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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第三章 [自然の摂理は波瀾万丈]
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分担小話 相性抜群? 夢のタッグ?

 しばしの緊張がはしる。人間の創作物のクセして、いかにして攻めるか計略を立てているのだろうか。カラクリらしく、からだきしませながら無策で飛び込んでくればいいものを。


 それはそれで困るな。読めない動作が脅威になるから。


 むさ苦しいギャラリーも、空気を読んでお口チャック。熱狂的だった野郎どもがピタッと静まり返る。


 怪物カラクリは正面ではなく、横に右脚をゆっくり踏み込み、左脚をゆっくり踏み込む。機会をうかがっているが、それはこっちも同じ事。


 両者共ににらみ合いて────


───────────!


 先手打つは、機械生命体。接合部を険しく擦り合わせ、装甲をガラガラとなびかせ、とらのように跳躍した。


「よっと!」「うおっしゃ!」


 挑戦者は迅速な判断で回避し、左右へ分別した。

 アイシャは決して油断せず、何よりも防御に努めて盾を構えたが、ロンゴは横に大ジャンプしただけで受け身すらとれていなかった。


 機械生命体の選択肢は二つ。いかつい生命体を殺めるか、授かった依り代に砂利を投げつけてきた挙げ句、負傷させた生命体をほふるか。


 ターゲットは決めてある。守りにてっしている者だ。


「チッ、こっちかよ!」


 なるべく怪我を負いたくないんだが……。逃げ回っても、体格差によって相手が断然有利か。背を向ければ、あっという間に押し潰されるだろし。向き合いながら逃げても、私が転倒する。


 となると、生存ルートは……張り付きか。


──────ッ!

「ほいっと!」


 大地にくぼみが出来上がる程の威力をみせる、豪腕による叩き付け。屈強な上半身全体をかした技だが、隙だらけだ。


 肉球を表現したかったのか、黒いゴム? が指の付け根に接着されていた。


 これを防ぐなんて、軟弱な人類は試す事もなく無理だと分かるので、バックステップでしのぐ。


「赤髪ー! クソ、赤髪がやられたか!」

「生きてるわ! お前を殺してやろうか!」

ギギギギ────ブォン!

「ゴヘェッ!」

「オーガーーー!! もっと役立つ肉壁になれって!」


 尻尾の辺りで大声を出した鬼人オーガを粛清。剣山のような針を逆立たせ、鞭のようにうねる尻尾を鬼人オーガの脇腹にクリーンヒットさせた。

 幸い、棘は上下に成長しているので刺さりはしなかったが……それでも激痛は走る走る。肋骨にヒビが入ったのではないかという、永続的に針で貫かれるような、そんな。


「仲間割れかよ! そんなことしてる暇はねぇぞ!」

「集中しろ!」


 外野は本当にうるっせぇな! これが私らの『通常』なんだよ!


「余所見するな! くるぞネーチャン! けろぉ!」


 怪物カラクリは退化した右翼を地面に落とし、地表面をぐように薙ぎ払った。


 ───今だ!


 ありったけの脚力に物を言わせ、長縄を跳ぶように前方向へ飛翔。久しぶりに全力を出した。怪物カラクリの前腕を踏み台にして、上腕、肩、首筋、頭部へと駆け上る。


 失敗、反撃覚悟のぶっつけ本番だったが、迷わず一気に攻略したため意外にも絶好調にいった。

 あまりにも一瞬の出来事。赤髪の女性が跳んでから一秒も経っていないだろう。


 私の秘めたる反射神経が解禁されたか。


 騎乗されている事を愉快には感じない怪物カラクリは、精一杯の反抗をする。頭を上下左右に反復させては届かぬ後頭部をむしる。


 自滅する危険性を諸共せず、顔面を砂利に強打したりするも振り払えず。


 難易度最大級のロデオ状態。ダメージを稼ぎ、希望は薄いが、あわよくば気絶を狙って何度も盾を振り下ろす。


「暴れんなって! ……おいオーガ! いつまで寝てんだよ! テメェが選んだ人形だろうが!」

「もう無理……骨、折れたかも知れねぇ……」

「天下無双のオーガだろ! 精神貧弱すぎじゃねぇか! ……うわっ!?」


 なんでオーガをなだめなきゃならないんだ、と不満が残るも、急に上昇した頭部。角を掴んでいた手が滑り、そのまま宙に投げ出されるが……不時着したのは訓練施設ではなくうごめ甲板上かんぱんじょう

 鱗代わりに研磨された小粒の石がビッシリ装飾された、頑丈な胴体であった。


 頭部よりかは揺れにくいので、しがみつきは維持できるが、なんせ取っ手が少ない。突き放されはしないが。なだれ落ちてしまう。


「おぁー……痛みが引いてきたな。……よしよし、うんうん、好調好調!」


 呑気にヤブ医者のような自己健康診断を済ませ、笑顔が取り戻された鬼人オーガ。笑ってる場合じゃねえよ。

 

「お前、私を護る前提で挑んだだろうが! さっさと助けろ!」

「そうだったな! だが安心しろ! オレが復活したからにはもう───」


 退場。周りが見えていないのか、白熱した演説を最後まで言い切りたかったのか。本人の意志はどうであれ、縦横無尽に暴走する無機質なからだに装着された丸太のような尾は、遠慮容赦えんりょようしゃなく、たけき者を風の前のちりのように舞い上がらせた。

 爽やかだった、あの微笑み。非道の演舞の所業によって、阿修羅のような苦悶と成り果てた。


「ゴフッ……後は……任せた……ぜ……」

「アアアアアアアア! オーガテメェこの野郎! マジでいい加減にしろよお前!! 真正の役立たずか!?」

「もうやだ……生きてて何も良いことがない……」


 ああ駄目だコレ! 致命的に覇気が無い! なぐさめるまで復帰しない面倒なモードだ!


 怒りというか呆れというか、この私が珍しくオーガにぶつけるべき無類の殺意が湧いた。コイツはもう廃棄処分してしまおうか。


鬼人オーガが脱落したぞ! これじゃぁ勝てねぇ!」

「あの鬼人オーガがやられた! ネーチャン頑張れ! 持ち堪えろ!」


 持ち堪えろったって限度があるわ! どうやって機能停止させるんだこのカラクリ!

 ……仕方ない。癪に障るが、オーガを慰めるか。


「オーガ! お前の力がないと突破出来ねぇんだ! お前だけが頼りなんだよ!」

「頼りにしてんなら暴言なんか吐かなかったろ……今更訂正しても意味ねぇよ……」


 あはー、殴りてぇ。より一層屈辱的なつらに変形させてぇ。


「だが……」


 お?


「オレがいないと突破出来ねぇのは確かだな! このオレ様が手助けしてやろう!」


 うーんなんだろうね。間違っちゃいないけど、ズレにズレている。

 単純すぎて笑えるレベルの情緒で、面白いほど扱いやすいなコイツ。


「宣言する暇あったら殴るか蹴るかしろ! そして私を護れ!」

「合点承知! 征くぜええぇぇぇえええ!」


 その後、怪物に囚われの姫を救出すべく、勇敢に立ち向かった鬼人オーガの晴れ姿を見た者は、誰一人として居なかった。


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