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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第四章 [其れは生命、大地の化身]
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五十四話 依頼:危険な採掘跡地

─採掘跡地─

 地底へのいざない。それは、探究心や好奇心が刺激されるもの。怪物の住み家だとしても、怨霊の溜まり場だとしても、興味本位に潜入する若者は少なくないだろう。


 だが、深い穴底は人食い洞窟へと変貌する。

 いっぱしの冒険者がやむを得ず、不本意で訪れる場合。盗賊が拠点を確立させるために、事前調査のため訪れる場合。

 いずれにせよ、その善悪は断罪の基準にはならない。


 潜入にあたって、如何いかなる人物でも等しく背負う罪。それは、『侵入』である。


 先駆者が牙を向き、風化した岩盤が敵となる。侵入した時点で死の覚悟を整え、愛する者への遺書をつづる事を、勧めよう。


「……え、本当にここで合ってる? セリス、ちょっと地図見せてくれ」

「はいどうぞ。逆さまに見取っていたりしてなければ、ここです。私は方向音痴の部類ではないので確信がもてますが」


 一枚の地図を四人で囲い、地図上の目的地と俺たちの現在地(現地)を交互に見比べる。

 四人が四人、一人(たが)わず、不満が含まれた唸り声が漏れる。


 目の前にあるもは地底への入口。おどろおどろしい風貌で、落盤を防ぐための角材やらが組まれている洞穴。炭鉱するなら当にコレ、といった感じだが……廃坑と化している。これは心霊スポットではなかろうか。

 トロッコなんかも設備されているがレールから脱線し、そのレール自体もガタガタになっている。


 アイシャが丸めた紙を広げる。受付嬢さんから支給された、指定された坑道入口の風景画だ。描かれた風景と現物を見比べると、小さな溜息をつく。


「残念な事に、ドンピシャだ。私らはここで『ニトロ石』を掘り起こせばいいらしいな。誤爆はほぼ免れないけど、手当金ってあるかいね? バクレツイワモドキでも流用すりゃいいのに」

「けっ、オレらは捨て駒扱いかよ。安全保障なんかありゃしねぇな。灯りが必須なのに、火気厳禁ってか? どうかしてるぜ」

「私の魔法は、いくつか使い物になりませんね。水魔法と土魔法だけ、ですか……。私は荷物持ちに徹しますね」


 広い空洞があればいいんだが、狭い通路がずっと続くだろうな。分かれ道もあるだろうし、怪物が不意打ちを目論むかもしれないので、前後を要注意しないといけない。


 ……俺は地雷を取り寄せてしまったのかもしれない。これといった確証はないものの、坑道の入口を見た時、穏便には済まされない未来が待ち受けている予感がした。

 数年後に白骨化して発見されたりしたらどうしよう。


 まあ、生活のためだし……背に腹はかえられん。


 せめて他の同行者パーティーがいてくれたら、役割を細かく分担したりして、安心安全な仕事場で作業に没頭出来るのになぁ……。


「うだうだしてても始まんねぇよ。後輩、さっさと行くぞ。リーダーだからな、後輩が先頭だ」

「こんな時ばっかり『リーダー』を利用しやがって……。よしお前ら、準備はいいな? 道具の不備とか、不足とかも大丈夫だな?」


 大人がスッポリと入れそうなリュックを背負うロンゴと、

自身の身長の半分近くのリュックを背負うセリスに、最終確認を施す。


 念には念を入れて携帯食料や水を多めに、ロープやランタン、軍手などなど、店主さんお墨付きの便利グッズのあれこれ。

 これら全部は、ロンゴのリュックに眠っている。


 使う場面に遭遇しなければいいいが、応急手当用の救急箱。即効性のある痛み止めや消毒液、包帯や解毒薬。あらゆる傷害を入念に想定して、的確な使用方法まで載っている親切っぷり。

 これには本職の医者もにっこり。クレームも異議も何一つ寄せられないだろう。

 そんな医療品は、セリスのリュックへ。


「心配不要!」「問題なしです」

「危なくなったら、すぐに退却だ。引火して爆発するかもしれないから、ランタンの火にはくれぐれも注意しろよ? ……じゃ、征くか」


 妙に声を張るロンゴ以外は気合いもやる気も捨て、状弱した気分で廃坑にお邪魔した。

 

 この依頼はただの採取。怪物退治とはなんら関係無いので、必要以上に体を張って攻略することもないだろう。ニトロ石を採取している最中に怪物に襲われても、交戦する必要が無いので逃げ帰れば良い話。


 ……依頼を申請した際、受付嬢さんがおっしゃっていた注意喚起。それを思い起こすのは、また後のこと。

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