五十七話 もはや運命的な出会い
昇って降って、進んで戻って右往左往。ダンジョンかよ。俺たちは迷路をしに来た暇人じゃないんだ。足が棒になるまで歩かせる気か?
「……お? みんな、コレって人間の足跡だよな? 見た感じだと、ここ最近のようだが……他に誰かいるのか?」
痕跡に気付いた俺は、ランタンを地面に寄せた。点々と規則正しく、圧力が掛かったであろう跡は靴のようである。
「どれどれ……おー、確かにそうだな。後輩よく気づいたな、こんな薄いの」
足跡はさらに奥へ続く。比較的新しい先任者の痕跡があるということは、目的は俺らと同様、ニトロ石の採取だろう。
足跡は複数人分あるが、詳細は不確定。
「足跡を辿っていけば、このパーティーとの合流が出来ますね。協力関係を築ければ、困った時の助け船となりえます!」
「よかった……オレたち以外にも人がいた……」
安堵のため息を大きく吐き、冷静を貫き通そうとするロンゴ。常時膨張していた筋肉が緩み、握り拳に空気が吸い込まれた。
「……ちょっと思ったんだけどさ、この足跡って、行ったっきりで帰ってきてないよね? 大丈夫? 喰われたりしてない?」
つかの間の静穏は、背後に佇む赤髪の女性によって、憂慮と胸騒ぎへと移った。
「おまっ……赤髪、そういうこと言うなって! 怖いだろ!」
鬼人が、またしても半狂乱な状態になりつつある。赤い額から冷や汗が滲み出て、口角が下がって歯軋りをする。
何一つ恐怖心を抱かない女性陣の面前だが、それでいいのか力の象徴。
「きっとあれだろ。俺たちよりもちょっと前に来ただけで、セリスが言ったように、まだ居るんじゃねぇか? 採掘って、案外時間掛かるし」
「そ、そうだよな! そうとしか考えられんよな相棒!」
こんな調子が暫く繰り返され、スムーズに開拓がいかない。
「……誰かいるな」
「誰かいますね。目視可能な範囲で、三人といったところでしょうか。こちらは発覚されてませんね」
「……不思議と、馴染み深いヤツらに似てるんだが……またあの三人組だよな」
蜘蛛の巣が壁紙の様にベタベタと貼られた、ドーム型の大空洞。天井には、栓のような穴がくり抜かれている。
木霊して何重にも聞こえる声は、慢心の極意を会得したかのような、なんとも不真面目なもの。仕事を放棄しているよう。時折、そんな声に一喝する真面目そうな声も。
「───ったくよぉ。あの時、もっと稼げていたら、こんな馬鹿げた労働なんて触れもしなかったのによ。蜘蛛の巣ばっかりだし……だーっ! 鬱陶しい! 焼き払ってやろうか!」
「焼き払ったら全壊するよ。愚痴ってないで、どんどん詰めなさい。あ、でも衝撃は与えないでね、私たちが木っ端微塵になっちゃうから。……デリクスー! そっちはどう───」
岩陰からひょっこり顔を出し、目と目が合う。
「……あーっ! なんでまた居るのアンタたち! いっつも出会うなぁ!」
「おうお前ら。元気してたか? カリスマ性に優れた優しいお姉さんの救援だぞ、喜べよ」
悲鳴に近しい驚き方をされ、その返事として挨拶を代表するアイシャ。
「どうしたリマ……げっ、闇鍋だ……」
「闇鍋って言うなデクト。不名誉なんだから。……にしても、なんでお前らまで依頼請けたんだ? カニの宝石をたんまり毟り取ったんだから、金には困ってないハズだろ?」
「え……それはその……って、なんだっていいだろ! 関係ないんだからよ!」
なんか俺とは無関係の、理不尽な怒りをぶつけられた気がした。
はいはいそうですか、と。これ以上無駄話をしても収益には加算されないので、俺もニトロ石の採取に傾注しよう。
本当に何故だか分からないが、不貞腐れたままやっつけ仕事をに専念した。
背を向けた、あからさまな敵意を示す男の背後を通過したとき、、アイシャが耳打ちをした。
『……この前の、裏路地での内緒話に関係してるよね』
『い、言うなよ!? 変な誤解が広まったら洒落にならないからな!? 絶対だぞ!』
『あいあい、お口チャックしときますよ』
すげぇ、小声なのに全部聞こえた。後でアイシャから教えて貰おう。
俺のパーティーメンバーも蜘蛛の子を散らすように散策していき、粘性の白糸を両手で引き裂いては、埋没されたニトロ石を採取。
ニトロ石は卵のような鉱物。中心部は赤熱しており、強い衝撃が加わると破裂する。その破壊力は、手のひらサイズで、神殿に利用されるような巨大な石柱が粉砕するほど。
取り扱いには資格が必須なのだが……本当に大丈夫なのだろうか。どこまでも生半可な制度だなぁ……。
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