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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第四章 [其れは生命、大地の化身]
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五十六話 呑気な探検隊

 我々は、俺、ロンゴ、セリス、アイシャの順番で洞窟の奥地へと侵攻している。陰に隠れていたが、結構横幅がある。


一寸先は闇、一秒たりとも油断禁物。この先に待ち構えているのは何なのか、光とは無縁の深層へ足を進める。


 ……この順番は頭が悪いと思う。図体がデカいロンゴが前半にいるのは、後半の視界を遮る事になる。リスクを言うならば、情報の伝達に支障が出る。撤退せざるを得ない状況になったら、後半が認知するまでに遅れが生じる。即座に対応出来なくなるのだ。

 そもそもなんだが……


「……なあ、なんでこんなに横幅が広いのに一列なんだ。少しでも疑問を感じないのかお前達たちは」


 中心を堂々と通ると、その幅の拡張具合がよく分かる。横幅五~六メートルといったところか。


「後輩、アンタはもう、立派な冒険者として世を渡れると薄々感じていたが……まだ未熟だったようだな。狭い通路の場合、これが正しい攻略法なんだよ」

「いや、予想よりかなり広いんだが」

「これだから素人は……。いいか? 一列になることで、最初の犠牲者は先頭に絞れるんだよ。怪物が来て先頭が襲われている間には、後ろ三人は即時行動に移れる。総合的に見て、生存率が上がるんだよ」


 最後尾がほざきやがる。


「なんて画期的な名案なんだ。犠牲者を出さない努力はしないのか?」

「しねぇよ、そんなん自分で対処しろよ。それに、私の命が一番可愛いもん」


 こいつ……。


「相棒、だったら二列でよくねぇか? オレと相棒が前列、女を後列にすりゃぁ、マシな編成になるだろ。コレで文句はねぇだろ」

「あの脳筋な鬼人オーガが知的……やはりロンゴは違いますね、流石です!」


 セリスって無意識に煽ってる? そう捉えると邪気のない邪悪だな……。


 立案者による、先程より現実性が数段上の陣形によって、俺の人権が呼吸を再開した。赤髪は頬を膨らませていたが、可愛くもないので無視した。


 今のところ、何事もなく土と石の回廊を突き進む。何事もないということは、言い換えればニトロ石もないということ。

 もっとも、こんな浅い地下にあるとは思っていないが。あるとしたら、最下層だろうな。


 こおる冷却が滞留しているのか、嫌な鳥肌が立つ。己の意思で五体を操っているのだが、まるで不可視の糸に引っ張られ、誘導に従っているような感覚に冒される。


 廃坑に限らず、洞穴に関しては忌まわしい記憶が。

 トロールと決死の鬼ごっこをして、途中から隠れん坊へ移り変わった時。

粗雑に掘削されたいかにも(・・・・)な空洞に『よっしゃ、ここに隠れたろ!』と、冒険者らしからぬ無警戒さでホールイン。怪物の巣穴という名のトラバサミに進撃する愚行。


 軽くトラウマになった。今だって、もう一歩進んだら待ち伏せしてた怪物が噛み付いてくるのではないかとヒヤヒヤしている。


「や……やけに蜘蛛の巣が張られてますね……頭を上げたら捕まりそうです。本体が降ってこなければ良いんですが……」

「そんな銀髪に朗報だ。背中にとびっきりの本体がいるぞ」

「ひっ───」

「嘘だよ叫ぶな鬱陶うっとおしい。怪物が向かって来たらどう責任とってくれんだ?」

「アイシャ、お前、もう、黙れ」


 三百六十度、視界に映るオブジェクトは入口付近とは一変。

 まばらに白い糸が垂れ下がる。壁と天井、地面と壁……縦横無尽に張り巡らされた粘着質の束は、人類の多くに不快感をあたえるだろう。

 ヤツらの得意技。身の毛もよだつ悪質な悪戯いたずらではなく、獲物を捕縛する罠だ。住み家とする機能もあるが、そんな些細な違いなど有って無いようなもの。


「黙々と歩き続けんのが退屈すぎるんだよ。オーガ、全然喋ってないんだから面白い話してくれよ。…………オーガ?」

「……あ、お、おう。いや、えっと、そのフリだと、何言ってもつまらないじゃないかーい……」

「……は? 何言ってんだお前」

「ロンゴ、さっきから思ってたのですが、なんで震えているんですか? 鬼人オーガにとっても、身震いする寒さではないと思いますが……」

「そ、そうかぁ? た、多分、武者震いだろうなぁ! これから大物と激闘するかも知れねぇしなぁ!」


 俺はロンゴの心情を了知して、気遣っていた。それでも、結局は指摘されてしまったが。

 空元気からげんきな振る舞いをするが、だいぶ焦っているんだろうな。

 暗所恐怖症か閉所恐怖症かは別として、怖いモノ全般が苦手なのだ。本人にとっては深刻だろうけど、見てて面白い。


「……オーガ、もしかして、怖い?」

「はっそっそんな訳ねぇど!? 勘違いも甚だしいだす!」

「ロンゴの口調がおかしくなっちゃった……。まさかロンゴが怖がりやさんだったとは、驚きですね。外見に比べて乙女チックで、ちょっとアレですが」

「二人とも言ってやるな。ロンゴはな、今を全力で生きてるんだから」

「あいぼー!」

「離れてくれ。気色悪い」


 情けない筋肉を軽くあしらう。


 ……それにしても奇妙だな。蜘蛛の巣はうんざりするだけあるのに、肝心の家主が一匹もいない。とっくに絶滅したのか、移動したのか。


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