運を賭けた戦。
窓には不安を煽る曇天が映る。我々が行き着く先は勝利の凱旋か、敗北の嘆き悲しみか。
手札は劣悪。奇跡が連発しなければ、奮闘虚しく落城するのがオチだろう。
「……あっ。住民への避難喚起、してないじゃん。なんでやらなかったんだい?」
「それについて。広報課に提議したのですが、ルイシュ様の予知はあくまで予知にすぎない、とのことで……誤報をで住民の混乱を招いてしまう事は断じて許容出来ないので、否認されました」
彼女の予知は百発百中であることは、知れ渡っていないのか。必要最低限の交友関係を結ぶのが、彼女の良い部分でも悪い部分でもある。今回は、彼女の証人が少数ないのが裏目にでたか。
『大地』の目覚めを証明する形まで展開しなければ、適正な対処が遅延してしまう。広報課の役員方は、マニュアル通りにしか働かない堅実なヤツらの集いだったか。
「ま、そこはしょうがないな。……しかし、現況の戦力向上は叶わぬか。既存の物資に設備、なけなし程度のニトロ石のみが生命線。あとは、『大地』の気分次第だな。目覚めた後、街を突っ切るか慈悲深く遠回りしてくれるか……」
「最後の記録からすると、一直線に海へ出るでしょう。進路にどんな障害物があったとしても、最短距離を選ぶと考えてよろしいかと」
不安と緊張が全身を包む。変な汗が噴き、毛が逆立つ。
「……ならば、総動員だ」
「と、いうと?」
「街中の冒険者……いや、力になれる者全員を招集するのだ。一般人の手助けが不可欠になろう。大砲やバリスタなど設備の取扱いを事細かく伝授しろ。……クソ、直ちに行動に移りたいが、広報課が許しちゃくれないのが目に見えるな。……不謹慎だが、『大地』の目覚めが待ち遠しい。勿論、眠ったままが一番だが……」
バンッ
「ギ、ギルドマスター! 速報です!」
扉を殴るように開けたのは、集会所に勤める男性であった。強張った表情で息の荒い彼らから察するに、ただ事ではない。
「どうしたのかね? 分かり易く、丁寧に頼む」
「はい! 急遽、観測船からの伝達がありまして……『大地』と思われる巨大生物が確認されたとの事です! 今現在、地中から這い出ているとの報告が!」
度重なる震動、プラムカシムの早期大移動。そして、異様な魔力検知。どれもこれも、『大地』は関与しているのは単純明快。
まったく、広報課の優柔不断さには反吐が出るもんだ。
「迅速に警鐘を鳴らせ。全冒険者の集合、もとい即戦力となる人員の招集を開始しろ! 設備の点検は済ませた筈だ。砲弾とバリスタ弾の補充、魔法使いよる魔力の増幅を始めろ!」
「はい!」




